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駅の映像の謎~同時刻の2つのアリバイ

 北条は皆に指示し、調査の方向性をまとめた。

「今は車や徒歩で行ったのではなく電車で行ったと仮定し進めましょう」

と言う仮説を主にした意見に小倉と友里花も共感し従った。


 小倉と友里花は駅員に聞き相談をした。もちろん、駅員を全員集める訳にはいかない。僅かに手がすいた人間に順番に聞いた。

「土日月曜日にこの方を見ませんでしたか?」

「この方ですか」

アナウンスで駅員に連絡が行ってはいたが、ホームや構内の色々な場所に散っている駅員を探して尋ねた。


 並んだ駅員たちは写真を見ながら顔を見合わせたり、記憶を探ろうとした。

「確かに、うーん、朝顔を見ますな」

「見かける顔のような」

「言われてみればですね」


 確かに、超膨大な数の乗客の1人1人を記憶するのは至難の技である。逆に覚えてないと言う事は松本は問題や怪しい行動をした事がないと言う事だ。


 北条は次に映像での解析を頼んだ。

「では土日月の映像を調べてみます。テープを出してきますね」

と言い駅員がテープを用意した。


 小倉は北条に聞いた。

「いきの電車のモニターに映った映像を、始発分から調べますか。」

「はい、しんどいですがそれしかありません。この大勢の流れから松本さんを探さねばなりません。きついですが頑張りましょう」


 そして、難作業と知りつつ複数のカメラを皆で手分けしてチェックすることになった。



 まず始発頃の映像からチェックする事になった。

早朝とは言え人はまばらである。これをチェックしていくだけでも思いの他時間がかかった。

すでにスーパーの映像を今日はチェックしている身である。

少し目も頭も痛い。



 ようやく4時から6時台の映像チェックが終わり、7時台の最も客が多い時間になる。

さすがに朝のラッシュ時の映像である。


あまりにごちゃごちゃしていて狭い車内の中人口密度が非常に濃い。


 しかもみな背広を来た20~50代のサラリーマンで判別がしにくい。

女性はもちろん服装は違うが、しかし女性も判別の難しさの原因になっている。


 三上は押し合いながら場所を確保しようとするサラリーマンたちの映像をこらしてみた。

「松本さん小さ目だからこの中に埋もれてしまいそうですね。」



 しかし北条たちはさすがにプロである。

「この人は違うこの人は・・」

「この人も違うわ」

と三上とは全く異なるスピードで3人は映像を解析して行った。


 また負けじと手伝った駅員たちも日頃の経験をフルに生かして目を皿のようにして探した。



 そして苦しい作業が続く中、ついに松本ではないかと言う人物がおぼろげに見えた。

発見したのは小倉だった。



「あっこの人もしかして。ほら、これ、松本さんじゃないですか?」

「えっ、ええっ、確かに背格好が似てるけど少し猫背じゃないですか」



 小倉に問いかけた三上に北条は答えた。

「会社に行くのでなければ猫背で多少だらしなく見えてもいいはずです。この客をカメラで追えませんか?」


 駅員は要請を受けカメラを移動させていった。三上に聞いた。

「仕草とかは松本さんに似てますか。」

「そ、そういえば1人でいる時の松本さんの雰囲気に似てるかもしれません。わ、私は皆さんに比べ素人ですので全然及びませんが・・」


 三上は弱気だった。自分なんかが、と言う及び腰だった。

しかし小倉は励ました。

「いいえ、普段接しているからこそ、にじみ出る雰囲気の判別が大事なのです」


 北条は言った。

「仮定で話を進めますが松本さんが普段着で行きの電車に乗ろうとしてます」

「あっ電車に乗ってしまいました」

と小倉は答えた。


 

 小倉は言う。

「ここから先の車内の様子はかなり大勢のお客様に囲まれ映像が見にくくなりますね」

北条も言う。

「追い続けましょう。まずあの人が松本さんだとしてどこへ行くのかが最重要事項なのです」

さすがにラッシュピーク時はすさまじい詰めっぷりである。

辛うじて頭の数で大体の人数が確認出来る。

人と人が超至近距離で向き合いあるいは背中合わせで密着している。北条たちは見にくいのを我慢し、松本がどこで降りるか探った。

するとある駅で松本は降りた。これも非常に見にくかったが降りる人数は朝にしては中くらいの駅だった。



「青井山です。これは松本さんが会社に行くルートですよ」

青井山はすごく降りる人が多いわけではないのでかろうじて発見できた。

しかしラッシュ時は自分が降りる駅でなくても降りる人に気を使い一旦下車する人も多い。

それが逆に人混みを多くした。

小倉が言うと三上が答えた。



「えっ、と言う事はいつも通り会社に行ったんですか普段着で。月曜日来ていなかったですよ?歩いてる途中で引き返した?」



 友里花が言った。

「私もそれは考えましたが普段着でなぜ行ったのか?」

「あんなラッシュ時に行ったと言う事はやはり会社に?」


 小倉や三上たちは話し合ったが北条は突っ込んだ。

「いえ、会社には行っていないと思います。その割に不可解な点が多すぎるのではないかと。月曜日はパチンコ屋に行っていたことになります」

「不可解?」

小倉は驚いた。


「えっ、ではパチンコ屋に行ったのと電車に乗ったのと同時刻に2つのアリバイが出来てしまいますよ?つまりどちらかが松本さんではない事になります」


「あるいはパチンコ屋の松本さんは誰かの変装です。換金場所の青年の仲間ではないかと思います」


「その偽物はなぜ松本さんに化けたんですか?」

三上の問いに北条は答えた。

「恐らく松本さんに頼まれたのでしょう」


 北条が無茶苦茶な事を言っていると皆は感じた。

(大丈夫なのだろうか)

と三上は不安になった。



 北条はさらに意外な事を言った。空気がぴりりと張り詰める。

「パチンコ店の店員が松本さん失踪に関わっていると思います。そして野球場には前日行っていて戻らなかったのではないかと」

「ええ? あのパチンコ店の店員がですか?」

三上は驚きと同時に疑心暗鬼もさらに大きくなった。


 これは小倉、友里花からしてもかなり意外だった。友里花は

「それはどこから? なぜパチンコ店の店員と繋がるんですか?」



 北条は思い立ったように駅員にいった。

「もう少し映像をバックできませんか?」

「バックですか? はい。」


 すると、松本は改札口から入ってきたのではなく反対側の下り電車から降りてきてまた反対の上がり電車に乗り込んでいる。

その姿がはっきり映っていた。

反対側の車両からおり、すぐさま行きの電車に乗り換える姿があった。


 小倉は驚いた。

「あっ反対から出て来てる?」

「これはいったい?」



「ホームの反対から降りて来てる?そしてまた反対のホームに行っている?」


 皆は松本に似ているだけでなく不可解な行動をする男を怪しく見た。 

「怪しい男がうつってます。松本さんとそっくりです」


 北条は説明した。

「そうです、恰好も同じですしこの人、つまり松本さんはこの日駅の改札からでなく反対側の電車から降りてホームから反対の電車に乗ったんです。つまり下りの電車で地元に戻り、それから駅の改札を通って戻らずに今度は上りに乗ったんです」


 三上を含めた3人は驚いた。

「な、なんのためにそんなことを」

北条は説明した。 

「何のためにと言うよりも、とにかく前日おそらく松本さんは家に帰らず、下り列車のどこかの駅で過ごしていたのです」

「と言う事は前回、前日にどこかへ行っていてとまったりしてまた引きかえし逆に次の日の朝また上りの電車に乗った?」


 混乱する1同に北条は冷静に指摘する。

「前の日を別の駅で過ごし、下りで地元の駅に来てホームに降りすぐさま反対側の電車に乗ったのです」


「不可解ですな、どんな真意が。」

 小倉たちは頭を抱えた。


 北条は仮定した。

「松本さんはなぜ地元の駅にホームまでしか戻ってこなかったのか。もしかするとこうして映像でチェックして足取りが分かってしまう事を懸念しているのかもしれません。そのためおかしなルートをたどりそれがカメラの死角になる事を知っていた可能性があります」

「カメラの死角ですか」


「それとも朝ぎりぎりまで睡眠を含めた用事がありすぐ反対の電車に乗らないと間に合わない事情があったのかもしれません。家に戻りたくないわけがあったのかもしれません。野球、パチンコ、家、手がかりは野球のみ、メガホンを置いてきたと言う事は月曜日に行った可能性が高いです」

「じゃあ新聞に今日でなくとも14時と?会社にいかず14時に人と会うって一体?」

「そこはまだわかりません。ですからこれから野球場へ行きます」


 北条はさらに説明した。

「これは先ほど話しました、松本さんが住んでいる所やいつも行くところに失踪した後調べが入ると思い、アリバイを作って捜査を難しくしたためです」

友里花は言う。

「じゃあ松本さんは調べられるのを見越して失踪前の準備を?」

小倉が言う。

「先生、パチンコ屋の店員がどうのと言うのは?」

「あの店員が誰かと共謀し松本さんを苦しめている可能性があります」


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