君の側には戻れない(前半)
このページは藍那サイドの話です。
旅行当日・・・
私は早く目が覚めた。
たっちゃんが言った言葉が頭の中をグルグルと回っていた。
その時携帯の着信音がなった・・・藍紅だった。
通話ボタンを押すと「今日先輩と旅行に行くの?」と悲しそうな声が耳に届いた。
「行かないよ・・・たっちゃんとは昨日別れたの・・・」と私は言った。
「藍那・・・僕ともう一度約束しない?」と窓から「コンコン・・・」と聞こえた。
カーテンを開けて窓を開けると、藍紅が居た。
携帯を切ると、「これから先何があっても藍那を守りたい・・・」と藍紅が言った。
「私も・・・藍紅の隣に居たい」と私達は窓越しに抱き合った。
私はゆっくりと藍紅から離れた。
「先輩が待ってるでしょ・・・?」と藍紅は私の心が分かったのか、そう言った。
「どうせ待ってるって言われて悩んでるんでしょ?」と藍紅は私の耳に髪を掛けた。
「一緒に謝りに行こっか・・・?」と藍紅は私に手を差し出した。
私は藍紅の手を取って駅に向かった。
駅の近くまで行くとたっちゃんは私達を見て「何で2人で来るの・・・?」と道路を挟んで言った。
私は藍紅に「ココで待ってて」と言って道路を渡った。
「たっちゃん・・・旅行には行けないの」とたっちゃんの顔を見て言った。
「俺とした約束はもう何も叶わないの?」とたっちゃんが涙を流しながら言った。
「ごめんね・・・」と答えると
「藍那は謝ってばかりだね・・・俺は良い恋人にはなれないな。」と私の肩を両手で押した。
「最後の思い出に藍那と旅行に行きたかった」とたっちゃんは自分で涙を拭いた。
「クラスの友達は皆で海外に行ってるのに、人気者の俺が1人で傷心旅行なんて寂しすぎるだろ・・・」と笑って言った。
「行きなよ・・・」とたっちゃんが私に背中を向けた。
私は藍紅が居る所に行こうとした時・・・
「藍那。危なーい・・・」とたっちゃんの声と同時に
キキィィィー
と車が急ブレーキを踏んだ音が聞こえた。
私はたっちゃんが走ってくる姿がスローに見えて気付いた時には、たっちゃんに強く押され弾き飛ばされていた。
「いったぁー」と擦り傷が付いた腕を見た。
目の前には血だらけのたっちゃんが倒れていた。
「藍那大丈夫?」と急いで駆けつけた藍紅の声など聞こえなかった。
「たっちゃん・・・?」と私は急いでたっちゃんに駆け寄った。
「藍那・・・ちゃんと見て渡らないと危ないだろ?・・・」と言ってたっちゃんは私の頬に手を付けた。
「ごめんなさい・・・」とその手を握るとたっちゃんの目は閉じ、たっちゃんの手の力が抜けた。
「たっちゃん起きてよ・・・何で?」と私は頭が真っ白になった。
藍紅は救急車を呼んだりしてたっちゃんを抱きしめて離さない私を見ていた。
救急車が来てもたっちゃんから離れられなかった私は一緒に乗って行った。
病院に着くと看護婦さんに無理やり離されたっちゃんは手術室に入って行った。
「私のせいだ・・・」と血が付いた手を見てると、たっちゃんのお母さんが息を切らして来た。
私はたっちゃんのお母さんに「私の不注意でごめんなさい・・・」と頭を下げた。
すると「藍那ちゃんでしょ?」と私を通り越して「貴文が旅行に行くって楽しみにしてた・・・」とたっちゃんのお母さんは、手術室の前に立った。
そして私の方を見ると「藍那ちゃんのせいじゃないし貴文はこんな事じゃ死なないわ!」と笑った。
その顔が何だかたっちゃんにそっくりで私は事故に遭ってから初めて涙が出た。
その後、私のママと藍紅が来てたっちゃんのお父さんが来た。
藍紅が「藍那・・・」と私を抱きしめた・・・
「ごめん・・・」と私は藍紅から離れた。
私はママに抱き付き「ママ・・・私が悪いの。」と言った。
手術は成功したっちゃんは一命を取り戻した。
だけどいつ目覚めるか分からないと言われた。
私はたっちゃんのお母さんに頭を下げ「たっちゃんが目を覚ますまで側に居させてください」とお願いした。




