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過酷バイトはもう嫌や! 働きたくない凡人女子高生、億り人おじさんと始める『一億円逆算投資戦略』  作者: しばたろう
新婚生活編

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エピローグ 紬の決断

 我が家は、一般庶民だ。

 それは、高校二年生の私の目から見ても明らかだった。


 いくつか、具体的な事例を挙げよう。

 まず、両親は共働きのサラリーマンだ。ちなみに昔、二人の会社名を教えてもらったことがあるけれど、名前も聞いたことがない地味な会社名だった。要するに、夫婦二人で必死に働かないと生活が回らない、ということなんだろう。


 住んでいるのは、島本町。大阪府の端っこにある、のどかな田舎の中古マンションだ。確か35年フルローンで買ったと聞いた気がする。

 お父さんの愛車は、これまたどこにでもある国産のコンパクトカー。

 学校だって、私と弟の(たくみ)はずっと地元の公立校育ちだ。

 まさに、絵に描いたような「ザ・一般庶民」の家庭。それが我が家だった。


 だからといって、不満があるわけでは決してない。

 小学生の頃を振り返れば、やりたいと言った習い事は何でもやらせてもらえたし、年に二回くらいは、少し遠出をして家族旅行にも連れて行ってくれた。今思えば、私たちのために両親は少し無理をしていたのだろうか。そんな素振りは、子供たちの前で一切見せなかったけれど。


 ただ、どうしても、頭の片隅で比べてしまう存在がいた。

 いとこの、大樹くんと菜月ちゃんのところだ。

 正確には、親のいとこの子どもなので「はとこ」というらしいが、まあ、そんな細かいことは横に置いておこう。ふたりとは、昔から親戚づきあいでよく顔を合わせている。


 大樹くんの家は、おじさんもおばさんもお医者さんで、高槻市内でクリニックを経営している。住んでいるのも高槻の一等地にある大きなお家で、広いガレージにはピカピカのレクサスが鎮座している。これまた絵に描いたような「ザ・セレブ」だ。

 しかも、大樹くんは文句なしにカッコいいし、菜月ちゃんは息を呑むほどかわいい。

 二人は高槻の超有名私立である高槻高等学校に通っていて、当然のように、将来は医師になる道を歩んでいる。


 お医者さんになるのが、どれほど険しい道かは私だって知っている。必要な偏差値はバカみたいに高いし、もし私立の医学部に進むとなれば、かかる授業料は文字通り桁違いだ。

 そんな常識外れの挑戦を、笑顔で全面的にバックアップできるのだから、正真正銘の本物のお金持ちに違いない。


 だからこそ、彼らと比較したとき、我が家はやっぱり普通の庶民なのだと痛感する。


 まあ、そんな格差、今までは大して気にしたこともなかった。

 庶民とはいえ、特に何不自由なくここまで育ててもらったのだ。両親には感謝の気持ちしかなくて、不満なんてこれっぽっちも持ち合わせていなかった。


 そんな私が、なぜ今になって我が家の懐事情なんて気にし始めたのか。

 理由はひとつ。――私が、「医学部に行きたい」と思ってしまったからだ。


 私の通う大阪府立春日丘高校は、進学校ではあるけれど偏差値は70に届かない。我が校から現役で国公立の医学部に合格する人なんてほぼ皆無だし、私立の医学部だって、毎年一、二名が浪人の末に滑り込めるかどうか、というレベルだ。

 そんな学校にいる私が医学部を目指すとなれば、多浪の末に地方の国公立医学部になんとか引っかかるか、それとも一浪か二浪で、どこかの私立医学部に潜り込めるか、という過酷な戦いになる。

 そして、私のようなレベルの人間でもまだ入りやすいと言われる私立医学部となると、六年間で四〇〇〇万円近くの授業料が吹っ飛ぶ。

 つまり、医学部受験なんて、うちのような一般庶民には逆立ちしたって無理なのだ。


 でも、自分の心に灯ってしまった夢を、どうしても諦めたくない。

 両親には、「うちの経済力じゃダメだ」「無理に決まってる」と一蹴されるかもしれない。

 それでも私は、この胸に抱いた本気の夢を、両親に打ち明けることに決めた。


 よく晴れた、休日の朝。

 朝ごはんの片付けが一段落したリビングで、私は大きく息を吸い込んで、ソファに座る両親に向かって切り出した。


「お父さん、お母さん。私、医学部を受験したい。――あ、もちろん国立の医学部を目指す。何年かかるか分からんし、迷惑かけるかもしれんけど、本気で挑戦したいねん」


 私の言葉に、両親は一瞬、お互いの顔を見合わせた。

 (なにバカなこと言うてんの? うちのどこにそんな余裕があるの、って言われるよね……)

 どんな厳しい小言や現実を突きつけられても耐えられるように、私は奥歯を噛み締め、全身をこわばらせて身構えた。


 しかし。

「――別に、私立の医学部でもええで?」


 お母さんの口からぽろりと返ってきたのは、私の脳内の想定を宇宙の彼方まで吹き飛ばす、まったく予期せぬ言葉だった。


「……え?」

 唖然として、声も出ない。

 固まってしまった私の顔を見て、お父さんもお母さんも、意地悪な冗談を言っている風でもなく、ただ優しく微笑んでいる。


 ちょっと待って。

 お母さん、私立の医学部が一体いくらするのか知ってるよね?

 うちって、そんな……そんな大金、あるの!?






これで本作は完結となります。

この先、(はるか)の物語は(つみぎ)へと引き継がれていくことでしょう。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


さて――

明日より、さっそく新連載がスタートいたします!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【なろう初!】相続税 vs SE

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ぜひ明日からの新連載もチェックしてみてください!

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