《王都の休日》
中央通りは、人で溢れていた。
魔導ランプ、屋台、衣料店、武器露店。
ラスティアとは桁が違う。
「魚串にゃ!焼き魚串にゃ!」
ミーニャはすでに両手が塞がっている。
「……薬草の質、全然違います」
アリエルは素材屋で目を輝かせていた。
ルークは防具職人と話し込み、セレスは書店の前で立ち止まる。
ゼノは部品市場へ消えた。
「じゃ、夕方に噴水前で集合ね」
レアが言う。
自然に散開。
レアは一人で裏通りへ入った。
雑貨屋、革製品、甘味処。
気楽な空気。
その角で。
小柄な少女がフードを深く被り、アクセサリー屋を覗いていた。
護衛もいない。
明らかに“隠れてる”。
「……変なの」
レアが通り過ぎようとした、その瞬間。
路地の奥で魔力が跳ねた。
黒い術式。
二人組。
片方が少女の腕を掴む。
「――っ!」
「静かに」
「離して!」
レアは即座に走った。
男が振り向く。
「チッ、冒険者か」
もう一人がカードを起動。
歪んだ魔力が膨らむ。
簡易バグ個体。
半形成。
「めんどくさい」
レアは踏み込む。
《認知加速》。
腕関節、魔力結節、起動核。
一秒で把握。
男の手首を折り、少女を引き寄せる。
続けて半形成体へ拳。
雷が走り、核だけ潰れる。
異形は形になる前に崩れた。
残った男が後退する。
「シャドウ・リバースだな」
レアが言う。
「……覚えとけ」
煙幕。
二人は路地の奥へ消えた。
少女が目を見開いている。
「だ、大丈夫?」
レアが声をかける。
「……はい」
少女はフードの奥で息を整えた。
「助けてくれて……ありがとう」
「通りがかり」
レアは肩をすくめる。
「怪我ない?」
「ありません」
少し迷ってから、少女が言う。
「あなた、冒険者?」
「うん。クロス零のレア」
「私は……リィ」
本名は言わない。
でも、育ちの良さは隠しきれてない。
レアは気にしなかった。
「買い物?」
「はい」
リィは小さく笑った。
「こっそり、です」
「分かる」
レアも笑う。
「一人の方が楽しい時あるよね」
しばらく一緒に歩いた。
甘味処。
焼き菓子。
雑貨。
リィはどれも新鮮そうに見て回る。
噴水前。
「今日はありがとう」
リィが頭を下げる。
「また会える?」
レアは少し考えてから言った。
「たぶんね」
「王都、しばらくいるから」
リィは嬉しそうに頷いた。
「じゃあ……また」
人混みに紛れていく背中。
レアは知らない。
その少女が、
この国の王女だということを。
ただ。
レアの中では、
「王都でできた新しい友達」
それだけだった。




