《王都のお土産》
夕暮れの街に、見慣れた門が見えてきた。
「帰ってきたね」
レアが小さく息を吐く。
王都の喧騒とは違う、素朴で落ち着いた空気。
クロス零の拠点――イヅナの工房がある街、ラスティアだ。
「やっぱここが落ち着くにゃ〜」
ミーニャが大きく伸びをする。
「……空気が、軽いです」
アリエルもほっとしたように微笑んだ。
工房の扉を開けると――
「おう、おかえり」
金床の前に立っていたイヅナが振り返る。
「無事だったか」
「もちろん!」
レアが親指を立てる。
「王都、すごかったにゃ!」
ミーニャが荷袋を背負い直し、にやっと笑った。
「でねでね。オジサマの好きそうなお土産、買ってきたにゃ!」
「ん?」
イヅナが眉を上げる。
次の瞬間。
ミーニャはイズナにこっそり何かを手渡した。
「?」
受け取ったイズナが表紙を見る。
『ニャンニャン王都・最新号』
露出多めの獣人モデルと、きらびやかな王都水着特集。
イヅナの視線が、吸い寄せられるように雑誌のページをめくる。
止まる。
次の瞬間――
「ぶふぉっ!!」
鼻血。
豪快な鼻血。
「お、おい親父!?」
「さ、さすが……王都だぜ……」
片手で鼻を押さえながら、震える声。
「く……くそ……文明の暴力だ……」
雑誌《ニャンニャン王都》は開きっぱなし。
煌びやかなモデルと際どい写真が、無慈悲に並んでいる。
セレスは一歩前に出た。
「解析します」
「やめろ!」
即座だった。
イヅナが片手で雑誌をひっくり返す。
「それは解析する類の物じゃねぇ」
「ですが、王都の出版物であれば、文化的背景や——」
「やめろって言ってんだろ!」
イヅナは珍しく声を荒げた。
「それは“見るもん”であって、“読むもん”じゃねぇ!」
セレスが瞬きをする。
「……?」
ゼノが横から淡々と補足する。
「情緒的資料だ」
「工学対象外」
アリエルは顔を赤くして視線を逸らし、
「……セレス……それは……」
ミーニャは腹を抱えて笑っている。
「オジサマ必死にゃ!」
レアは頭をかいた。
「セレス、それは……世界の闇だから」
「闇……?」
セレスは首を傾げた。
イヅナは雑誌を引き出しに放り込み、鼻を拭いた。
「いいか」
低い声。
「これはレアの武装にも、古代文字にも、カード合成にも関係ねぇ」
「完全に俺個人の案件だ」
レアは即答した。
「じゃあ解析しなくていいね」
「当たり前だ!」
工房に笑いが戻る。
セレスだけが、まだ少し納得していなかった。
ゼノは工具を鳴らしながら言った。
「深掘りするな」




