番外編:過去と未来の相違
本気の殺意で攻撃を仕掛けてくる未来のサフィア。意図がわからず硬直するなか、間一髪でサフィアが防いでくれる。
「邪魔をするな私!!」
「そっちこそなんて愚行を犯すんだ!?」
「彼が世界を滅ぼす! 私がわざわざ過去に戻ったのは、若い芽のうちに狩りとるからだ!!」
「え……僕が……!?」
「なん、だと……!?」
未来では自分が世界を滅ぼす、嘘であったならこんなことは起きない。サフィアも唖然とする。
「何故そこまで肩を持っているかは不明だが、今ここで屠るのが世の為だ!!」
サフィアの防御を崩し、刺突が首元へ向かってくる。
「待って!!」
ルビのバリアによって守られ、刺突は止まる。
「姫……確かに其方にとっての想い人かもしれんが……!!」
「な、な、何を言ってるの!? そ、それより剣を納めて!!」
「しかし……!!」
「『メンタルキュアー』」
「はうっ!?」
エメルの精神浄化作用を持つ治癒。次第に未来のサフィアから荒々しい気が収まっていく。
「くっ……私に何をした……!?」
(エメルの治癒を知らない……?)
「あ、あの、未来のサフィア? どうか話を聞かせてくれませんか? そもそも僕が世界をどうこうするってのも信じられないですが……いろいろとおかしい点もありますし」
(現在のサフィアは少なくとも僕を好いてくれてる。なのに、サフィアが守ったことに疑念を抱いていた……エメルのこと知ってないようだし……)
「馴れ馴れしく話かけるな諸悪の根源め!」
「えぇ!?」
「貴様……いくら私とはいえ、シフを侮辱するのは万死に値する!」
「何気持ち悪いこと言っているのだ!?」
(やっぱり何かおかしい……未来のサフィアにも同じようなこと言ってた時期があるはずだ。だというのに、なんで驚いている……?)
「……今もこうしてカンダル王国に仕えてたのに、どうして仲違いに至ったんですか?」
「仕えてるだと……元魔王軍の君が同盟を組んでいるだけだろう」
「「「はぁ!?」」」
(僕が元魔王軍!? 同盟!?)
「一体何を言ってるんだ……シフが魔王軍なわけない! そもそも一緒に魔王を倒しに行ったじゃないか!」
「なんだそれは……まさか、タイムパラドックスが起きてるのか……!?」
「……どうやらそのようだな……しかし、何故だ? ここまで未来と過去で内容が違うとは妙だな……」
混乱する2人のサフィアに、ルビが疑問を問う。
「でもタイムパラドックスって、過去を変えたせいで未来も変わるってことだよね? 未来のサフィアはシフ君倒しに来たのに、既にもう変化してるってのは変じゃないかな?」
「「そう、その通りなんだ」」
2人のサフィアがハモって答えるも、事態がよく掴めない。
「私がここの過去に来てからは、そのイヤドに絡まれて返り討ちにしただけだ」
「まぁそれは10割イヤドが悪い」
「となるとだ、『時渡り』に不具合が生じたと考えられるが……勇者である私が死んだり、封印でもされてないと……」
「「「「あっ」」」
「な、なんだその思い当たる節があるような……」
「実は……」
アクマとの戦いでサフィアが宝石になっていたことを明かす。
「絶対それじゃないか!」
「面目ない……」
「でも通りで辻褄が合わないわけだ……私がいた世界とは歴史がかなり違う」
「……一体どんな世界だったのだ?」
「一言で言えば乱世……魔王軍、カンダル王国、オニス率いるイントゥリーグ王国、白バラ、イヤドと数多の勢力がひしめき合っていた」
「悩みの種が一同に集まった世界だね……」
「魔王軍であった魔王と幹部パイが討ち死にし、残党であるシフと劣勢であった我々カンダル王国は同盟を組んでいた。てっきり、『時渡り』でその時代に来たと思っていたよ」
「え……!? パイも魔王軍だったの!?」
「ん、あぁ。この世界だとそれも違うのか……君と恋仲だった聞いたが……」
「「な、なんだって!?」」
「……ふーん」
女性陣からの視線を受け、萎縮する。
「い、いや、僕であって僕じゃない人のことだし……」
「へぇー、シフ君そうだったんだ」
「だから違う世界だって!?」
「……その後、姫もそういう間柄になっていたのだが」
「ふぇっ!?」
「なっ……!」
顔を真っ赤にするルビと一瞬目を合わせるも、気まずさで即視線を外す。
「こ、こほん。続きを話させてもらう……しかし我々も猛攻を受け続け、カンダル王国は滅んだ。姫の命も……守れなかった自分が不甲斐ない」
「そんな……」
「そこからだ、彼を怪物に変えたのは。失踪したと思っていたが、力を蓄えて反旗を翻し、全勢力を殲滅したのだ」
「流石は私のシフだな」
「私も彼にやられたその1人だぞ!? 何誇っている!?」
「こういう人なんです」
「信じがたいな……己だけに」
未来のサフィア……正確には違う世界から来た者だが、現サフィアと違いすぎる。本当に同一人物だろうか……
「しかし、これで彼は収まらなかった。人々が繁栄していなければ争いも起こらない、その思想に取り憑かれて大虐殺を始めたのだ」
「うわっ……」
「……シフやりすぎ」
「何度も言うけど僕じゃない!!」
「そうだな……彼と違って、君には尖った荒々しさを感じない。随分と平和な世でよかったよ」
未来のサフィアがどこか悲しげに言う。あのいたいけな姿も、違う自分がやってしまったと考えると罪悪感がある……
「世界を救った英雄が、別世界では世界を滅ぼす終焉者とはな。こうも真逆な結果になるとはな……ところで、解せない点がある」
「なんだ?」
サフィアが未来の自分に向けて質問する。
「シフに惚れてながら、何故敵対してるのだ?」
「この私は何を言っておるのだ?」
「ねぇサフィアやめて! 未来のサフィアはまともそうなんだから!」
「だって可笑しいじゃないか! 私がシフを殺そうだなんて万に1つもありえんのだから!」
「ますます変な過去に飛んでしまったな……ちなみに彼とは敵としてしか、話したことがない。同盟を組んだのも王の独断、私はいつも1人で戦ってきたしな」
「ほう、つまりシフを愛さなかったその私のせいで世界はオジャンってわけだな」
「無茶苦茶な言い分だぞそれは!?」
「と・に・か・く! どうすれば未来の世界を救えるの!!」
話が変な方向にいかないよう、ルビが軌道修正してくれる。
「流石に可哀想だよ……なんとかしてあげられないの?」
「そうだな……この過去で何をしても、私の世界は変わらないからな……」
「単純明快だな、やることは」
サフィアがさも当然のように続きを述べる。
「私達が未来に行くのだ」
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