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盗賊少年達の抵抗

「へぇ、なかなか良いお城ね。アタシの住処にしてやってもいいわ」


あぁ、さっきまでは改心しかかってたのに……


 リオストロ城下町の城門前までに辿り着いていた。門兵にマリア女王の謁見を頼み、返答待ちである。


「……あそこのテラスでひなたごっこしたい」

「城の使い方が贅沢すぎる」


「しっしかし遅いわねぇ。いつまで待たせるのかしら、無能よ」

「まぁまぁ」


「大変お待たせしました! 実はですね……」

声荒げで歯切れが悪く、言いにくいように話す。


「先に客人がいまして……誰も通すなと言われ、一向に出てこない状況で……」

「何よそれ、だったら入ってやろうじゃない」


「そんな無茶苦茶な……!?」

「……まずい、もしかしたら……! 急いでマリア女王の元へ案内を!」


「し、しかし……」

「……カンダル王の遣いなり。至急の報告を」

「わかりました……私達も不自然には思っていたところです」


急ぐ形でマリア女王の元へ案内してもらう。王の間の前まで行くと、イヤドが気付いたように反応する。


「これ、結界が張ってあるじゃない……!」


「何ですと!?」

兵達は驚きながら、扉を開けようとするがビクともしない。


「エメル! 今すぐアタシの魔力を回復させなさい!」

「……既にやってある」

「やるじゃない、自動回復も付与しておくのね」


「……これもアクマの仕業か、なんて手の早い……! マリアさんが宝石化したらますます不利に……」


「とっととぶち破るわ。でも、結構強力な結界ね……辺りまとめて吹き飛ばしてあげる!」


「こ、困ります! 緊急事態なのは百も承知なのですが、歴史あるお城でマリア様のお気に入りなのですぞ!」


「言ってる場合じゃないわよ! アンタんとこのおばさんいなくなっちゃうかもしれないのよ!」

「なんと無礼なっ!?」


「待ってイヤド! もしかしたら呪いの短剣なら、斬り壊せるかもしれない!」

「……アイツが作った物で、アイツへ対抗するなんてなんか癪にさわるわね……」


「構やしないさ! フッ!!」

一息に斬りかかり、見事扉を壊すことができた。斬れ味に関しては相当なものだ。


これだけで名作なのに、人の命まで使って道具を作りたいとは……よくそんな考えにいたるもんだ。


 壊した扉から突入する。開けた空間の奥に玉座、それに腰掛けるはあのアクマだった。だか想像以上にボロボロだ。右頬には殴られた跡があり、左腕を抑えている。


「やぁ、来ると思うとったで。うちの方が先に用件を済ましてもうだけどなぁ」

「お前……マリアさんまで!!」


「そや、凄い収穫やったで。なんと闇の魔法のスペシャリストでハイスペックやったわ。戦士の兄はんの力がなかったら、危ないとこやった。骨が折れたで、物理的にもな」


事態は最悪となった。こちらの戦力が削れるほど、相手がレベルアップしていくなんて……


「さて、もういっべんだけチャンスをあげよう。痛みのう宝石となるか、痛ぶられてから宝石となるか」


「アタシの獲物を横取りしたあげく、宝石になれだって? アタシを怒らせたことを後悔なさい!」


「横取りねぇ、そらお互い様や。うちが飼っていた“白バラ“をそちらさんが勝手に私物化し、名前まで変更したんやさかい」


「……」


……それに関してだけはイヤドが悪い。


「…………アタシはいいのよ!!」


「暴論!?」


「プッハハハ! まぁえぇわぁ。おかげさんで計画は早まったし」


「シフ! もうここでぶっ潰すわよ!」

「あぁ!」


「『ダイヤモンドプロテクト』!」


イヤドは最大の防御で自身とエメルを守る。その間に自分は『雷歩』で近づく。相手の出方次第で、2人が援護してくれる。


アクマは呪いの斧を異次元から取り出し、構えを取る。


風雷旋刃(ふうらいせんじん)!!」


鋭い刃と化した回し蹴りで、アクマの胴体を両分する。


だが、手応えがまるでない。胴体だった物は黒くドロドロに溶け始める。


「クソ、本体はどこに……?」

「こっちやこっち」


声がした上方へと目を向けると、天井に()()()()()。あらゆる人の能力を得ているんだ、今更驚きはしない。手応えあるまで続けるだけだ。


「『黒手伏魔殿(こくしゅふくまでん)』」


地が、壁が、天井が黒く染まり、無数の黒手が生えてくる。


「こ、これは!?」

たまらず空中へとジャンプする。


「侵食型の結界……! シフ! それに触れるんじゃないわ!! 足場はアタシが作る!」


「無駄やぁ、タイムスキップ」


掴まえられる間がなく、既に全身を掴まれた状態へとなっていた。そのまま地へと引きずられる。


「ガハッ!? ムゴッ……」


無数の手によって全身を固定され、口すら塞がれる。そんなことよりも、気分が悪くなる。脳が揺さぶられるようで、吐き気を催してくる……


「1人確保♪」


「もうやられるなんて……!」

「『オールヒール・リジェネ』」


エメルのおかげで、気分は大分マシになったが身動きは取れない……!


「さて後2人。回復の君は、はよぅほしおしなぁ。連戦で疲れてるさかいな」


「ほざいてなさい! 『メガウェーブ』!!」


王の間を埋め尽くす大波が、アクマへと押し寄せる。


「『ブリザードプリズン』」


大波が凍りついていき、動かぬ氷塊へとなる。その氷塊によって視界が遮られた一瞬、アクマは転移魔法でイヤドの前へ立ちはだかる。


「確か、これなら防御魔法(それ)を壊せるんやろ。『災撃直害』」


災害級の一振りを直接を当てられ、衝撃によってイヤド達は吹き飛んでいく。


 勝てる望みが薄いのはわかってはいた、それでも、ここまでの差があるとは……


 イヤドは攻撃され、回復しては何度も立ち上がる。それをただ、ジッと見ることしかできない。


「よう諦めんなぁ。なんぼ身体が新品になってん、痛みはあるんやろう? どうしてそこまで立ち上がるんや」


「……ふん、世の中には限界を超えて、意識がなかろうと倒れない奴もいんのよ……だったらこのアタシが、意地だけでも負けられないのよ……!」


「意外と泥臭い精神してりな……なんべんも回復させる君、この仲間の痛ましい姿を見て止めへんのかい?」


「……見てるぶんにはへっちゃら」

「少しは気を利かせなさいよ!!」


「うーん、参ったなぁ。睡眠は掛からへんくなってるし……ここはあの少年から先に宝石へとするのん」


「なっ!! みすみすやらせるわけないでしょ!」


「『ハーレム・ゴーレム』」


数十体ものゴーレムが出現し、イヤドの行手を阻む。さらには黒手が徐々にイヤド達の方へ侵食していく。


「時間稼ぎにはなるやろう」

「クッソォ……!!」


「待って!!」


大きく甲高い声が響き、アクマも動きを止める。一瞬誰だかわからなかったが、意外にもエメルの声だった。


「……私は宝石になってもいい……だからシフを見逃してほしい」

「ほう……」


「ムーッ!?」

声を出そうにも塞がれて止められない。自分なんかより、エメルが残ったほうがまだいい……!


「美しき友情やなぁ。そやけど……」

「……イヤドの魂もかける」

「じゃあええで」


「アタシを差し置いて決めんじゃないわよ!?」


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