表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/98

盗賊少年と希望の便り

 イントゥリーグ王国との戦争まで一週間を切った。あの化け物、戦士オニスと闘わなくてはならない。憂鬱なのは変わりないが、オニスを倒せるかどうかで戦局を左右する。


そのため領地内の森で、サフィアと組み手をしている。


「シッ!」

「ハァッ!」

まともに相手ができるのはサフィアがぐらいしかいない。戦い方は全然違えど、全力で技を繰り出せるだけで、良い練習にはなる。


「……休憩にするか?」

「まだまだ! 『狩の巣』!!」

木々を利用し、立体的な高速移動ですれ違い様に一撃を繰り出していく。それでもサフィアには全部捌かれる。いや、オニスだって致命傷を与えられなかった。もっと速く、もっと鋭く攻撃をせねば……


立ち上がる足のバネを活用し、手刀にて強烈な突きを放つ。


『噴槍』!!


サフィアは身をよじり、『噴槍』は離れた木を貫く。


「おい待てシフッ!」


当たらなければ意味がないか……ならば、威力もあり範囲も大きい技がある。オニスのように一撃が風圧を起こす回し蹴り。


風薙車(かざなぎぐるま)』!!


「うおっ!? 待つんだシフッ! 一旦ーー」


これも避けられたか、どうすればオニスを倒せる……!?


「落ち着けシフ!」


まずい!? 肩を捕まれた……! 前回はこれで大打撃を喰らった、投げられる前に頭突きをーー


「『天地足頭(てんちそくとう)』」


視界がぐるりと回ったかと思ったら、急にオニスの足元しか見えず、地面がすぐそこにあったのだ。


理解した時にはもう遅かった、天に足があり、地に頭がある。手を付いてない逆立ち状態だ。


間に合わない、頭がぶつかっーー


「大丈夫かシフ、聞こえてるか?」

ピタリと落下は止まり、両足が掴まれてるのがわかる。よく見たら女性の、サフィアの足だこれ……


またくるりと身体を回され、サフィアの顔が目の前にくる。戻された、ちゃんと地に足が付いてる……


「ま、参った……」

「参ったじゃない、さっきから待ったと言ってだだろう?」

「え、あれ? そうだった……?」

「やはりな、正気ではなかったか。ダメだぞ、冷静さがない時点で戦いは不利だ……焦るのもわかるが」


「ごめんなさい……」

「……休憩にしよう」

「ハ、ハェ〜、凄すぎて参考にならなかった……」


見学に来ていたルビが驚きながら感想を言う。まいったな、悪いお手本を見せてしまった……


「技のキレ、スピードは申し分ない。ただ、乱発しても意味がない。使うタイミングが鍵だ。ルビも気をつけるように」

「はい師匠! でもまずあんな必殺技がほしいです!」


「それは訓練してからでな……っとそうだ、最後の2つは正に必殺級、当たったら死んじゃうじゃないか」

「いやまぁサフィアなら……万一当たってもエメルがいるし」

「こらこら、私とて人間なんだぞ」


しかし、課題だな。もしオニスを倒せねかったら……サフィアが止めるといっても、その時は全員がやられた後、すなわち負けである。


勇者としての制限が痛い。こうやって組み手をしてくれるのも、中立な立場としてはグレーなんだ。


戦場にエメルがいると言っても、簡単には回復させてくれないだろう。いや、わざわざエメルをひき入れさせたってことは、それくらいの余地がある……? いや、勝てなきゃ同じことか……なんとしてでも勝つしかないか……


「フゥ……そうだサフィア! さっきの『天地足頭』を教えてくださいよ! 組まれた時に使えます!」

「師匠! 私にも!」

「うーん、これは独特なコツがあってだな……短期間での修得はーー」


バサバサ!


サフィアに教えを乞う中、目の前の木に1匹の伝書鳩が止まる。


「む……私のではないな」

「王宮専用のでもないような……」

「あーー!! やっと来た!!」

「「!?」」


急いで手紙を取り、開封する。遂に来た、戦争が決まってから便りを出していたが、果たして……


「シフ君のか、そんなに待ち望んでたの……?」

「ぃやった!!」

「お、おう?」


「OKだって!!」

「「何がっ!?」」


「こうしちゃいられない! 急いで王様にも伝えないと! 2人ともついて来て!!」

「な、なぁ、少し事情を……」


『雷歩』!!


「「おーい!?」」


一刻も早く伝えて許可をもらわねば……! これで一気に勝率が上がる……!


 王様の書斎へと辿りつき、勢いよくドアを開ける。


「王様ー!!」

「うおっ!? どーしたんじゃいきなり……なんでそんなウキウキなん?」


「助っ人です! 強力な助っ人が来てくれることになったんです!!」

「ほ、ほう……あれか、魔王討伐の旅で知り合った者か……?」


「そうなんです! というか、目的だったその人なんですけど!」

「そうかそう……えっ?」


「だから魔王ですよ魔王!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ