盗賊少年と回復術師の受難
カンダル王国で決起集会を行う一方、イントゥリーグ王国では、都市部の復興と戦の準備に取り掛かっていた。しかし、度重なる不祥事にイントゥリーグ王国国王ゴルドの機嫌は悪くなっていた。
「失礼しますっ! ご報告がっ!」
慌ただしく来た兵士に溜め息を吐きつつ、ゴルドは書類の処理を止める。
「くそっ、今度はなんだ!?」
「用意していた武器と火薬庫が燃やされて……」
「チィッ! 至急同盟国に支援を貰えっ!」
「そ、それが早馬も伝書鳩も精力剤を盛られたのか、盛っていて使い物に……」
「あーくそっ! ならば人を出せ!」
「道がぬかるんでいて汚れてしまいます!」
「それはどうでもいいだろうがっ!?」
「あ〜あ〜、俺は忠告しといたぜぇ〜」
報告を聞いて、愉しそうにオニスは嘲笑う。
「カンダル王国の隠密部隊長め……! ならば貴様が見つけだして叩きのめせっ!」
「それができねぇからこうやって屯してるんじゃねーか」
「くっ、侮った……よもやここまで……」
「ま、これも戦の醍醐味ってもんよ」
「フンッ! まぁいい、着々と戦力は集まっておる。『首狩り兄弟』に『魔獣使い』、あの『死霊マスター』も加わった! 戦場では猛威を振るうぞ!」
「へぇ、よくもまぁ裏の人間を見繕って来たもんだ。味見していいか?」
「この戦争が終わったら好きにするがいい。ところで貴様が雇った“白バラ"も戦力として数えていいのだな?」
「ん? あぁだがそしたら勇者降臨だ。だから最初からおっさんの娘を狙いに行かせる。足手まといがいるほうがやりやすいとよ」
「ほう、勝算はあるのか?」
「奴ら曰くな。どのみち、ダメなら俺がやるだけだ」
「無闇に狙わんでもいいさ。最悪、勇者は勝敗に関係ない。あの坊主さえ消してしまえば戦争では勝ったも同然だ。フフ、戦力差は歴然! 捻り潰してやるわい!」
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「こ、これは凄い……!」
ホテルの部屋に帰ると、エメルが興奮気味に喜んでいる。王宮には余裕がないし、エメルからの申し出で、僕が手となり足とならなきゃいけない。必然的にエメルの寝泊まりは同じ部屋になる。
「ベッドがふかふか……秒で寝れる……!」
「まだ寝るには早いよ、だって食事がまだじゃないか」
「はぅ……! こ、これは美味……!」
トロトロのビーフシチューを口にし、存分に堪能している。よしよし、ファーストタッチはかなり良い。
「そりゃあもう、この国1番の最高級ホテルだからね」
「……良き良き」
「でも戦争に負けちゃうと、このホテルが使えなくなっちゃうんだ……」
「ぬっ……!」
「勿体ないよね、他にも紹介したい素晴らしいお店があるのに……もし全員やられたら、誰もこの国を守れない……!」
「……任せて、私なら何度でも復活させられる……!」
「な、なんて頼もしいんだ! 流石は世界一の回復術師! 懐の広さも世界一だね!」
「……良きにはからえ」
「なぁおい……この茶番はなんなんだ……?」
呆れてサフィアが物申してくる。
「茶番とは失礼な、ちゃんと今度は逃げないように手懐けてるんですよ?」
「そうにしか見えなかったが、認めるのだな……」
「貴女にはわからなかったんですか!? 皆んなに置いてかれる、喪失感と悲壮感がっ! これは必要な処置なんですよ!?」
「お、落ち着け、そこまで心が荒んでいたとは……気の済むまで付き合おうとも……」
「僕達は間違ってたんです……過酷な旅だからと、誰もが耐えられるわけじゃない。温室育ちの彼女にはアメが必要だった。今回の戦だって、彼女抜きはーー」
「シフ、デザートが食べたい……」
「はい、今ルームサービス呼ぶね。兵力で劣っても彼女さえいれば、腕が千切れようがーー」
「シフ、背中が痒い……」
「はいはい、この辺でいい?」
「うんっ……」
「つまり、エメルがいなくなると絶望的でーー」
「眠くなってきた……」
「じゃあベッドまで連れてくね」
「待てっ! このままじゃダメ人間になる!」
「え? もうなってるでしょ? 今更何を言ってるんですか、もう〜」
「悪かった、謝るから、今からでもちゃんとした教育をだな……」
「ダメだ! せめて戦が終わるまではしっかり管理しないと……! ちゃんと言うことは聞かせるから!」
「ペットか」
「そうだよ、ちゃんと躾けないと逃げるんですよこの子は……絶対に逃がさない、そのためには甘い汁をいっぱい吸わせて、味をしめさせてやる……!」
「……なんだこの洗脳」




