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三日間の自由

「おはようございます、ターシャ様」

 モアナの声に一気に覚醒する。

「ええっと、……ここ……は」

 一瞬どこにいるかわからなくなった。

「帝都内のアッヘル伯爵邸です。長旅でお疲れだったのでしょう。馬車から降りられる際に、急に意識を失われたのですよ」

「……ええっ!?」

 慌てて起き上がる。枕元にある時計を見ると、正午すぎだった。

「ミヒャエル様は?」

「宮廷に向かわれましたわ。大丈夫です。ターシャ様が参られるのは三日後のご予定ですから」

 てきぱきとモアナがドレスを用意しつつこたえる。

「そう。では、今日の予定は?」

 ターシャの問いにモアナが少し笑った。

「ターシャ様のお好きなように、とミヒャエル様がおっしゃいました」

 好きなように、と言われたのが久方ぶりだ。ちょっと前までのターシャには召使い以下で、自由時間などなかった。

 ターシャは少し迷った。三日後にはターシャは皇宮にいる。『候補』たちの争いに入らなければならないのだ。なら、この自由時間を満喫するべきだ。しかし、同時にそれでいいのか……とも感じる。焼け石に水だが、候補者としてある程度の予習をした方がいいのかもしれない。

 黙り込んでしまったターシャにモアナが提案した。

「ターシャ様、もしよろしかったら、今日の午後はドレスを買いに行きませんか?」

 ターシャは、ミヒャエルがドレスの発注をすると話していたことを思い出した。

「都の雰囲気や市民の生活を知る良い機会ですし、ドレスは絶対に必要です」

 そして……とモアナは続けた。

「時間が余りましたら、ラトヴィア帝国騎士団をご見学なさると良いかもしれません。『候補』として、軍事の要を理解するのは大切ですわ」

 モアナの察しの良さにターシャは驚いた。ターシャの迷いに気づいたのだ。

「……モアナは、すごいわ。こんなに機転が利くなんて。同い年くらいに見えるのに、わたしよりもずっと『候補』らしいわ」

 最大級の褒め言葉にモアナの顔が赤くなった。

「もったいないお言葉です、ターシャ様」

 それに……と心の中でモアナは呟く。

――騎士団に所属するルーク殿下にお会いできるかもしれない。ターシャ様の良さを知っていただくには、他の候補者たちよりも、先手を。当主様もそうおっしゃっていたし、ね。

 ターシャにドレスを着せながら、モアナは次の「プラン」を考えていた。

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