表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

そのさん!   「サンタくんには、教えない!」

 三話目にして、ようやっとサンタくん登場。


 おや、サンタくんの様子が……?



「どうしたんだ、チビ。顔が普段以上にひどいことになってるぞ」


 休み時間、廊下でそうサンタくんに呼び止められた。

 怪訝そうに見つめるサンタくんをよそに、あたしは笑顔を返した。

 サンタくんがなんか言ってるけど、気にしない。機嫌がいいあたしは、ひろ~い心で暴言を流してあげることにした。


「べっつに~なんでもないよぉ」

「……本当に、どうした、チビ。なんか変な物でも拾い食いしたのか」


 失敬な。とは思うものの、彼は口は悪いけど、真剣にあたしのことを心配してるみたいだった。

 なんだかんだ言っても、サンタくんは実は、優しいんだよね。喧嘩ばっかりしてるあたしのことも、こうして気遣ってくれる。

 気苦労をさせるのも悪いし、週末の予定を誰かに言いふらしたいのも少しあって、あたしはサンタくんに話すことにした。


「えへへ~。あのね今度、合コンに行くんだ」

「……へぇ」


 なんか、低い声が聞こえたような。サンタくんにしては、いつもより数段低い声だ。


「うん? サンタくん?」


 え、えええええっぇえぇ!?


 見上げてみたら、そこに鬼がいたんだけど。こ、誇張じゃないよ!

 表情や仕草は、いつものサンタくんだ。だけど、その雰囲気が、その、おどろおどろしいというか、禍々しいというか。

 あと、表情が浮かんでいないのがまた怖いよ。


「なぁ、チビ?」

「う、うううううううん! な、なに、サンタくんっ!」


 わ、笑わないでぇっ! その整った顔で今微笑んでも、怖いだけだよ!

 あたしの心の叫び声なんてもちろん聞こえてないサンタくんは、そのまま問いかけた。


「いつだ?」

「な、ななななにがっ?」


 寿命とかっ? あたしがサンタくんに〆《しめ》られるまでの、タイムミリットとか? どっちにしても、秒読み間近な予感がするよっ!


「合コンとやらの、だ」

「……へ? ご、合コンの?」


 予想外の単語が出てきたから、目を丸くしちゃったよ。まじまじサンタくんを見ても、あたしが確認するつもりで返した言葉を否定する様子はゼロ。うーん、聞き間違いじゃないみたい。

 サンタくんの威圧にビクビクしつつ、恐る恐る答えた。


「こ、今度の日曜日だけど」

「場所は?」


 サンタくん、なんでそんなこと聞くのかな?


「な、なんで?」

「……」

「……」

「……えっと」

「……」


 ど、どうして黙るのぉおおおおお!?


 表情と威圧を変えないままで、沈黙しないでほしいよ。

 暑くもないのに、あたしの手のひらはサンタくんの迫力に汗をかいてるし。

 サンタくんは、にっこりと綺麗な笑顔を見せて、問い直した。


「チビ、場所は?」

「っサ、サンタくんには、教えない!」


 その瞬間、サンタくんの表情が固まった。ピシリ、という音が聞こえそう。

 嫌~な予感がして、あたしは自分自身のほっぺが強ばったのがわかった。

 な、なんだか、サンタくんのにじみ出てる黒い空気が濃くなったような?


「え、えへへ……?」


 や、やっぱり笑顔で誤魔化せない。こ、怖いよぉ! 禍々しいし!

 もう鬼なんて次元突き抜けて、魔王っぽいんだけど!? もうあたしは涙目だよ!


 迫ってくる魔王サンタくんの黒さが、すごく怖い。それだけじゃなくて、身の危険を感じる。

 ジリジリと後ろに下がって、くるりと後ろを向いた。


「そ、それじゃあねっ!」

「あ、おいチビっ!」


 あたしはサンタくんをおいて、自分の教室に走って戻った。

 うん、逃げるが勝ち、だよねっ!

 サンタくんが追いかけてくる足音はない。もうすぐ授業が始まるからだと思う。……とりあえずは、だけど。


 でも、あの様子だと、会うたびに聞いてくるよね。きっとそのときは、あの魔王状態のまま、だよね。それに、逃げたことについてグチグチ言ってきそう。サンタくんって、根に持つタイプだから。

 な、なんとかほとぼりが覚めるまで、逃げ切らないと! 最低でも、合コンが終わるまで!

 ……だけど、そういえばなんでサンタくん、急に様子変わったのかな? おまけにあんなに聞いてくるし。

 ん~……ま、いっか!



 ***



 ▼サンタくんはオニに進化した!

 ▼サンタくんは魔王に進化した!


 ▼伊月は混乱している!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます!
「ミスキャスト!」
現在連載中です!
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ