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そのよん!   「俺の時代が来たぁ……!」

 ついに、伊月ちゃんが合コン参加です。

人物紹介がほとんどかも。



 やってきました、日曜日!


 あっという間だったなぁ~。でも、それまでが大変だったけど、主に、サンタくんからの追及が。

 休み時間に廊下に出るたびに遭遇するし、そのあとは教えろ教えろってず~っと言ってきた。あんなに会うなんて、もしかするといつも待ち構えてたとか? う~ん、まさか、ね。


 あまりにも聞かれすぎて、耳にタコができるかと思ったよ。ここ数日間続けてそうだったから、周りの人達の何事かとジロジロと見てきた視線が痛かったなぁ。

 それだけじゃなくて、放課後も追い回されたし。あの執念は一体どこから来てたんだろ。あの時みたいな鬼の形相で追いかけてきたから、あたしも必死に逃げた。半泣きで。

 暇だったのかな? サンタくん。あ、それとも、合コン参加したかったとか?

 それなら悪いことしちゃったかも。でも、人数の問題があるよね。やっぱり、サンタくんには我慢してもらおう。

 

 それにしても、サンタくんモテそうなのに変なの。合コンなんて行かなくても、可愛い女の子とか選び放題じゃないのかな? それとも、実はモテないとか? でも、結美ちゃんに人気あるって聞いたし。


 あ、わかった! 年上のお姉さんが好きなのかも!

『綺麗なお姉さんは好きですか』だよねっ? 納得だよ! もしかしたら合コンに綺麗なお姉さんが来ると思って、あんな危機迫ってたのかもね。

 綺麗な美人さんに囲まれるサンタくんが簡単に想像できた。


 ……むぅ? どうしてかな、ちょっと、もやっとするような。落ち着かない気分。

 合コンで緊張してるせいかな? 初めてだから、そうかも。


「あっ! 時間!」


 いけない、もうそろそろおウチを出ないと、待ち合わせの時間に間に合わなくなっちゃう!


 姿見の鏡の前で一回回って変なところが無いか確認! 寝癖なし、ミニの花柄ワンピの裾もめくれてないし、白のロングセーターも汚れてないし、黒のニーハイも下がってない。うん、完璧!

 白のダッフルコートを着込んで、玄関に向かう。そしてそのまま、あたしは慌ててバッグを手に家を飛び出した。



 ***



 待ち合わせ場所には、結美ちゃん達はみんな揃ってた。会話してる結美ちゃんと景さんを中心に、男女の集団ができてた。あたし以外は皆集合してて、少し待たせちゃったみたいだった。うう、ごめん。

 謝罪と軽くあいさつをしてから、とりあえず場所を移そうってことになって、カラオケに移動した。


 店員さんに案内されたのは、少し広めの一部屋。だけど、やっぱり人数が多いから、どうしても席を詰めて座ることになる。その結果、ほとんどすし詰め状態で、少し落ち着かない。

 ちなみに席順は、一応合コンだからってことで、男の子と女の子が交互になるようにしてた。だから、あたしの左右も男の子。


 左隣にいるのが、樫木かしぎ祐也ゆうやくん。皆の中で一人だけ髪を茶色に染めてて、その毛先をピョンピョン跳ねるようにセットしてる。服装は上はティーシャツに黄色と黒のチェックシャツ、下はジーパンっていう、ラフな格好。

 初めて見たときは軽い人なのかなって思ってたけど、あたしより会話をしにくそうにしていたから、案外人見知りなのかも。


 右にいるのが、宇崎うざき大悟だいごくん。背がすっごく高くて、あたしより頭三つ分くらい差があって見上げると首が痛くなるくらい。そんながっしりした体格なのは、陸上部に入ってるからみたい。

 あたしとは逆の席に座ってる、同じく運動部に入ってるサキちゃんと話が合うみたいで、自己紹介後からはずっと二人でしゃべってる。


 斜め左の向かい側にいるのは、田崎景、景さん。結美ちゃんの彼氏さんで、いっつも優しく笑ってる人。あたしと前にも会ったことを覚えてたみたいで、久しぶりってあいさつされた。

 今日の合コンのことをお礼を言うと、頭をなんでか撫でられたのは、少し不思議。結美ちゃんといい、景さんといい、あたしの頭を撫でるのが共通なのは二人がカップルだから……なのかな?


 斜め右にいるのは、徳西とくにしひろくん。落ち着いた雰囲気を持ってて、年上の人だなって思う。あ、男性陣は皆同じ高校の二年生で、高校一年生のあたし達より一つ年上なの。本来は敬語を使うべきなんだけど、今回は合コンだから、無礼講ってことになってる。


 そうそう、徳西くんだけど、なんと眼鏡をかけてるんだ! けど、サドじゃないんだよ! どこかの変態眼鏡サンタとは大違いだよね!

 びっくりして、「眼鏡って変態になるための道具じゃなかったんだ!」って言ったあたしを、かわいそうな目で見てきた。おまけに、「これは視力を上げるもので、そういう用途はないから」って苦笑で返された……。


 ごめんなさい。反射でつい。もうこれはきっと、刷り込みだよ。

 でも、日頃からあたしとサンタくんとのやりとりを見てきた結美ちゃん達三人は、とっさに頭に誰を浮かべたのかすぐにわかったみたい。


 男性陣は、この四人、樫木くん、宇崎くん、徳西くん、景さん。女性陣の、あたし、結美ちゃん、奈々ちゃん、サキちゃんで全員。八人っていう大所帯になってる。

 えっと、つまり、入口に近いほうから順に、樫木くん、あたし、宇崎くん、サキちゃんで座ってるんだ。あとの四人は、テーブルを挟んで向かい合わせで、景さん、結美ちゃん、徳西くん、奈々ちゃんの順。


 席についてから、まずはなにか注文しようってことになった。ちょうどお昼時に近かったし、ちょうどいいから、ここでご飯も済ましちゃおうって。

 カラオケ屋さんに来たのは久しぶりだから、ウキウキしちゃって、あたしはパフェを注文した。結美ちゃん達には、お昼ご飯前なのにって呆れられた。いいの、それをご飯がわりにするから。


 今は注文も終わって、個人で話をしてる人もいれば、歌い始める人もいるっていう状況。自由にそれぞれが過ごしてる。

 ちなみに歌う順番は、ジャンケンで勝った景さんから時計回りに曲を入れてくことに決まった。だから、あたしの番はまだまだ先。

 マイクを握って明るいポップな曲を楽しそうに歌う奈々ちゃんに手拍子をしながら、あたしは樫木くんを目で確認した。


 樫木くんとは反対側に座ってる宇崎くんは、サキちゃんと楽しそうに話してる。

 別に混ぜてもらってもいいはずなんだけど、合コンだから邪魔しちゃうのもどうかなって思って、やめてる。だから、必然的に、あたしは樫木くんとしゃべる流れになる、はずなんだけど…。


「お、落ち着け……落ち着け、俺。いくら顔も雰囲気も好みドンピシャだからって慌てすぎだろ……! うわ、変な汗かいてきた……。

 クソ、せっかくのチャンスを無駄にするわけには……。いやでも、いきなりマシンガントークかまして、がっついてるって思われるのも……ああ! 俺は一体どうすれば!」


 小声でボソボソ呟いてるから正確には聞こえないけど、樫木くんは唸って頭をかき回してた。

 は、話しかけづらいよう……。


 さっきから彼、この調子のまんまなんだよね。なんか必死に考え込んでるみたいだから、話しかけていいのか、あたしは判断がつかなくて戸惑ってる。

 うーん、あいさつしたときは、特に悩んでるみたいじゃなかったはずなのに。ちょっと、どもって舌噛んでて、大丈夫かなとは思ったけど。……もしかして。


「あ、あの!」


 思い切って声を声をかけてみると、樫木くんはビクッと肩を震わせてから返事をした。

 そんな大声を出したつもりはなかったんだけど、びっくりさせちゃったのかな?


「もしかして、体調悪いの?」

「へ? な、なんで?」


 結構自信があったのに、樫木くんはキョトンとしてる。思ってた反応とは違って、思わずあたしは首を傾げた。


「さっきから、ずっと下向いてるし、難しい顔してるからそうなのかなって」


 あれ、違うのかな?


「やっべ、性格も優しいとか、マジで天使だろ。……これは、運命か? いや、きっとそうに違いない、うん」

「? あの?」

「うおおぉぉぉぉ……! ついに、ついに! 俺の時代が来たぁ……!」

「!?」


 な、なに!? なんで急に声を抑えて叫ぶのっ!?


 もしかして樫木くんって、サンタくんみたいな変人?

 ど、どうしよ。なにか相槌でも打ったほうがいいのかな?

 サンタくんとかは、無視したりすると、頭にチョップしたりほっぺつねってくるんだよね。何回かされてからあたしは、嫌々でも、サンタくんの話には付き合うことにしてる。


 困ったあたしは視線をオロオロとさまよわせてたら、扉の中央にはめてあるすりガラスの向こうに、人が立ち止まった。あ、店員さんが来たのかな?

 食べ物がくれば、口に物が入るぶん、会話しなくてもすむかも。……ちょっとほっとした。これ以上何を話したらいいか、わかんないし。


 樫木くん、悪い人じゃないけど、言葉に脈絡がないというか、なんか、つかみどころがないんだよね。



 さらっと、伊月ちゃんとサキちゃんに春の予感?


 では、今回も読んで下さり、ありがとうございました!

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