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第11話 二兎を追い詰め二兎を得る

 ――暗い。しかし一部分だけ明るい。


 そのようにしか形容出来ない某国某所のとある一室。

 わたしはその部屋の中央で、ボンヤリと輝くディスプレイを凝視しています。


 真っ暗な部屋でディスプレイを眺めていると、視力が悪くなると聞いたことがありますが、それは長時間も画面を見続けて目を休めないのが主な原因。

 目を労わり、休めれば良いだけの話です。ただ、それだけの話。


 それはさておき、先ほどからこのディスプレイに映っている人物ですが――女性にしては長身なミステーロさんが、黒い拳銃を幼い男の子の小さな体躯に向けています。傍から見ると、大人が子供に拳銃を向けるなど世間では激しくバッシングされるような行為ですが、彼女らのいる世界は裏社会。


 其処には子供も大人も無く、生きるか死ぬかの現実しかありません。

 いまにも引き金を引くのではと思うほどの緊張感が、現場には漂っているでしょう。

「…………」

 その様子を、わたし――〝シーカーズ〟のボスこと『歌ノ原花音(うたのはらかのん)』は

「…………」

 無言で、ただジッと見ています。ディスプレイを、見つめ続けています。


 何のためにか。

 それは――『記録』するためです。

 この抗争と、ミステーロさんとワトソンさんの活躍を、記録するために。


「…………」

 しかし、一向にミステーロさんは引き金を引こうとしません。

 代わりに、何かを呟いているようです。

 音声は拾っていませんので、何を呟いているのかは分かりません。


 これは最新の科学技術の粋を結集して製造された、超高解像度画像処理撮影人工衛星――通称『3SIP』。宇宙空間から極限までに超高解像度処理された映像または画像を送信する、ハイテク機械。高度にもよりますが、最大で1cm四方に書かれた文字さえ解析することが可能です。


 なので、いまはミステーロさんと男の子の頭上が見えていますが、これ以上の拡大も可能です。角度の調整は少し苦手ですが、顔を覗き込む程度なら造作もありません。


「……拡大」

 わたしがポツリと独り言のように呟くと、キュイッとディスプレイ――厳密には、〝シーカーズ〟のメンバーに造ってもらったパソコンの音声出力装置――から声がしました。


『拡大を行います。倍率をご指定ください』

「ここから、更に十倍。角度も、九十度、変更……」

 滑らかな合成音声よりも機械的な言葉遣いで倍率指定をすると、またキュイッと音を立ててパソコンが動き出しました。


 画面には『倍率変動中』という表示がされ、しかしその数瞬後には消え――

 次に画面が表示された時には、ミステーロさんの顔が大きくディスプレイに映り込みました。これならミステーロさんが何を言っているのか、読唇をすれば分かります。

 プライバシーがまるで無い作業ですが、これも記録のためです。


「……『まだ生きていられる方法がある』ですか」

 言わずもがな、目の前の少年――パトリオートに言っているのでしょう。

 ミステーロさんに依頼を受けて調べたところ、彼は組織を解体して平和団体を設立しようと計画していたようですが、それに反対する人々に腫れ物扱いされていたようです。


 しかし彼は組織のトップの一人息子にして跡取り息子。失言でもしようものならすぐにトップに伝えられ、自分の首が()ねる恐れがあったので強く言えなかった。

 同時に進行していた、ミステーロさんとワトソンさんの活躍によるイトゥリアのマフィア組織が若干衰退するという事態も、彼らを圧迫していたようです。

 そこで国の人物と相談したところ、その人も二人の活躍は逆に目に余るからと〝ソフェレンツァ〟に殺害依頼が出された。


 しかし一昨日、なんとそのミステーロさんから『パトリオートを殺害する』という殺害予告の電話が入ってきたのです。当然、ミステーロさんはそんな電話を入れていません。

 ミステーロさんの推測では、〝M〟という人物が怪しいとのことで調査をついでに依頼されましたが、なかなか尻尾を掴めずこちらは四苦八苦しております。


 そして殺害対象の人物からの殺害予告に、組織の反乱因子たちは困惑するのと同時にこれはチャンスだと逆手に取り、ミステーロさんを、寧ろパトリオートの近くに置くことで二人を殺すために、嘘の依頼内容『パトリオートの護衛』を、殺害予告をしてきたミステーロさんに頼んだということです。高い報酬でおびき出して。報酬金を用意していた辺りを見るに、その確認をされた時のことを想定していたのでしょう。それと、ワトソンさんがくっ付いてきたのは嬉しい誤算だったようですが。


(しかし、彼らを更に困惑させる事態が起こる)

 これまでミステーロさんや〝ソフェレンツァ〟の人々を監視してきましたが、彼女の素振りがあまりに護衛に徹底していたため、彼らはいつ動くのかと困惑したようですね。


 このままでは会談の会場に到着してしまう――そう思った彼らは、遂に人気のないあの場所で作戦を実行することにした。本来はもっと早くに実行する計画だったようです。

 ところがミステーロさんとワトソンさんの圧倒的な戦闘力に打ち負かされ、いまは彼女の話し合いで休戦中。報酬金を貰ったり、パトリオートを殺害しようとしたり。

「……しかし、ミステーロさん。まだ、何かをしようと、していますね」


 ――まだ生きていられる方法がある。


 この言葉を意味するのは、やはり〝M〟の持ち込んだ依頼と関係があるようですね。

 しかし、いまその場で彼を殺害しても結果は変わらないはずなのですが……。

 そう思ったわたしでしたが、ミステーロさんという人物像をふと思い出すと――


「……そういうこと、でしたか。相変わらず、恐ろしい方、です」

 背中に、少し寒気を感じてしまいました。

 恐怖、でしょうか。感情の分からないわたしには、よく理解出来ませんが。


「…………」

 考え事をしている場合ではありませんでしたね。記録はまだ続いています。

 これでも一応、〝ソフェレンツァ〟の方にも手伝いますと言っている身。

 記録を済ませた後は、彼らがパトリオートの死に関わったという事実を、消さないと。


「……しかし」

 もしかしたら、いや、確実に――

 反乱因子たちは、パトリオートの死を見届けることは出来ない(・・・・)と思います。

 ミステーロさんの、いまの嬉しそうな表情を見る限りでは――




 ザアッと風が舞い過ぎる中、私の言葉に目を丸くするパトリオートは、やはり何かの聞き違いかと口を半開きにして呆然としていた。

 だがそれを悠長に眺めているほど、時間があるわけではない。


「どうした? 早く決めねば、本当に君をここで射殺せねばならんのだが」

「ボクが依頼する、ボクの敵を排除する依頼に、いくら払うか……?」

「そう言っただろう?」


 やはり、まだ精神が完全に生き返ったわけではないようだね。

 だがそろそろ進展がないと、反乱因子の方が余計な手を出すかもしれないのだが。

 殺すと言った以上、早く殺さねば『どうして殺さない?』と野次が飛んでくるだろう。


「……ミステーロさんは」

「うん?」

 精神が死んでいるのか生きているのか分かりづらい子だな。

 光は見えたが未だ腰が上がらず――って感じかね。

 子供特有の、優柔不断さというやつか。ここは緩慢にならねば。


「彼らから、いくら貰おうとしているのですか?」

 そんなことか。おおかた、反乱因子の支払った金額より多く支払うことで、自分が殺されるという依頼を揉み消そうとしているのだろう。

 果たして、それが上手くいくと思うかね?


「合計、二十七万ユーロだよ」

「二十七万……」

 そのあまりの金額に、パトリオートは驚愕の眼差しを向けてきた。

 膨大な金額だよ、二十七万ユーロとは。

 これだけあれば、本当に何でも出来る。子供からすれば。それほどの金額だ。


 さて、金額を聞いたところでどうしようというのかね。

 本当に、二十七万ユーロより多くの金額を提示して、私を納得させるつもり――


「では、三十万――ボクの口座にある九割の、三十万ユーロを、支払います」


 ……。


 …………。


 ………………!?


「さ、さんじゅう、まん……!?」

 唖然――これには、目を見開かざるを得ない。

 一瞬、この子は何を言っているのかと眉を寄せてしまった。

 三十万ユーロなど、今の時代だと質の良い家が一軒建つほどの金額だぞ。

 この期に及んでブラフでも見せているのか……?


 しかし彼は組織のトップ、その一人息子。

 ありえない話ではないが、それでも十歳ほどの一人息子にそんな大金を持たせるか

「信じていないようですね」


 これがすんなりと信じていられるかッ。

 これまで三十万ユーロを提示してきた依頼主は、誰もが大富豪の人間。それも、どんなに若くても二十代後半辺りの大企業の社長。その者が一番若かった。それが今回は――国が絡む組織のトップの一人息子。年齢は僅か十歳。

 やはり、ブラフにしか見えないし聞こえないぞ。


「スーツの胸ポケットに、通帳と判子があります。それを、前払い金とします」

 おいおい、そんな爆弾みたいなものを胸ポケットに抱えていたのか今日一日は。

 いや、もしかしたら常に胸ポケットにしまっていたのか?

 自殺行為も良いところだ。もし政府との関係が無ければ、誘拐されてやりたい放題されていたかもしれないというのに。親はどうした親は。ちゃんと教育しろ。大事な金だぞ。巨大な組織とは、それだけ狙われやすいということを理解していないのか。


 ……まあ良いか、そんなことは。

 問題は――パトリオートの言っていること。それが真実か、だ。

「それは、本当なのかね?」


 私の一家は優れた洞察力を持っており、常人では大抵気付かないようなことにも、敏感に気付くことが出来る。これは遺伝性の特異体質であり、私もお父様からこの特異な能力をすべて引き継いでいるのだ。

 この洞察力を用いて人の目を見ると――僅かな瞳孔の開閉、瞳の泳ぎ具合などから、その者が嘘を吐いているかどうか、手に取るように分かるのだ。

 仮にわざとだとしても、無意識な目の動きと意識して動かしたのでは、まったく違うと言って構わないほど違うので、やはり誤ることは無い。


「本当です」

 まだ立ち直れていないのか弱々しく、しかし芯の通った声でパトリオートは返事をした。真っ直ぐとした、先ほどのような死人の目とは違う、射抜く力を持つ視線。

 これは――覚悟を決めた者の、眼差しだ。


「……」

 嘘は――吐いていないようだ。

 間違いなく、彼はブラフではなく、真実を言った。はっきりと。

 自棄になっているようでもなく、少しずつだが精神も落ち着いてきたように見える。

 私の言葉で、まだ生きていられると希望が持てたのが一番の要因だろう。


「分かった。交渉成立のようだね」

「……ボクの殺害の依頼は、どうなりますか?」

 やはりそこが気になるか。


 はっきり言えば、依頼が上書きされることは――成立後にはまず、ありえない。

 受けると言ったからには頂く報酬分はキッチリと働く。どんなに大金を積んで『その依頼を無かったことにしてくれ』と相手から懇願されようと、容赦なく遂行するさ。

 依頼主であっても、私はキャンセル料を支払わねば遂行するからね。

 つまりは――


「変わらないさ。君は此処で、私の手により射殺される」

 しかし私の言葉で、パトリオートは臆することはなかった。

 私が怪訝そうな顔つきで彼を見下ろすと、彼は表情を変えずに口を開く。


「ボクの口座は、特殊なパスワードを入力しなければ引き出せない仕様ですよ」

「ほう。それはまた凝った防犯対策だね」

「一度でも間違えたり、その他の方法でお金を引き出そうとした場合、ボクでも分からない場所にお金が移動してしまう仕組みになっています。パスワードを聞きだす前にボクを殺してしまえば、あなたはお金を手に入れることが不可能となります」


 おや、それは困ったね。

 このまま彼を殺してしまえば、結果的に私はタダ働きとなってしまう。

 しかし彼は『依頼を終えたら教えます』という風に、口を真一文字に閉じている。

 ハハッ。なかなか言ってくれるではないかパトリオート君。


 おかしいと思ったよ。始めはどうしてそんな分かりやすい位置に通帳があるのかと思ったが、そこまで入り組んだ対策をしていたとはね。盗まれたとしても、手に入る確率は天文学的数値ほどの確率というわけか。

 ではどうしたら良いのか? どうすれば、私は彼を殺すことなく、反乱因子たちの依頼を破ることなく、依頼達成にさせて合計五十七万ユーロもの大金を手に入れられるか。


 彼を殺せば三十万ユーロを失う。しかし殺さねば、殺害分の十二万ユーロは手に入らない。反乱因子たちを殺して奪えば良い話だが、パトリオートを護りながらあの人数に立ち向かうのは少々骨の折れる仕事だ。大金を失う可能性の方が圧倒的に高い。


 だが安心したまえ、パトリオート君。

 殺害の依頼を達成させ、更に君の依頼を聞き入れる方法。

 答えは――実は至極単純なものだからね。

「なに。簡単な話さ」


 黒塗りの改造拳銃を、彼の胸の中心――心臓より少し左の位置に合わせる。

 これは――場所が狂えば、本当に彼を殺してしまう。超精密射撃の腕が必要となる。

 だがそんな不安要素など、幼い頃から拳銃を握ってきた私にとっては無いに等しい。

 そう。これは言うだけならば簡単で、実行するのが非常に難しい――


「君が一回死んで、もう一度生き返れば(・・・・・)良いだけの話ではないか」


 ――パスッ


 放たれた銃弾は、実に威力が無さそうな気の抜ける音を立て――

 しかしパトリオートの胸の肉を抉っていき、鮮血を散らせていった。

 揺れる茶髪、見開かれる青の瞳、信じられないという表情を此方に見せ――


 パトリオートは、心臓の近くを撃たれ――


「――…………」


 息、絶えた。


「……ふむ」

 火薬を極力減らした、超至近距離からの射撃に特化した銃弾は、何とも間抜けな銃声を拳銃から鳴らした。銃口から硝煙すら出ない。弱い威力であるとは一目瞭然。


 それでも放たれた銃弾の威力は変わらず――彼の胸を抉り、内部で停止した。打ち込んだ箇所を考慮したため出血は酷くないが、刻一刻と胸から血が流れ出ている。

 どんどん顔も青ざめていく。瞳孔も、徐々に開いていっているね。


 見るまでもなく――彼は、死んだ。


 さて、これで第一段階はクリアした、というところかな。

 だが、時間は無いぞ。

 ここからは、迅速に事を済まさなければ、手に入る報酬金が大幅に減ってしまう。

 何故なら彼は――


「し、死んだ……のか?」

 遠くからピエーデの、歓喜と疑問が混ざり合った声が耳に届く。

 私は反乱因子たちのいる方へと向き、パトリオートの死体が見えるように立ち直る。


「殺したさ。何なら脈でも調べてみたらどうかな? ピエーデよ」

「う、うむ……」

 少し腰の引けた状態で此方に歩み寄るピエーデを見ると、本当に反乱因子として、死ぬ覚悟を持ってパトリオートと私たちの殺害に赴いているのか、甚だ疑問に思ってしまう。


 とはいえ、それは他の反乱因子たちも同様であり、チラッと目を合わせるだけで後ずさる者たちもいる始末だ。先ほどの精神ダメージが、よほど堪えたのだろうな。

「ほら。死んでいるだろう?」

「……た、確かに。脈は止まっているな」

「これで、パトリオート殺害の依頼は達成というわけだね」

「そう、なるな」


 もはや私の目を見て会話が出来ないらしいピエーデは、終始目を逸らした状態だ。

 これは相当のトラウマを植えつけてしまったようだね。

「ほ、ほら金だ。俺たちはもう、お前らに手は出さない」

「そういう約束だからね」


 投げ出すようにアタッシュケースを此方に渡してきたピエーデ。その様子を見ると、少しだけ苦笑が漏れてしまった。ワトソンに至っては吹き出して咳き込んでいる。

「だから、早く此処から去ってくれ」


 酷いお言葉だね。

 まるで私とは二度と会いたくないと言っているようではないか。

 だが、私も君のような弱腰の人間とは――


「そう邪険に扱わないでくれ。実は、まだ私は君たちに用があるのだからね」


 ――もう、会いたくないね。


 えっ――そう、ピエーデが私の言葉に疑問の声を上げた次の瞬間、私の手元で銃声が同時に上がる。銃弾は狙い通りピエーデの心臓のど真ん中を貫き、噴水のような血飛沫が私の体をずぶ濡れにした。

 穴を開けてしまったり血塗れにしたり、すまないね、ロングコートよ。


「な……な、ゼ」

 ゴホッッッ――

 恨めしげな声で私に問いかけようとするも吐血で言葉を詰まらせ、とうとう彼は言いたかったことを言えぬまま、出血多量によるショック死で地面に倒れ込んでしまった。


「な、何をしているミステーロッ!」

 向こう側にいる反乱因子たちが一斉に、まだ破壊されていない分のカラシニコフ自動小銃を構え、私に怒声を浴びせてきた。その手はカタカタと震えており、仲間の死の動揺と怒りの板挟みとなっているように見える。そんなに震えていると、状況的には脅威だが精神的には脅威に見えないぞ。


「何をしているか? 見れば分かるだろう。ピエーデを殺したのだよ」

 至極当然。この男はそもそも此処で血を噴いてくたばっていたと言わんばかりの声音で、私は言った。

「我々はお前の用件をすべて飲んだだろう! ピエーデが殺される道理などないはずだ!」

「あぁ。確かに君たちは用件を飲んだよ。殺される理由は無い。だが、これはそこで死んでいる少年の依頼でね」

「ぼ、坊ちゃんの……?」


 今更だが、敵対しているとはいえ彼を〝坊ちゃん〟と呼ぶのだな。

 その点を見ると、彼らは心の奥底からパトリオートを殺したかったわけでは無かったのかもしれない。何とか説得して、共に未来を生きようと、懸命に働きかけたのかもしれないね。


 だが、それも彼の強い意志の前ではどうすることも出来ず――

 忠誠心とやらが生んだ悲劇の物語にしては、在り来り過ぎて三問芝居のレッテルを貼られるぞ、こんな馬鹿馬鹿しい騒動は。私なら芝居の途中で席を立つぞ。


 あぁ、またイライラしてきてしまったよ。どうも最近は短気でいけないね、私は。

 金のことと実家にまつわる物のこととなると、やはり目が眩んでしまうようだ。

「そう。彼は私に撃たれる前に依頼したのだよ。君たちを排除してくれとね」


 パスンッ!

 挑発と宣戦布告の意を表すために、死んだピエーデの体に改造拳銃の銃弾を更に撃ち込む。ビクンッと僅かに銃弾の衝撃で跳ねたその体躯は、しかしそれ以降は無機物のように動くことはなかった。


「き、貴様……!」

 その行為に他の反乱因子たちは目を剥いて怒り出し、手の震えも止まっていった。

 そうだ。やるならしっかりとやらねば、ただの弱い者いじめだからね。別にそれでも良いのだが、少し面白みに欠けるのだよ。強者が弱者に本気を出しては、大人気ないと批判されてしまうからね。


「だから私は殺す。報酬と報酬金のために、君たちをね」

 口角を不気味なまでに歪め、息を吹き返した彼らの刺々しい視線を受け取りながら――

 私は念を押すようにもう一度、ピエーデの死体に銃弾を撃ち込んだ。

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