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【魔王は紅茶を愛した】見捨てられた王子はひとつの「魔法」で世界を支配し、"魔王"と呼ばれた。  作者: 鈴木井蛙
第1巻 「出会いの章」

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リリアン先生講義録 第1講「帝国歴史学の歩き方」

 教授「それでは、リギリア帝国大学の卒業生を招いての特別講義に移りたいと思います。ではまず、史学のリリアン先生です。リリアン先生、どうぞ。」


 講堂にはぎっしりと学生が詰めかけていた。緑のローブと黒縁の眼鏡といういでたちのリリアン先生が登壇すると、会場は拍手に包まれた。


 リリアン「皆さん、こんにちは。私は普段、リギリア帝国第4初等学校で教鞭を取らせていただいているリリアンと申します。私は大学で史学を学んでおりましたので、これから半年の講義の中では皆さんにリギリア帝国史をお話させていただきます。」


 リリアンは、黒板に貼られた大きな地図を見ながら講義を始めた。


 リリアン「まず帝国史は、古代王国史、ジュラーム王国史、リギリア史に分かれます。その中でもとりわけジュラーム王国史は、史学科の本領とも呼べます。多くの書物に、手紙、契約書、文書、証文がこの時代に生まれました。それらパズルピースをかき集めて、一枚の絵を復元していくのが面白いんですよ。」


 黒板の地図。南西側には広大な大陸が広がっていた。


 リリアン「このジュラーム王国史を学ぶ際には、まず王様を追いかけると良いと言われています。どんな王様がいて、何をしたのか。そして次の王様にどんな宿題を残したのか。さらに次の王様は宿題を減らしたのか、増やしたのか、見なかったことにしてそのままにしたのか……。そんな風に見ていくと、歴史の流れに一本の筋が通って情報が整理できます。ただ暗記するだけだと、頭がこんがらがりますしね。」


 リリアンは、1人の王の名前を黒板に書いた。


 リリアン「光輝王アウレリウス1世。有名人ですから皆さんご存知ですよね。ですが、なぜ彼が特別と言われているかは分かりますか? ……ふふ、そうですね。歴史上唯一の光魔法の適性者だからと言われますが、それは正しくないんです。なぜなら、光魔法の適性者は極めて稀なものの、一時代に何人かいることも珍しくありません。」


 そして、講義を受けている生徒たちに向かって堂々と話しかけた。


 リリアン「光魔法の適性者は、代々神官家の女性に生まれやすいと信じられていました。現在の研究ではその理由も程度判明しているんですが、それは私の専門外なので……。とにかく、王国史の時代では光魔法の適性者は神官家の女性だけに生まれる奇跡だったわけです。でも、アウレリウス1世は王の血筋でありながら光魔法の持ち主だった……。」


 リリアン先生は黒板の前に戻った。


 リリアン「そしてこの事は、王権を強化しました。アウレリウス1世の即位を持ってジュラーム王国の基礎が完成したと言っても過言ではないでしょう。もっとも、光魔法を持った王はそれ以来生まれていないのですが……。」


 リリアンは黒板にいろんな単語を追記していった。


 リリアン「一般的なジュラーム王は、祭祀の長として正妃を迎える習わしでした。司祭の中でも最も高貴な四名家からお妃を迎え、王冠と妃冠を大神殿の祭壇に向かって一緒にかぶる。こうする事で、国王は政治指導者。正妃は宗教指導者として、二人の権力基盤を合わせひとつの王家を確立していたのです。」


 リリアンはにっこり笑った。


 リリアン「鋭い人ならお気づきでしょう。これが今で言う、"つがい冠"のお行事ですね! 小学校でやった人も多いんじゃないですか? かつては王国でも一番の重要儀礼だったものの、リギリア帝国成立後にはだんだん廃れていき、今日(こんにち)では文化としてだけ、残っているという事ですね。」


 学生は口々になるほど……と呟いた。


 リリアン「ちなみに私は気になっていた男子と交換したかったんですが……勇気が出せませんでした!」


 講堂は笑いに包まれたのだった。

次回「魔王は紅茶を愛した」の投稿は9月7日(月)18時の予定です。

物語は第2巻へ。いよいよルシアン達の北方行が始まります! 引き続き楽しんでいただけると幸いです。

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