第6話 望月家での出来事
――5月某日。
本日、俺こといっ君さんは金曜日の午後から遊びの約束があり、眞希と共にとあるマンションの前に来ていた。
「よーこそ、我が望月家へ」
「……つーても此処に来るのは一ヶ月振りなんだけどな」
望月家があるのは八階建ての小綺麗なマンションである。
外観は打ちっぱなしコンクリートで、如何にも新築デザイナーズと言ったような趣。
その最上階の一角が望月家であり、俺は眞希の操作でエントランスの扉が開いて中に入った。
それから俺は眞希に付いて行く形でエレベーターに乗り、タイル調の敷かれた内廊下を進み、ホテルみたいな扉の前に辿り着く。
「入っちゃって〜」
「お邪魔しまーす」
消臭剤のフローラルな香りが鼻孔を擽る。
向かって左右に扉があり、L字型の短い廊下が伸びていた。
「ええっと確か…」
「あ〜間取り?右が風呂場などの水回りで、奥がリビングね」
「分かった」
俺は靴を脱ぎ、洗面台をお借りして手洗い等を済ませてから奥のリビングにお邪魔させて貰う。
中に入ると眞希が過去に幾つかの球技大会とかで優勝した際に貰ったトロフィーなどが置いてあった。
「相変わらず眞希って凄いよなぁ」
「突然何?別にそれ程、凄くは無いわよ…ただ実力で制しただけだし」
そうしてふと、眞希は何かを思い付いたようで、口を開く。
「あ、そうだ。どうせ今日は暫くウチにいるんだし、ピザとか食べたくなったら注文しても良い?」
「おう、良いぞ。お財布と相談しながら」
「うん。それは勿論」
そうして俺達はテレビのあるリビングの絨毯に直置きした。
「「んじゃ乾杯〜」」
なみなみとコーラを注いだグラスで乾杯し、渇いた喉を潤す。
独特の風味と甘み、そして程良い刺激が喉を通り抜ける。
「それで今日は何やる?素材集めとか?」
「ん〜それでも良いかなと思ったけど、今日はどちらかと言うと対戦の気分かな〜?」
テレビ台の下に置かれているゲームハードを眞希は取り出す。
取り出したゲームのジャンルはFPS。プレイヤー目線で、任務を遂行したり、時には銃を撃ちまくって相手を倒すあれであった。
「ふふ〜ん。前回の敗北から10時間以上掛けて猛特訓した成果を見せてやる!」
「ほう?性懲りも無くまた挑みに来たか。いっ君さんの神プレイで眞希をまた敗北させ、勝ち取ってやろう!」
そう言いながらゲームを開始する。対戦モードで10戦先勝ち。
「あ!こんにゃろ!それウチの銃!卑怯ー!」
「フハハ!戦場に卑怯もクソもあるか!とったもん勝ちじゃ!」
「あっ……!あぁ、もう怒った!このウチを本気にさせた事を後悔させてやるんだから!」
「まだ一回戦終わっただけなのに、沸騰点低く無い?」
時折、コンビニで買って来たポテチなどをつまみつつ、取り敢えず10連勝した。
「…………………〜〜〜!!」
――ダンダンッ!!
「あの〜?眞希さんや?下の人に響くかも知れないから台パンは辞めておいた方が宜しいんじゃ?」
いっ君さんの10連勝は継続。そして眞希の10連敗も継続中。
一勝も出来ず遂に眞希は台パンしてしまう始末。
「……別の奴」
「はえ?」
「……別のゲームで勝負じゃ!それならウチが勝てるんだから!」
「あーはいはい」
ちょっぴり涙目の眞希を見て、俺は少し手を抜いてあげようと思った瞬間だった。
そんな感じで俺と眞希は様々なジャンルのゲームで遊びつつ、放課後の時間を過ごして行く。
眞希の家にあるゲームは中学時代からある程度やり尽くしてはいるが、二人でやると違った面白さがあった。
一人では中々出来ない協力プレイやったり、対戦ゲームでコツを教えてやったり。
そうして結局、どのゲームに於いてもいっ君さんが強かった訳なのだが…
「どうして…どうしてあんたに勝てないの!?」
「いっ君さんは何となくの感覚でやっているだけなんだが…」
「これだから感覚で何でも出来る奴は狡い!!」
とか色々と言い合いながらも、俺達は仲良く時間を過ごし、
「……でもこうしてあんたと二人で遊ぶのは少し懐かしいわね」
「そうか?別に一ヶ月振りじゃね?春休みに散々遊んだだろ」
「この一ヶ月で色々あったじゃない。新しい出会いだとか色々」
「……まあ、それは確かに」
この一ヶ月で確かに色々な事があった。
入学式の日に朔夜と出会い、クラスで廣仁に一目惚れしたりと。
眞希の方でも天宮さんとの運命的な出会いだったりと。
それから彰人や葉山達と知り合い、様々な時を共にして来た。
まだ一ヶ月程度、されどこの一ヶ月は中々濃いものだった。
「恐らくこれからも色々な事があるし、ウチとあんただけの時間って言うのも中々取れるかどうか分からないから、この時間はウチにとって実は大事な時間だったりする訳よ」
「……そう思ってくれているなら光栄だな。まあ、俺もお前と一緒にいる時間は楽しいと思えるよ」
「樹……。ふ、ふーん…嬉しい事言ってくれるじゃん?」
眞希はそう言って髪を弄りつつ、何処か嬉しそうにしていた。
「んふふ〜♪あ、そう言えばさ?今日ってこの後も暇?」
「おう、何なら明日も暇なまである」
「ならさ…少し遅くなっても良いんなら映画見て行かない?丁度面白そうな奴があったからさ」
俺はそう言われ、スマホの時間を見た。
ええっと…午後6時半ぐらいか。それぐらいならまだ余裕か。
「んじゃその映画とやらを見させて頂こう」
「決まり〜じゃあ少し待っててね」
そう言って眞希は上映会の準備をし始めた。
それから俺達は隣に座り合った。
「え、えっと眞希さん?近くないですか?」
「え?別にウチらの仲なんだし、気にしないじゃん」
「それはそうだけど…」
少し眞希さんの距離の詰め合いが気になったが、それでも俺達は3時間程度の上映会を楽しんだのだが…
「………………終わった。これ中々面白かったな眞k…」
俺が映画を見終わり、ふと隣にいる眞希に声を掛けたのだが…
その際に肩に寄りかかる眞希の寝顔が見えた。
「ううん……樹ぃ……」
「っと映画の途中で寝てしまったか…」
恐らく途中で眠気に襲われたのか、口をだらしなく半開きにした状態で眠っていた。
……寝るのは構わないが、それにしたってリラックスのし過ぎと言うか。一応此処に思春期の男が一人いるのですがね。
「……………ZZZ」
「気持ち良く眠っちゃってさ…」
まあ、長く一緒にいるとそう言った所も愛らしく思えてしまうのだから不思議なものだな。
「ふわぁ〜……俺もちょっと横になるかぁ…」
眞希の寝顔を見ていると、眠気が移ったのか瞼が重くなる。
俺は時間を見ようと思ったのだが、それより先に眠気が勝ってしまって俺はそのまま寝落ちするのだった。
△ △ △
――貴方達、起きなさい。
「んぁ……?」
気持ちの良い微睡みを過ごしていた所、ぼっとした頭の中で誰かの声が響く。
はて……?もしかして眞希が起きたのだろうか。
「眞希。それと遠坂君。早く起きなさい」
……ん?何か聞き覚えがあるけど、此処には居ないと思われる人の声な気がしたような。
疑問に思った俺は徐々に意識を覚醒し、目を擦って起きると…
肩に寄り掛かって寝ている眞希と、そんな俺達を見る女性の姿が…
「うぇ!?眞希のお母さん!?」
「ふぇ!?お、お母さん!?」
漸く俺達が起きた事に気付いたのだろう、我々の目の前にいる女性━━望月家の母親が安堵の息を漏らした。
「はぁ…私達以外の靴が玄関に置いてあったから誰かなと思ったけど遠坂君で良かったわ。それと遠坂君。悪いけど時間を見て?」
「え?はい………うげ!?深夜11時!?」
如何やら映画を見終わった後、そのまま俺も長い間寝てしまったようで、その途中に帰って来た眞希のお母さんに見つかった所か。
……確か望月家の両親は夜遅くまで働いていて、帰って来るのもだいぶ遅いとは眞希から聞いていたが、まさかお母様が帰って来るまで寝てしまうとは……。
「はぁ…眞希にはしっかり後で話をするとして…遠坂君。君の家族に連絡を掛けたいのだけど今いるかしら?」
「えっと…少し待ってて下さい」
そうして俺はLIN◯を開き、家族が揃ったトークにメッセージを送った。
しかし、両親は仕事で直ぐには既読が付かず、反応が返って来たのは姉貴と兄貴の二人からだった。
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いっ君さん
『突然ですいません。眞希の家で寝落ちしたらこの時間でした』
姉貴
『はぁ!?』
兄貴
『我が弟が望月さん家で寝ているダトォ!?』
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その後、詳しい経緯を伝え…
「──ええ、はい。二人で映画の上映会をしていたらそのまま寝てしまったみたいで……はい。はい。本当にうちの娘がすいません。あ〜いえいえ。悪いのは弟さんじゃ無く、本当にうちの娘で…」
現在、俺と眞希がリビングで正座をしている中、眞希のお母様が俺のスマホを経由してうちの姉貴に電話を掛けて連絡をしていた。
様子を見る限り、完全に平謝りであった。
と言う訳で、遠坂家と望月家に俺達の事が完全にバレてしまった。
別にやましい事はしていないが、流石に深夜を過ぎるかどうかの時間まで遊ぶのはアウトであった。
「お待たせ。遠坂君。一応、貴方のお姉さんと連絡をしてうちに泊まって貰う許可は貰えたから。時間も遅いし、泊まって行ってね」
「え?良いんですか?流石にご迷惑なんかじゃ…」
「良いのよ。寧ろ男の子とは言え、こんな夜の遅い時間帯に何かあったらそれこそ行けないし…それなら朝まで居て貰った方が安心するわよ」
「わ、分かりました……お世話になります」
そんな訳で望月家のお世話になる事になりました。
一応、俺は男で眞希は女の子。そこの所は意識するとして、迷惑を掛けないように朝まで過ごす事にしよう。
「あ、それと間違えても一線だけは越えないようにね?」
「ば!?馬鹿じゃないの!?う、ウチと樹がそんな事をする訳…」
「そ、そうですよ!?眞希は大切な友達ですけど、何を間違えればそんな事になるんですか!?」
俺と眞希が赤面して思った事を口にする。
それを見た眞希のお母様は『まあ、これなら大丈夫そうね…』と呟くと…
「御免なさいね。ちよっとした冗談よ。……さて、風呂とかまだなら順番に済ませちゃいなさい。後、遠坂君はうちの父さんが来ている寝間着で大丈夫かしら?一応洗ってはいるけど…」
「あ、それで大丈夫です!態々すいません!」
「余り気にしないでくれて良いわよ。こうなったとは言え、眞希の大切なお友達ですもの。お客さんとして丁重にさせて貰うわ」
眞希のお母様は俺達の事を怒ると言うよりは甘い様な気がする。
それどころか少しテンションが高いような気もする…
まあ、あれか。
自分の母親から見て自分の子供が今まで一人でいる事が多かったから友達を連れて来ている事に嬉しがっているものだろう。
そう考えた俺は眞希のお母様から寝間着を頂き、眞希と風呂の順番を相談し、眞希を先に入らせる事にした。
……べ、別にやましい事とか無いんだからね!?
それから眞希は一度俺の顔を見てから、少し恥ずかしそうにした後に風呂場へと向かった。
その間、俺は眞希のお母様と少し話していた。
「……さて、遠坂君。今回の件は色々思う所はあるけど…先ずはそれを除いて、いつも眞希の相手をしてくれて有難うね」
「え?……あ、ああはい。寧ろ眞希さんが一緒にいてくれるお陰で楽しい日々を過ごせていますと言いますか…」
「そう?あの娘ったら面倒な性格をしてると思うから迷惑掛けてないか心配なのよねー。まあ、遠坂君が居てくれるお陰で中学時代と比べたらマシにはなってるとは思うけど…」
それから眞希のお母様の相手をしていた。
『やれ、眞希の性格だと中々彼氏が出来ないだの、遠坂君が貰ってくれると嬉しいのだけどね…』だの返答に困るお母様であった。
暫くして眞希がラフな格好で出て来たのだが、俺と眞希のお母様の会話が途中から聞こえて来たのか『余計な事を喋るなババア!』と口喧嘩になったので、俺は望月家の服を借りて風呂場に向かった。
△ △ △
「まさか眞希ん家でお泊まりとはな…」
俺は望月家の風呂場で頭や身体を洗った後、湯船に浸かりながらそう呟いた。
友達同士で何処かの家に集まって夜通し遊んだり話したりすると言うのは不思議な事では無いが、それは飽くまでも男同士・女同士の話である。男女の場合、例え恋人の関係であったとしても遠慮はすべきだろう。高一なら尚更の話である。
「はぁ……眞希とは友達の筈なんだがな……」
俺は眞希のお母様に言われた『眞希を貰ってくれない?』と言う冗談混じりの言葉に戸惑ってしまったが、それを意識すると眞希の笑顔が頭に浮かび上がりそうになる。
……っと俺は何を考えているんだ!?眞希とは『友達』の筈だ。
余計な事は考えないようにしなければ。
眞希は中学時代に出来た唯一無二の女友達。
俺が『問題』をやらかす以前の事は噂で聞いているにも関わらず、噂では無く『本当の俺』をちゃんと見てくれた友達。
俺と一緒に良く話し、良く一緒に行動をし、良く一緒に遊ぶ仲。
休日には一緒にゲームをしたり、如何考えても不健康そうなジャンクフードを食べ、馬鹿みたいな冗談を言い合ったり──問題児と噂されている俺を馬鹿にせず、仲良くなってくれた大事な友達。
眞希の事は今も昔も大切で大事な一番の『友達』だと思っているし、出来ればこれからも良好な関係を築いて行きたい。アイツもそう思ってくれていたら嬉しいなとは思う。
だが、普段は意識せずとも、今回のような事があると否応無しに気付かされてしまう。
――望月眞希は、女の子なのだと。
成績優秀で、天宮さんと同じく目立つ容姿をしている可愛い子。
そんな子の御自宅で俺は今、同じ屋根の下で過ごしているのだと。
そんな子とこの後、寝間着に着替えた姿で鉢合わせし──
「……あれ?」
そう考えると何故か、どんどん心臓の鼓動が速くなって来る。
さっき寝顔を覗いた時は何とも思わなかった癖に。
――何故、今になって眞希の『女の子』だと思えるイメージばかり考えていて……
「……変なことを考え過ぎていても駄目だな。少し冷静にならなければならないな」
俺は変な事を考える想像を振り払い、望月家のお父様の服を拝借して着替え、風呂場を出て、リビングに戻ると…
「だからウチと樹はママが考えるような関係じゃ無いって!?」
「あら?それなら如何して――」
「あ、あの……」
リビングでは眞希と、そのお母様が未だに同じ事をしていた。
「あ、もう上がったのね。それじゃあ遠坂君は客室を使って頂戴。布団等は敷いておいたから」
「あ、済みません…色々お手数を掛けてしまって…」
「気にしないで良いのよ」
そう言って俺は客室に入って、未だ落ち着かない心を如何にかしようと呼吸をしたのだが…
「全くママってば口うるさくて仕方が無い…あ、樹。少しお邪魔しても良い?」
「“え”!?何で眞希さんが客室に入って来るの!?」
「別にうちなんだから良いでしょ?」
『変な樹よね〜』と言って来るが、それどころでは無い。
今、眞希の顔を見ると変に意識しそうだった。
因みに今の眞希の格好は灰色のスウェットの上下であった。
……少しダボダボだが、胸の方はそれなりに強調しているようだ。
はっ!?また変な事を考えてしまった!?
「いやぁさ〜さっきまで寝てて、風呂にも入って目が冴えちゃってさ。眠気が来るまでの間で良いからウチに付き合ってくれない?」
「は、はぁ…まあ俺も似た所だし、少しなら良いが」
『流石、樹〜』と言って俺の隣に座って来た訳だが…
――な、何を話せば良いんだ?
変に眞希を意識してしまい、何を話せば良いのか分からずにいると眞希が『ねぇ、樹…』と言って来て…
「な、何だ!?」
「いや〜こう言う時って何を話せば良いか分からないよねって…」
「そ、それは確かに…いっ君さんとしても何を話せば良いのか…」
「ま、まあ?別にいつも通りで良いんじゃないかなって〜」
如何やらお互いに緊張して何を話せば良いのか分からない様だ。
こういう時、男の俺が気を利いて何か面白い事を話せれば良いのだが…
「な、なぁ…少し気になったんだけどさ?お前って彼氏とか作らないのか?」
「はあ?何で恋バナ…あーもしかしてママが余計な事を?」
「う、うん……眞希のお母さんが色々言っていたからさ」
俺がそう言うと眞希は『あのババア…』と言っていた。
あれ?おかしいな?さっきまでママって言っていた気が……
「はぁ…別に今の所は作る予定は無いよ。いよりっちやあんたと一緒に居る方が気が楽だし」
「ほ、ほう…そんなんだ」
「まあね。実際の所、彼氏を作れだとか言われてもそう簡単に他人を好きにはなれないし、そもそもの話、同級生でも何処か子供っぽく感じる所があるからそんな人は中々現れないしね」
まあ、それはある意味で言えている話ではあるのだろう。
俺達の周辺でも大人びた人達はそれなりにいるが、それでも何処か子供っぽく見える人達も居るので本当の意味で『好き』になれるかと言われると難しい話なのかも知れない。
「それであんたの方は如何なの?ウチだけじゃなく、あんたの恋バナとかも聞きたいのだけれど?」
「え!?俺!?……好きな人ねぇ。特には居ないかなぁ〜」
「ふぅ〜ん…」
『でも』と俺は無意識のうちに口が開いて…
「気になる人が居ない訳でも無いかな…」
「うぇ!?ま、マジ!?だ、誰よ!?」
「………………………」
「ふぇ!?」
俺は無意識のうちに眞希の目を見ていた。
対して眞希は俺に見つめられ、『まさかウチ!?』と言わんばかりに動揺を隠せずにいた。
そうして暫く見つめ合っていると、眞希が耐えられずに…
「き、今日はもう部屋に戻るね!」
「え…あ…」
「お、お休み!!」
そう言って眞希は顔を真っ赤にして部屋を後にしてしまった。
それから少しして俺は眞希の顔が頭を離れず、ドギマギしてしまって中々寝付けずにいたのだった。
△ △ △
それから翌日、望月家で目が覚めた俺は望月親子と朝食を頂いて朝のうちに帰宅する事になる予定なのだが…
「「………え、えと………お、おはよう」」
リビングで眞希と出会い、何処か気不味い雰囲気になった。
「や、やあ…今日は朝食を頂いたら直ぐに帰る事にするよ」
「う、うん…」
「あらあら…」
俺達を見て眞希のお母様は『二人共、若いわねぇ〜』と呟いていたが、今はそんな事では無い。
眞希の顔を見ると何処か心臓の鼓動が速く感じてしまう。
……ま、眞希はただの“女”友達。ただの友達なんだから……。
「「い、頂きます」」
朝は苺ジャムを乗せたパンだった。
それを美味しく頂いている訳だが…眞希と上手く話せない為、何処か気不味くて仕方が無い。
そうして気不味い雰囲気の中、さっさと食べ終わった俺は眞希のお母様に『皿洗いだけはさせて下さい』と強く懇願し、キッキンで皿洗いをしていると…
「別にウチがするのに…」
と、眞希が食べ終わった食器を持って来た所だった。
「いや、流石に他人の家に邪魔させて貰ってて何もしないのは気が引けるって。だからこのくらいの事はさせてくれ」
「ふぅ〜ん…」
俺は眞希の分もさっさと洗い、色々と帰る準備もしてから望月家の方々に向かって、
「改めてすいませんでした。今度からは早いうちに帰りますので」
「今度からは気を付けてくれたら良いのよ?」
「ウチも今度からは気を付けるし…」
そう言ってから眞希は靴を履いて俺の隣にやって来た。
「ほら、エントランスまでは送って行くから」
「お、おう」
「それじぁね〜」
眞希のお母様と別れ、俺は眞希に連れられて玄関を出た。
「ま、まあ今回はこんな事になっちゃったけど…あんたとの遊びは楽しかったからさ」
「ああ、そこに関しては俺もだ。眞希のお母さんの冗談が無ければ変な気にはならなかったが…」
「それは同感。後で色々言っておくし」
徐々に気不味い雰囲気は解け、いつも通りの会話に戻って来た。
そうしてエレベーターに乗って一階に向かった。
「あ、そう言えばさ。来週って球技大会があるじゃん?」
「……おう」
「あれ、あんた大丈夫なの?」
『主に運動音痴の意味で』と付け加えて来た眞希に俺は…
「だ、大丈夫だ問題ある」
「問題あるんかよ…」
と、顔を真っ青にして答えるしか無かった。
それから少しの間、雑談を交わしてからエントランスで別れた。
「それじゃあ、また来週」
「ああ、また来週」
そう言って俺はマンションを出て、姉貴達に『今から帰る』と伝えてから、俺は空をふと見て思った。
「……この後、何て言われるんだろうな」
俺は帰った後の姉貴達から何を言われるかイメージしながら朝の帰路を辿るのだった。
読んで頂き、有難う御座います。
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