第8話『きばれよ、俺』
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「本当二人ともじっとするのが苦手だよな。昔っからそうだよ。毎回いなくなった二人を探しに行くのは俺の役目でさ、なのになんで毎回迷子センターで迎えに来てもらうのは俺の方なのかね?」
みんなで遊園地に行った時もデパートに行った時も海外に行った時もいつも二人はすぐ逸れる。
珍しいものを見つけたりきになるものがあったらそっちこっちへ行きやがる。
俺はそれに振り回されるんだが、気がつけば自分の居場所がわかんなくなって迷子センターで二人を待っていた。
二人とも何食わぬ顔して俺を迎えに来てくれるんだ。
「だから今回もここでまっとけば必ず俺を迎えに来てくれるって信じてたぜ?親友ども」
蹴り上げた『ソニックウルフェル』が地面へと叩きつけられる。
地震と見間違うほどの地鳴りが起こる。
見た感じだとかなりの高さまで飛び上がり落下したというのに『ソニックウルフェル』は軽いダメージしか負わなかったらしくその6本足ですぐさま立ち上がり体についた砂を払うために全身を左右に揺らす。
さすが『負けイベントモンスター』といったところか、とんでもない頑丈さである。
話したいことは山ほどあるが先にこいつを片付けるのが先である。
別に俺のスキルがあればすぐにでも逃げられるがせっかくだ、こいつのドロップアイテムもかさらってやろう。
運良く、今俺の手元にはそれだけのカードが揃っている。
すべてうまくいけばの話になるが大丈夫だろう。
俺は不幸の悪魔に溺愛されるぐらい運が悪いが幸運の女神に祝福を受けているかのごとく運がいい。
何より『世界』からホッペにチュゥーしてもらった唯一の人類である。
これほどの寵愛を体、一つに受けていながら未だに元気で生きている俺に不可能などはない!
というわけで俺は走って二人のところまで行く。
その時に昔、みんなで作った手信号で作戦を伝える。
二人とも真剣な顔つきで頷いてくれた。
『無重力玉』重さをゼロにした小治朗を担ぎ上げてそのまま『ソニックウルフェル』に野球ボールのごとく投げつける。
「え?ちょっとデブ、マッテェェェ!」
と叫びながらぶっ飛んでいく小治朗。
さらば小治朗、お前の死は忘れない。
『ソニックウルフェル』は投げつけられた小治朗を何事もないかのようにかわす。
かわされた小治朗はその場で一回転し着地し、手をまっすぐに広げそのまま『ソニックウルフェル』に手刀をかます。
「手剣一期一振」
手から放たれた斬撃は『ソニックウルフェル』の頑丈な毛皮を切り裂きその身に傷をつける。
『手刀』名前のまんまの小治朗のスキルである。
手を刀のごとく切れ味の良い刃物に変わるスキル。
まだあまり切れ味は良くないみたいだが、『ソニックウルフェル』にダメージが入るほどの攻撃力はあるようだ。
小治朗は『ソニックウルフェル』から距離を取り、こちらに向かって叫ぶ。
「いきなり何するんだよ、デブ。死ぬかと思っただろ!」
「ごめん!」
手信号で伝えた作戦とまったく違うことをした俺に小治朗は怒っているようで手を合わせて謝った。
これでチャラってことで。
だが、この戦況で手信号だけで作戦全部伝えるなんて無理である。
ある程度の応用はきかしてもらわないと。
「ダメだよ大木君!ブーちゃんの作戦に賛成したんだから、ブーちゃんのすることに文句言ったらりしたら、め!だよ。ブーちゃんはいつも正しいんだから!」
「わかってるよ!黛さん!」
『ソニックウルフェル』はターゲットを小治朗に定めたようで小治朗に対してその大きな前足を持ち上げ巨大な爪を振り下ろす。
二本の手を前にガードする。
『ソニックウルフェル』爪が小治朗の手刀とぶつかり合う。
甲高い金属音が鳴り響く。
『ソニックウルフェル』の肉体はその圧倒的なスピードに対応できるよう毛皮や肉体は頑丈だが、軽い。
素早さに特化した分、体重はその見た目ほど重いものではないからなんとか小治朗でもその一撃に耐えることはできているようだが、今にも踏みつぶされそうである。
見た目よりも軽いといってもあの巨体である、普通に100キロほどはあるだろうな。
それでも俺の方が重い!圧倒的にな!
頑張れ小治朗そのままそいつの注意を引き止めておいてくれ。
俺は涼香ちゃんに『無重力玉』をわたす。
「じゃあ、作戦通りによろしく!」
「了解だよ!ブーちゃん!」
『ソニックウルフェル』に向かって走り出す。
犬っころは小治朗をふみつぶそうと全体重を乗せているようで前のめりになっている。
どれだけ視界が広かろうとただ一点だけに集中していれば関係ない。
ただの宝の持ち腐れである。
なんと小踏みとどまって今にも押し潰されそうな小治朗。
顔もイケメンがしちゃいけないくらいにすごい形相になっている。
小治朗が切り裂いた『ソニックルフェル』の体にもっていた『グリーンオーガ』の角を叩きつける。
『ソニックウルフェル』はその場でのたうちまわり、遠吠えをあげる。
解放された小治朗をかかえて、その場を離脱。
これで多少なりとも弱体化される。
『グリーンオーガ』はその額に生えた角を使い周囲の生物からに生命からエネルギーを奪い行動している。
一定の距離をおけば問題ないのだが近くに近づけが自分でも気がつかないほど微妙に生気を奪われる。
この角たちが悪いのは『グリーンオーガ』自身も生命エネルギーを奪われているのである。
自分のエネルギーを消費して自分のエネルギーに変換する。
しかも回復するエネルギーは消費したエネルギーを下回る。
植物が呼吸をして二酸化炭素を生み出し、二酸化炭素を光合成により酸素を作り出すようなものである。
ゆえに『グリーンオーガ』、ぶちゃっけ見た目が緑見たいからだと思っていたが。
折れたことによりその効果はストップしているのだが、新たな宿主に突き刺すことにより機能が再開する。
しかも消費するエネルギーは爆上げされ回復エネルギーは驚愕的に減りさらには周りの生命力を奪うという機能は発動しないといういわくつきの代物だ。
そんなものを腹に刺された『ソニックウルフェル』は初めはのたうちまわっていたが、だんだんとその表情に疲れが見て取れるようになる。
一刻も早くエネルギーを普及せねばと思ったのか大きく息を吸い始める。
「ブーちゃん!準備オッケーだよ!」
その方向を向くと涼香ちゃんが手を振って合図を出してくれる。
オーケイ、サンクス!
ここからが正念場である。
きばれよ俺!
小治朗を涼香ちゃんに投げ飛ばし両手を大きく構える。
気がつけば俺の全身に無数の切り傷ができていた。
風圧に吹き飛ばされる小治朗、涼香ちゃんを尻目に『ソニックウルフェル』の巨大な牙が俺の巨体に深く深くかぶりついた。
そうだよなぁ!腹減ってるんだったら二人みたいなガリガリの骨と皮だけじゃくて俺みたいな肉厚ジューシーなお肉のほうがいいよな!
「デブ!」
「ブーちゃん!」
二人の叫び声が聞こえる。
いってぇ、いってぇええええ!
やばい、しぬしぬ、このまま噛みちぎられる!
ギリギリとその巨大な顎でおれの体を噛みちぎろうとする『ソニックウルフェル』だが、グリーンオーガの角のせいでエネルギーが大幅に座れているのか段々と力が弱まっていく。
ふわりと『ソニックウルフェル』の体が浮く。
さっき涼香ちゃんに頼んで『無重力玉』をこいつの腹に仕込んでもらった。
『無重力玉』触れているものだけを体重ゼロにする。
俺が『ソニックウルフェル』をつかんで浮かび上がったも良かったんだが振り落させたり、確実性がない。
俺の意思によったオン、オフできるこの玉の発動は俺が近くにいれば使うことができる。
『ソニックウルフェル」の鼻の穴に自分の右手を突っ込む。
モンスターといえどこれはたまんねぇだろ?
鼻腔を貫かれ、鼻がムズムズするのか少し少し息を吸う。
俺は『ソニックウルフェル』が俺を離さないように口に思いっきり抱きつく。
「ボェクション!」
巨大なクシャミとともに足の裏か空気穴から盛大に空気を噴出。
体重が0キロということもあり空高くに俺を噛み付いたまま飛び上がった。
やべぇ、怖い怖い!痛い痛い!
痛みと恐怖が俺を支配する。
こんな強敵と連戦するなんて自分の運のなさにうんざりする。
だがこれで勝負は決まった後は任せるぜ?
『無重力玉』をオフにして、自由落下が始まる。
『ソニックウルフェル』より重い俺が下になって落ち始める。
ジェットコースターに乗ったような浮遊感が全身を支配し始める。
だんだんと痛みもなくなり自分の限界を感じる。
地面が近くなったことを確認すると俺は思いっきり体をひねった。
『ソニックウルフェル』はその巨体プラス俺の体重をその全身に受けて地面に叩きつけられる。
「やったか?」
妄想する意識の中わざとらしく倒してないフラグがたつ言葉を呟くと『ソニックウルフェル』はさも当然のごとくのそりと立ち上がった。
俺を噛み付いたまま。
やっぱりダメだったか、さすが『負けイベントモンスター』そう簡単にはくたばってくれねぇか。
ここまでHP削ったんだ美味しいとこはくれてやるよ。
もはや痛みすら感じない体で『ソニックウルフェル』の牙がより体に刺さるのを感じる。
勝利のご馳走を食べるがごとく。
馬鹿野郎が。視野が狭けりゃあ思考も狭いんだな。
いいか犬っころ、お前は今俺とタイマン張ってんじゃねぇ、三体一でお前が狩られる側だってこと忘れてねぇか?
「天下五剣鬼丸」
次の瞬間血飛沫がとびちる。
もちろん俺のじゃない、『ソニックウルフェル』の首が切り落とされ俺ごと地面へ落下する。
やつの胴体も力尽きゆっくりとたおれた。
「ブーちゃんしっかり!しっかりして!」
大粒の涙を流しながら俺に駆け寄ってくる涼香ちゃん。
あんまり泣くなよ、美人が台無しじゃねーか馬鹿たれが。
「どうしよう、どうしたらいい?ねぇブーちゃん!」
自分の顔の涙をぬぐいながら必死に俺に聞いてくる。
悪いが俺はもう口がきけないくらいに弱っているんだ。
俺は自分のスキルを発動した。
何もないはずの場所に我が家の扉と全く同じのデザインをしたドアが現れる。
ゆっくりそのドアを指差した。
それだけで通じたのか涼香ちゃんはこくりと頷いてくれた。
小治朗もこちらに駆け寄ってきているみたいだがここまでが俺の意識の限界のようだ。
次目覚めた時は見知った天井かはたまた三途の川の手前かもな。
俺が生き残るも死ぬも後はお前ら三人しだいだ。
これだけ頑張ったんだ後は任せてもいいだろ?
不幸の悪魔にコテンパンにやられたんだ、後は任せたぜ俺の幸運の女神たち。
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