第1話 新たな乱世
かつてこの国は皇和家が治めていた。皇和家は国の中心部に都を治め、各地の領主達はその威光のもとに従い、長きにわたり平穏は保たれていた。しかし、その均衡は突然崩れた。
何者かが皇和家の都に火をつけ、大火災を起こしてしまう。長らく実権を握っていた皇和家だったが、反感を買っていた。
すべては「朝廷のため」だと朝廷という最高権力をいいように使い、ステータスの悪い民衆を晒し…殺していた。
この世にはステータスというものが存在する。ステータスはMAX値は100で、努力次第では多分誰でもいけるだろう。
項目は全部で6つある。
「武力」・「知略」・「統率」・「俊敏」・「耐久」・「魅力」言葉だけでは分かりにくいので説明をしておく。
「武力」…純粋な戦闘能力。力・剣術・技術・実戦経験を総合した強さ。
「知略」…戦術、判断力、先を読む力、状況分析の能力。
「統率」…兵や部下をまとめ、命令を的確に伝え、軍として力を発揮させる能力。
「俊敏」…素早さ、反射神経、回避能力、身のこなし。
「耐久」…体力、持久力、打たれ強さ、傷を負っても戦い続ける力。
「魅力」…人を惹きつける力。人望、カリスマ性、信頼、忠誠を集める才能。
ステータスの基準
5〜10 子供・老人
20 一般人
30 力仕事する人
40 足軽
50 一般武士
60 熟練武士
70 名のしれた将
80 一国を代表する将
90 天下に名を轟かせる
95〜100 伝説
最初から強い存在なんて存在しない。誰しもが努力して強くなるこの世界。魔法など存在しない、武器と身体能力で勝ち上がる世界。
話を戻そう。
皇和家は国を強くするため、力なき者は不要である。と提唱して「淘汰令」を発布する。低いステータスの民を殺して回る。
自身のところだけに強いステータスの者だけを固めて、他を弱める事によって反乱を防ぐと言われていた。
そんな横暴に見かねた民は皇和家を抜け出して四方八方に新たな国を築き上げる。のちに7大勢力と呼ばれることになるが、ここまでにしよう。
この物語の始まりは、そんなことすら知らず小さな村で生まれた少女の話なのだから。
時は1500年、小さな村で1人の女の子が産まれる。名を「カナタ」
カナタは幼少の頃から山で遊んで暮らしていたので人一倍体力があった。村の力自慢大会でも大人たちに引けをとらない実力があった。
カナタの住む村は以南家という領地内だった為、村の者は戦場に駆り出されることが多かった。カナタの父の五郎太も戦場へ行き、足軽としての地位を得ていた。
カナタは父の五郎太に憧れを抱いた。自分の父は領主様と戦場に行って戦ってるんだぞ!と毎日のように村に自慢する。村の人達も自分達も負けていられないと切磋琢磨し合っていた。あの日を除いて…
その日は雨が降っていた。カナタの父の五郎太は以南軍と共に北に向かっていた。カナタは父の帰りを楽しみに待つ。
それから数日後、カナタの家に届いたのは五郎太が付けていた短刀のみ。カナタの母は察して短刀を両手で大事に持ちながら抱きしめた。
遠征の時には、いつも手紙が来る。父の戦の自慢話が書いてある手紙があるはず…とカナタは手紙がないか探すが見つからない。
後から知った話になるが以南軍は北の八福家の軍によって全滅していた。以南家の当主は死に、親族も行方不明。以南家が治めていた領地は八福家が占拠した。
八福家が提唱したのは、今すぐに以南家の家紋を足で踏まないと斬る。家紋踏み領地内で行われた。
自分の憧れだった父が最後に残した短刀にも以南家の家紋が記されていたため、八福家に取り上げられる。カナタの母は抵抗したことにより、カナタの前で斬首される。
カナタは父の形見と母を失った悲しみで脳が耐えられなくなり、気を失う。八福軍の足軽達はそんなカナタを無視して行く。
カナタが目を覚ます頃には、村には誰も住んでいなかった。みんなはどこに行ったのだろうと探し出すカナタ。
いつも新鮮な野菜をくれたおじさんの家は家の中まで漁られた形跡があった。村で猟師としてイノシシやシカを狩る、あの人なら生きてるだろうと家に行くがいない。
みんなで水切りして遊んだ場所にもいない。山で虫取りした場所にもいない。
ついにたどり着いたのは自分の家。分かっていたけど分かりたくないカナタは燃えたあとの自分の家を見つめ直す。
昨日まで…その前までは、笑顔で庭を駆け回ってはしゃいでいた筈なのにどうしてこうなったんだろうと奪われた復讐よりも悲しみが増さってしまう。
何も残ってないこの村を旅立つカナタ。形見もなければ大事な存在もいない。1人、下を向きながらゆっくり足を進める。
とりあえず休めるところを探そうと、川をたどる。川を辿ればいつか海につく。海に付けば漁師がいる港が見える。港は家族でよく行った場所、初めて魚を食べた場所、家族の思い出の場所。
初めての魚に戸惑うカナタを見て楽しむ父と母。父は魚の美味い焼け具合を知っており、焼け魚をほぐして食べさせてくれた。カナタが魚の骨に苦戦していた所に母が、箸だけで骨を綺麗にとってくれた。
父におんぶされながら3人で夕日を眺めて村に帰る…
港も潰されていた。船も焦げて海に沈んでいた。何もかも無かった。せめて水は無いだろうかと探していたが体が持たず倒れてしまう。
倒れたカナタに近づく足音が一つあった。カナタは意識こそあったものの、空腹と水分不足で動けなかった。声的に男性だと分かるカナタ。
その人はカナタが休める日陰まで行き、座らせる。竹の水筒の水をカナタに飲ませじっと待つ。
さっきまで倒れていたカナタは息を吹き返すかのように戻る。
カナタが起き上がると、目の前には焦げかけた鍋にグツグツと煮込まれた雑炊があった。男は木で掘った茶碗をカナタに渡す。茶碗の中には、先ほどの雑炊が詰まっていた。
カナタは空腹だったため、毒であろうと食いつく勢いだった。雑炊はあっという間になくなり、男は立ち去ろうとしていた。
男は立ち去る前に言う。
男:近くに剣の稽古場がある。紹介はできるが、その後は自分次第だ。
そう言って1枚の紙を渡されるカナタ。紙には男の文字と地図があり、カナタは男に一礼した後、地図通りの場所に向かうのだった。
地図に記されてる場所は過山の奥だった。石の階段を1段1段登り、途中のお地蔵さんに一礼。1段を噛み締めて登り続けること20分、ついに稽古場までたどり着く。
カナタは体力だけは幼い頃から付けていたので息を上げることなく登れた。稽古場の門付近に門下生が数人こちらを見ていた。
門下生A:女がなんのようだ
門下生B:遊びで来るような場所ではないぞ
門下生の後ろから1人の初老が現れる。その初老は玄哲という元武士だそうで、戦場の知識や戦い方を教えている。毎年何人か、この稽古場に入門者が訪れるが8割は辞めていくくらい厳しい。
玄哲:何故ここに来た、まさか入門するのではないだろうな。
カナタは男から貰った手紙を玄哲に渡すと玄哲は呆れたようにそれを受け取る。
玄哲:またあの男からか、毎年毎年いらんことをする。
カナタは稽古場内を案内される。門をくぐると門下生たちがカナタをジロジロ見てくる。カナタは気にしないようにしていたが、やはり気になる。自分自身が「女」だから変なのだろうかと思った。
だが、門下生にはチラホラ女性がいる。門下生達は畑を耕して、薪を割って、井戸から水を汲んで稽古場で住み込みで暮らしている。
皆が笑って作業に取り組む姿を見ていると、村で父や母の手伝いをしたあの時を思い出す。
玄哲:門を叩いた者は皆、私の弟子であり、剣を学ぶ者だ。
女だから体力をつけても意味ないと言われた時もある。確かにそうだった。足軽や武士になれるのは男ばかりだ。女で有名な武将はいるにはいるらしい。けど一握り程度で夢のまた夢。
だけど稽古場では性別は関係ない。その事が分かっただけで、体力をつけた甲斐があった。今では自身を持つことができる、私が武士になれると。
稽古場の中央には屋根付きの大きな建物があり、人の声と何かがぶつかる音が聞こえた。「竹刀」を持つ人が中央に2人、それ以外は建物の端に並ぶように座り、ただ見ていた。その目は今にも戦う武士のような眼光でカナタは圧巻する。
玄哲:怖気づいたか?
玄哲が笑う様に言う。だがカナタの目は笑っていた。自分と同じ人たちがいる、ここなら全力でぶつかれる…
玄哲:女性寮に部屋と道着を用意してある。急いで支度した後、ここに来い。先ずは実力を見せてくれ。
カナタは女性寮に向かう。部屋は3畳程で窓も付いており、日も差している。最低限寝る場所が用意されていた。布団の上には道着が用意されていた。少し大きいが成長を考えたサイズなのだろう。
カナタは道着を着て、中央の建物に向かう。少し大きいサイズだからブカブカして動きにくい。
玄哲:準備ができたら竹刀を持て。私は構えるだけだから、好きに来るといい。
カナタは初めての竹刀を持つ。村では木の棒を持って武士ゴッコをして遊んでいたが、竹刀は木の棒と違って重い。両手で構えないと持てない。
それを見て誰も笑う者はいない。その目、その表情は何も変わらない。ただ静かに自分の番を待つ獣のよう。
カナタは思いっきり竹刀を叩きつける。玄哲は少し押されるが、竹刀片手でカナタをはじき返す。カナタは初めて自分より圧倒的に強い存在がいると確信する。
なら…手段を変えるだけ。カナタは力任せに突っ込むのではなく、あえて遅く踏み込む。1度目の突きはフェイントで相手を誘い出して、遠心力を利用して左から右に腰を狙うように叩きつける。
玄哲はそれを読んでいたのか、カナタが攻撃する時には既に構えを取っていた。
玄哲:この辺でいいだろう。力任せだが、剣筋はいい。
玄哲がそう言うと門下生達の顔は段々歪み、楽な姿勢になった。
門下生A:ようこそ、新しい武士の卵
門下生C:久々の女の子だから嬉しいわ
門下生D:結構チビだけど…歳いくつ?
玄哲:カナタが困っているであろう、自己紹介は各自稽古終わりにするが良い。
最初の稽古は見るだけだった。ただひたすら先輩門下生の打ちを見ているだけ。竹刀のや手首、体の動かし方を目で見て覚える。これが最初の稽古。
竹刀を1000回振るよりも見る方がいい。力は後からでもつけることができる。でも、相手の動きを観察する癖を身につけなければならない。
戦場では相手や戦場の動きを見極めたものが生き残る。日常的にその癖をつけておけば見極めるのもあるが戦う際、どう動けばいいのかが分かる。
稽古後、1人寮に戻るカナタ。後ろからそっと1人の女の子が近づいてきた。身長も歳もカナタと同じくらいだった。
その子の名前は「ツムギ」。カナタと同じ12歳の女の子。身長は少し小さめだがすばしっこいのが特徴。
ツムギ:私、隣の部屋だから何でも聞いてよ。少しは力になれるし…友達も欲しいからさ。
ツムギは幼い頃、住んでいた村は戦に巻き込まれ、家族とは離れ離れ。カナタと同じように稽古場に行って今があると言っていた。
カナタ:よろしく
短い返事だったがツムギは大変喜んでいて、カナタの差し出した手を両手で握りはしゃいていた。
これから始まるであろう稽古、カナタはどう成長していくのか楽しみにしましょう。




