薬瓶ひとつで悪役令嬢は自由になる

前世、日本で薬学を学んでいた女子大生・如月澪は、論文の締切前に事故で命を落とす。気がつくと、前世で遊んだことがある辺境侯爵家の令嬢・ヴィオレット・フォン・ルクセンとして転生していた。だがこの物語では「悪役令嬢」として描かれ、三か月後の舞踏会で毒殺される運命が待っている。

転生した澪は薬学の知識を駆使し、逃げるのではなく立ち向かうことを決意する。侯爵家に小さな薬局を開き、病気や怪我、毒の危険を未然に防ぐ仕事を始める澪。人々の信頼を得る一方で、舞踏会での毒事件や侯爵家を取り巻く陰謀の存在に気づく。

冷静沈着な副家令・レオンハルト・ヴァイスと協力しながら、澪は毒の分析と解毒を通して事件の真相に迫る。毒は人を殺すだけでなく、人の心や秘密を炙り出す道具にもなる――。悪役令嬢としての烙印を剥がし、侯爵家と自らの未来を守るため、澪の“調合劇”が始まる。

恋と友情、裏切りと策略、そして薬学の知識で紡ぐ知的ミステリ。舞踏会の毒事件の背後に潜む真の黒幕は、まだ影の中にいる――。