第50話
『やってもらう事はありますが、取り敢えずお互い自己紹介を致しましょう、今そちらに行きます。』
「じ、自己紹介ね。まあ良いけど」
正直自己紹介なんかよりも、何をやらされるのか不安でしょうがないので、そちらを早く説明して欲しい気持ちが強いのだが、謎の声の主の正体も知っておきたいので了解する。
数秒ほど待ち私の前の地面に赤い花が咲き始める。白い雪から花が生えてくるのは綺麗でもあるが、なんか少し不気味と思っていると、目の前には私より少し背の高い中性的な顔立ちのした人物が立っていた。
「うわぁ!ビックリした。」
「そちらに行くと伝えたではありませんか。」
「いやいや、まだ10秒も経ってないよね、それに赤い花が咲いたと思ったら急に現れたし。」
「そういうものですか?ですがそんなことはどうでもいいのです、自己紹介といきましょう。」
外見は優しそうな感じなのに喋り方も正確も全くと言っていいほど合っていない。とりあえずこのままでは話が進まないので話にのることにする。
「あらためて、私の名前は天紅花、よくシロアと呼ばれていたのでそう呼んでください。ここの空間を管理しているものであり、ここの空間の一部でもあります。」
「空間の一部?ここは結局何処なの?」
「ここは二次隔絶次元第六空間その中枢です。」
全く聞き覚えのない名前に、全く見覚えのない景色。今の言葉で分かったのは普通の人は知らないような空間の中枢ってことだ。私自身記憶喪失で過去の記憶が殆どない上に、探索者になって普通の暮らしをしているわけではないので普通の人間と言っていいのかは分からないけれど。
「な、なるほど、えっとじゃあその二次なんとか空間?って何?」
「二次隔絶次元第六空間です。その質問に答えるためには少し長い説明が必要になりますが?」
だいぶ長くなりそうな雰囲気を感じたので先に私の自己紹介をすることにした。
「私の名前はエリカです。急に頭痛がしだして、気がついた時にはココにいました。」
「エリカ?ただのエリカですか?」
どういうことだろうか、少なくとも私の名前はエリカのはずだ、貴族のように名字も持っていない。そして少なくともステータスにはエリカと名前が書かれている。
「えっと、私に名字とかはありませんよ?貴族でも無いですし‥‥」
「・・まあ良いです、重要なのは名前ではありませんから。ではエリカもう一度聞きますが貴方は【刹那】を持っていますね?」
「持ってるけど、このスキルが何か関係あるの?」
スキル【刹那】このスキルを最上位スキルと教えてもらってから私が持っている理由が全く分からないスキルだ。正直今の私には不相応なスキルだし、最初に発動した時以来使えた事もない。
最上位スキルと呼ばれているくらいだ、強力な能力だけでは無いのだろう、それくらいは分かる。でも、私が今ここにいる理由とは全く繋がらない。
「関係がある、と言うよりも要因そのものですね。エリカが【刹那】の所持者であるからここに来れたのでしょう。」
「別にここに行きたいと思って来た訳じゃないんだけど?」
私のその言葉は予想外だったのかシロアは考えるような顔をする。
「ふむ。では最近【刹那】を使用しましたか?」
「うん。使ったよ。でも一回発動したっきりで再度発動しないみたい。」
「【刹那】の使用、再発動の不可‥‥無理矢理発動しようとしましたか?」
もう一回使えないかと少し試したことはあるが、何も分からなかったため諦めた。少なくとも体に負荷をかけるように無理矢理発動しようとしたことは無いはずだ。
そもそも無理矢理にでも使おうと思えばあのスキルが使用可能なのだろうか、そう思って聞くと。
「無理です、普通なら。」
「じゃあ何で聞いたの、、」
「普通なら無理です、でも普通ではない場合もある。それだけのことです。」
「今回は違うようですし、大体状況は把握できました。結論としては・・・」
「結論としては?」
そこまで言って今までスラスラ述べていた言葉を止める。まるで良くないことみたいで少し怖くなってくる。そうこうして十秒ほど間を開けてからシロアは言った。
「【刹那】の代償ですね。」
私の耳にまたしても不穏な言葉が飛んでくるのだった。




