第24話
少し長め。
(後5分………5分で第一エリアに!)
私が魔装を使ってホーンガルから逃げ始めてもう5分は経っただろう。既に後ろに見える範囲では見えていないが、どうなっているのか知らないけれど確実に追ってきている。現に今も少し後ろの方でとても大きな音が聞こえるので勘違いでは無いだろう。
「次、右、左、左」
「・・・やっぱり2人で、分担、しても全力で、は走れな、いかぁ」
しかも結局4倍の速度が出るとはいえ、魔装はスキルではなく技術なのだ、だから私の動体視力や反応速度が全く足りていない。
実際私は木の位置を見て避けるので精一杯だし、地面の段差や飛び出ている木の根っこを教えてもらうのをメアに任せて2人で分担しているが、それでも精々3倍の速度くらいしか出ていない。しかし、じゃあ使った魔力が無駄になったのかと言うとそうでも無い。
そもそも魔装には制限時間の様なものが存在する。そしてその制限時間は、使った魔力量と魔力操作の上手さ、身体強化の割合によって変化する。今回は全体的に2倍くらいの強化だったのを下半身限定にしたことで、2倍強化の魔力で4倍強化している訳だから普通よりも魔装を維持していられる時間が長い。
それに魔力は大きくすればするほど扱いやすくなり、そういう部分を加味すると一概に無駄とは言えなかった。
「まあ今はそんな事よりも、倒す方法か、アイツの足一本くらい切り飛ばす方法を考えないと」
「勝てそうなの?」
「う〜ん。勝つしかないよ結局逃げ切れないし」
そう。そうなのだ。逃げ切ってみせるとは言ったものの、いくら効率化したと言ってもそんな長時間は保っていられない。ではどうすれば良いのか、正直傷を負わせて逃げるか、あわよくば倒すしかない。
ただし、そうなってくると第二エリアで戦うのは分が悪い。ホーンガルは図体は確かにデカいが、木の間を縫うように移動してくるため正面から戦うとなると私の優位性が殆ど無くなってしまう。
ならば私がさらに速度を出しやすくなる第一エリアまで行くしかないと言う訳だ。
(あと魔装を維持していられるのも10分ちょっとくらい、短期決戦でいくとしても5分は欲しい。そう考えるとやっぱりあと4分か5分でここを抜ける!)
そこから私はできる限りメアとの息を合わせて速度を出して走った。
そして5分後ーーー
「よしっ!開けた場所にでた!」
ラッキーな事にそこそこ広い場所に出ることができた。これなら全力で勝負出来るだろう。
私はメアにいつでも逃げれる体制で居るように指示して、前方に剣を構えた。そしてどんどんと前の方からダダダダッと言う音が大きくなっていく。きっとそれは時間にしたら10秒にも満たない時間だったが、私はそれがとても長く感じた。
そしてその時はやってくる。
「グルルッ!」
「はあぁぁぁ!」
ホーンガルは怒っている。いや、少し苛ついているような表情をして出てきた。しかしそんな事は知ったことでは無い、生き残るために私は躊躇いなく一瞬にして近づき、尻尾を切った。
ザシュッ
「くっ、浅い。防御が薄そうな尻尾でも半分もいかないくらいしか切れないの!?」
つくづく今日はステータス不足を感じる日だ。確かに今は速さで翻弄出来ているがあと3分も経てばすぐに殺されてしまうだろう。
そしてさらに嫌な事を一つ知った、ホーンガルは打撃に強い。
私が4倍くらいに強化された全力の蹴りを入れても多少仰け反るくらいで効いていない。こうなってくるともう対処法は、私には2個しか思いつかなかった。
何とか目に剣を刺して脳まで貫通させるか、口の中に剣か、魔法を放つしかない。しかしそれはあっちも分かっているんだろう。さっきからホーンガルは噛み付いて攻撃して来ない上に両目のガードだけはとても意識しているみたいだ、とことん勝ち目が無いね。
(どうしようか、正直私はもうほぼ詰んでる剣を目に当てれれば勝ち目はあるが、注意を引く為の方法がない。どうする、考えろ!考えろ!)
そうして頭を悩ませていたとき私の頭の中にノイズが走った。
『jpmtmjuPmbdgaeagjmd※◇↓±¶⁄×»∆――――――。』
(何!?何なの、ぐっ!………私の中に何か………入って…くる)
まるで何かに飲まれるようなそんな感じがした、まるでとても重い水で溺れているような。だけど何故だろうか?とても懐かしい心地がする。
そして、私を飲み込んでいたものは消え去りまるで最初からそうであったかの様に吸収された。そして私は剣の切っ先を相手に向けた。
『解除が完了しました。スキル【刹那】を個体名エリカに還元します』
この瞬間、私の周りの、いや森の音が全て――――消えた。
ザシュ、
「え?」
そして気づいたとき私はホーンガルの目に剣を突き刺していた。いや、貫通させていた。
『条件を満たし経験値が一定に達した事によりエリカのレベルが10に上がりました』
『数値が一定に達しましたスキル【格闘術】がセットされます』
『スキル【格闘術】【剣術】【短剣術】の存在を確認、統合します』
『統合によりスキル【近接戦闘術】がセットされます』
『数値が一定に達しましたスキル【土魔法】がセットされます』
聞こえてきたレベルアップの声に私はホーンガルを倒した事にようやく気がついた。
◇
「た、倒したの?」
「分からない、いや死んでいる。それは確かな事だと思うけど………私はいったい何をしたの……?」
「め、メア、私が何したか知ってる?」
私は一応メアに確認してみると、何故かメアはしょぼんとして謝ってきた。
「ごめんなさい。最初から殆ど残像みたいにしかお姉ちゃんの事見えてなかった。それに、最後はお姉ちゃんが剣を向けたと思ったら今の状況になってたよ?」
「何で謝るの?聞いただけなのに、」
私は少し可笑しくなって笑いそうになったが、我慢してすぐさま解体をし始めた。まあ解体と言っても今日はもう疲れたので角と魔石だけ取って後はゴブリンの魔石を一個使って燃やしたけどね。
「良かったの、燃やしちゃって?きっと沢山お金貰えると思うけど」
「うん、流石に持っていく気にはなれないよ、速く帰って寝たい。あ、でもホーンガルが第二エリアに出た事は伝えなきゃダメだよね」
私は酷使した足に鞭打って街までの帰り道を歩いた。
「あれ、人が少ない気がする」
「ほんとだ、確かにいつもより戻ってくるのが早かったけどそれにしても少ないかも?」
私達はクタクタになりながらどうにかギルドに戻ってきた。でも何故か人が少ないようだ。よく見てるとギルドのカウンターの奥の方もゴタゴタしているみたいだ。
左側のカウンターに、サーラさんが居たので報告をする為に向かった。
「あら、二人共今日は少し早いのね?それに疲れてるみたいだけど」
「はい。ちょっとトラブルがあって、その報告と素材を売りに」
「報告?何かまずい事があったのかしら」
私は第二エリアにホーンガルが出た事を、サーラさんに伝えた。
「そう、第二エリアに出たのね、良かったわね、襲われなくて」
「襲われましたよ?」
「え?じゃあどうやって逃げてきたの?」
「なんとか倒しました」
「え?ごめんなさいもう一回。言ってもらえるかしら?」
「倒しました」
「嘘……ほんとに?」
信じられないのだろう、困惑の表情をしている。当たり前だ。だって私だってどうやって倒したのか分からないんだから。
「嘘じゃないですよ、ほら角と魔石です」
そう言って私はカウンターの上にホーンガルの角と魔石を置いた。
「確かに、これはホーンガルの角ね、じゃあ本当に倒したのね。」
「はい。それとこれも換金をお願いします」
袋からウルフやゴブリンの魔石を取り出して買い取りをお願いする。
「分かったわ、それじゃあ、って、あぁ………」
「どうかしたんですか?買い取り出来きないとか?」
「いえ、それは問題ないわ。ただ、本当だったらギルドマスターに報告しなきゃいけないのだけど、今緊急で出掛けてていないのよ」
(緊急、何か事故とか?いや流石に事故でギルドマスターは行かないか、じゃあ依頼とか?元探索者って言ってたし)
私は普通に気になったので聞いてみた。
「うーん、そうねどうせ明日になったら広まると思うし伝えておくわ。実はね・・・ダンジョンが近くに出来たの」
「ダンジョン?」
今月は後二本上げられるかも、




