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橘フレンズ!  作者: 橘める
クッキー編 A Legendary Man
6/8

ひまり、豹変す 前編


「実は……」


鳥栖は2人に話した。リムルは自身の悪い噂の出所がひまりと考えていること、自分を誘ったグランドオーダーのマルチがその原因と推測していること、そしてひまりが自分の団に移ってきたこと____



「やっぱりね」


鳥栖が話し終えるた後の橘の反応は、意外にも落ち着いたものだった。


「橘さんはすべてご存じだったんですか?」


「まさか!

でもそれで全ての辻褄があうんだよ、そもそも僕の記憶ではひまりはリムルさんと同じ団にいたはずなんだ。同じ団には雑談部屋のメンバーが複数人所属しているし、イベントも毎回最上ランクのA帯を突っ走っている。そこから鳥栖ちゃんの団に移るメリットはある?」


「……ないと思います。私の団は雑談部屋のメンバーは私1人ですし、イベントもB帯上位くらいです」


「となると、ひまり側に団移籍のメリットがないんだよね。

勿論プレイスタイルをガツガツからマッタリにしたい、ということであればメリットかもしれないけどそもそもリムルさんの所属団は美和さんが団長をやってるし雰囲気もマッタリめなんだよね」


雑談部屋には2つの派閥がある。1つ目が学生など若年層で構成される派閥。ここには橘や太公望らがいる。そしてもう1つの社会人中心のやや年齢層が高めの人々で構成される派閥。美和はその社会人中心の方の派閥の中心の1人であった。


ちなみに2つの派閥は決して仲が悪い訳ではない。むしろ比較的良好ですらある。ただ社会人中心の方の派閥の話題のメインは、ゲームそのものの攻略情報と酒やグルメの話である。そのため金銭的余裕もなければ成人でもない学生メンバー達には敷居が高く、橘達を中心とする派閥が形成されてしまうのだ。


そのため美和の団は主に雑談部屋の延長線上という色合いが強く、雰囲気も比較的まったりめなのである。


「やっぱり怪しいんだよね

リムルさんの言うとおり、鳥栖ちゃんを狙ってる可能性が高い」


「と、なると今後どう対策するかについてだが……

もしひまりが鳥栖さんを狙っていたとして、現状出来ることって少ないんじゃないか?」


と、ここで太公望が口を開いた。


鳥栖が目をやった先にいた太公望はいつになく腹黒さが前面に出た顔付きをしている。雑談部屋に出入りするようになって日が浅い彼女が、太公望のそんな顔付きを見るのははじめてだった。

少なくとも天然かつ物腰の柔らかそうな普段のそれとは遠くかけ離れており、ある種の恐ろしさすら感じられた。


「太公望さん……??」


当惑の声をあげる鳥栖。


「ああ、心配ないよ、こういう時の太公望は頼りになるから

とにかく、詳しく聞こうか」


橘のフォローに鳥栖は頷く。


「何か、驚かせてしまったようで申し訳ないけど、続けるよ。

そうだな……例えば警察だったり正義のヒーローって被害が出てから悪役を相手にするだろう? ストーカーだってそうだ。ワタシだってひまりが鳥栖さんを狙っている可能性は高いと考えているが、ただ如何せん、鳥栖さんには実害が出ていない」


「つまり?」


「仮にひまりからの実害がある前に排除しようとしたとする。すると〝こんなことをされる謂れはない〟とひまりは被害者ぶるだろう。そうなるとひまりをよく知らない鳥栖さんの団の団員達は鳥栖さんの行動に疑問を持つはずだ。その時に鳥栖さんはひまりが自分を狙っていたという明らかな証拠がいるんだよ。その団員達を納得させるために。

だが、その証拠は…………」


「…………ありません」


「そう、〝状況からしてそう推測できる〟程度なんだよ。

だから、今は時期尚早。しかもひまりをどうにかしたいなら鳥栖さんへの攻撃を待ってカウンターという形しかない」


「じゃあ、現状どうにも出来ないということかい?」


橘からそんな声があがる。


「疑わしきは罰す!というスタンスで行きたいのであれば、ひまりが鳥栖さんを狙っているという噂を流すのが1番早い。ネカマが女プレイヤーを狙うだなんてネタはすぐに広まり、ひまりは雑談部屋からいなくなるに違いないからね。でもどのみち、ひまりが鳥栖さんを狙っているという証拠が必要なことには変わりないんだよ。ひまりが鳥栖さんを逆恨みし、団内で反撃に出てくる可能性が高いからね。その反撃でひまりは鳥栖さんに対して完全に優位に立とうとするんじゃないかな。

例えば〝私に謝罪して、雑談部屋での噂を否定しろ、そして入れ知恵した連中とは手を切れ〟みたいに。


別に今の団に思い入れがないなら、さっさと退団した上で噂を流せばノーダメでひまりを潰せるけど、鳥栖さん的には今の団にいたい感じかな?」


「今の団に、ですか」


鳥栖は少し考えこんだ。

今の団は何も彼女にとって2つめの団ではあった。しかし最初の団は全員無言の非アクティブ団だったため、実質この団が彼女にとってのはじめての団と言える。そういう意味では離れるのに抵抗がある。今の団を離れたところで、果たして次の団で上手くやっていけるのか_____


「やっぱり、ちょっと難しいです…………」



「…………そっか」


太公望はやや残念そうな面持ちで頷くと


「じゃあ、次善策……というよりは後々のダメージを最小限に抑えるための対症療法……は違うか、予防策を教えておくとしよう

まずは〝その人〟と話をつけてほしい___」


そう言って次々と鳥栖に手順を説明していくのであった。







◇◇◇◇


「それで、話とは何でしょう?

鳥栖加奈さん」


コンコンコンと小気味の良いノックとともにその人物が鳥栖の団内プライベートスペースを訪ねてきたのはそれから3日後の土曜日のことだった。


「柏陽さんですね、お待ちしてました

相談したいことがあるんです、新規団員のひまりさんについて」


そう、太公望が話をつけるべきとアドバイスをしたその人こそ、柏陽。


彼女の所属する団の副団長の1人であった_____












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