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みんな仲良く  作者: 夕顔
7/8

 ある日、取締役基点の全社を巻き込んでの大きなプロジェクトが発生した。

 全社の現在の体制が大幅に変更するという、とても大きなものだ。


 舵をとるのは、最近の成長が著しい東京本社の我が部署に決定した。


 責任者はうちの部長で、リーダーは大久保さんが勤める事になった。




 皆は一丸となった。

 チームを編成し、スケジュールや管理体制、稟議や手順や書類作成から他社の応援依頼など様々な対策を練り上げ、ついにプロジェクトはスタートした。


 中には進捗に遅れが出る者もいたが、皆で度々打ち合わせをしながら現状を確認し合い、対策やサポートを工夫しながらゴールを目指した。


 進藤さんは相変わらずのままだったが、聞いたところによると彼の仕事量は他の社員の三倍だった。

 本来ならリーダーと同じかそれに次ぐ立場なのだが決してそのような素振りは見せず、淡々と莫大な量の仕事をこなしながら皆の相談と外部からの窓口を引き受けていた。


 その時も彼は


 「仲良くする必要はない」


 と言っていた。




 プロジェクトが順調に進み、完成前の進捗率と報告をする全社での最終会議でついにあの人が噛みついた。


 以前Cさんが同様の会議で、これまた同様に噛みつかれた他県の支社長だ。


 出世欲の塊の彼は独自のコミュニケーションがあり、取締役にもコネクションがある。

 そしてこのプロジェクトの成功に対して面白く思っていないはずではある。


 更に彼は現在我々が変更をしようとしている現行の体制を作り上げたスタッフの一人だったためか、普段より更に不快感をあらわにしていた。


 我が部は部長を含め皆で彼の言い分に耳を傾けた。

 感情的になっている人には何を言っても通じないという事だ。



 長い時間その状態が続き、支社長が少し落ち着いてきたところで部長が静かに口を開いた。


 部長は勤続年数的にはその支社長の後輩にあたる事もあり、普段からとても気を使って対応をしている。


 その部長が珍しく

 「我が社は時間対効果の評価方法に移行するにあたり、現状の改善策の一つとしてこのプロジェクトを立ち上げました。

  支社長が仰る事は自分の都合に対する感情論であって、我が社の改善にはならない事を忘れていませんか。」




 私は見逃さなかった。

 この時進藤さんは少し驚いてから嬉しそうに微笑んだのを。




 部長は支社長が感情的に話す事に淡々と対応し、最後に

 「そもそも取締役会で決定されたような事をここで必要無いと声高に言っても仕方ないでしょう。

  私は必要性を感じたためにこのプロジェクトを遂行しているのです。

  不必要と考えるのならば支社長が直接取締役会に申し出て下さい。

  取締役に公私混同する方を私は知りませんが。」

と言った。




 支社長は顔を真っ赤にして黙った。


 もしかすると彼は本気でプロジェクトを潰しにかかった訳では無いのかもしれない。

 いくら取締役にコネクションがあったとしても、一度決定された事を覆すのは難しいはずだ。

 これ程までに噛みつくのは「面白くなかった」事が一番の理由なのではないか。


 しかし我が部署がそのような思いを受けとめるのはあまりに理不尽で、皆は仕事を山のように残して会議に出席しているのである。

 支社長が感情を吐き出し、あわよくばプロジェクトを潰そうとしている時間は何も生み出さない。




 部長は皆が頑張ってきた物を背負い、会社の意思を背負い、矢面に立って長年付き合いのある先輩の支社長に立ち向かった。




 皆何も言わずに支社長を見つめていた。




 その後は特にトラブルもなく、当初のスケジュールよりかなり早くプロジェクトは大成功をおさめ、我が部署は表彰と金一封を戴く事ができた。




 その後の打ち上げで部長は

 「進藤くんが言うのはこういう事なんだよな。」

と言って笑っていた。


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