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みんな仲良く  作者: 夕顔
8/8

 プロジェクトの打ち上げの席で大久保さんから教えてもらったのだが、進藤さんに皆が集まったのは「ブレない」からだという事だった。


 大きなプロジェクトとなると様々な人が関わり、多くの意見や思いが飛び交う。

 そのような中で進藤さんは他部署や他会社の窓口となり、相変わらずの調子でブレる事なく淡々と大久保さんをサポートしたという事だった。


 そして大久保さんは

 「進藤くんが仲良くしないと言うのは少し誤解で、ニュアンスとしては馴れ合わないという感じだな。

  彼は馴れ合う事による会社への不利益の重さを考え、そこに線を引いて誠実に仕事をしている人なんだ。」

と教えてくれた。




 ようやく繋がった。




 そうか彼の言う「仲良くしない」はそういう意味だったのか。


 「進藤組」の人達は馴れ合いについて早くから考えていて、彼の意思に気付く事で進藤さんを信頼したのだ。

 「わきあいあいチーム」も彼は仕事が出来るだけではなく、会社に誠実な人だという事に気付き、少しずつ歩み寄ったという事なのだろう。




 進藤さんが言いたかったのは、皆が仕事を本当に楽しむためには「馴れ合うべきではない」という事なのか。

 思えば見えているはずのゴールを紆余曲折してしまったり見失ってしまうのは、「馴れ合い」の弊害なのかもしれない。


 馴れ合いには情が絡み、それによって曲がる筋があるのは私も分かる。

 本来するべき事を情に頼り、甘えたり適当にしたり、時には無かった事にしてしまう。


 それを仕事でしてしまうとブレるという事だ。


 さらに部下に物を教えたり教育したりする場所でブレてしまうと、部下の成長速度や成長率に差が出てもおかしくない。

 教えてもらう立場の疑問やストレスは言うまでも無いだろう。




 そのような現象を防ぐには「仲良くしない」もとい「馴れ合わない」ように意識を持つべきだと、進藤さんはずっと言い続けてきたのか。


 そして皆がそれを出来る環境では無い事にも気付いているから、「わきあいあいチーム」の飲み会を直接否定をしない。

 公私混同をしない事の重要さを彼ら自身で気付いてもらいたい所であったのだろう。




 そこまで考えるとため息が出た。




 しかしそれを訴えるのには、時に悪口や嫌味を言われる事もあったであろう。

 そこで自分の意思を理解してもらうために、たくさん勉強をして多くの知識を身に付けるなどの努力をしたのではないだろうか。




 だから彼は信頼されたのだ。




 さらに驚いた事を大久保さんは教えてくれた。

 「進藤くんはこういう問題を解決させるために特命で異動して歩いているんじゃないかという噂だよ。

  彼が前にいた支社の人が教えてくれたんだけど、その前の支社でも同じように立ち回って、部署内は同じように変化していったらしい。」


 ちょっと信じられない話だが、だから他部署の部長達から彼に電話が来るのだろうか。

 しかし、もしかすると我が社の体質的に、時間対効果などの改善を求めるにはこのような働きかけが必要なのかもしれない。




 ふと遠くを見ると進藤さんが初めて皆と笑顔で会話をしている姿が見える。

 他の人にからかわれる事に対して、無邪気で可愛らしい反応をしている。




 それを見た瞬間に私はハートを掴まれてしまった。

 普段とのギャップと、彼の誠実さに心を打たれ、もっと彼を知りたくなってしまった。


 プライベートの彼を知りたい。




 打ち上げの一次会が終わり、二次会参加者を募っている所で私は次こそは進藤さんの隣に座ろうと気合いを入れた。


 ところが


 「じゃあ自分はこれで。お先します。」

と進藤さんは皆に挨拶をすると歩いて行ってしまった。


 私は心底残念に思い、彼の背中をずっと目で追いかけた。




 すると交差点を渡る彼が女性と笑顔で手を繋ぎながら歩いている。


 「なにい!」


 思わず声が出てしまった。


 遠目に見える彼は幸せそうに笑っていて、隣を歩く女性は色素が薄そうで色白な人だった。



 「ああ。進藤くんの嫁さんのはずだよ。

  確か君と同郷の人じゃないかな。

  彼が残業をしないのは、もしかすると会社のためよりも嫁さんに会いたいからかもな。

  今日も待ち合わせてるのか、仲良いよなあ。」


 大久保さんは笑って言った。




 恋して5分で失恋した私は肩が落ちてしまった。


 大久保さんはそんな私を見て

 「因みに俺は独身なので宜しくね。」

と微笑んだ。








 その後すぐに進藤さんは異動していった。

 特命の話はあながち嘘ではないかもしれない。




 彼が残してくれたものは目には見えないけれど凄く大きく、私達の職場は今日も皆仲良く、はりきって仕事をしている。


 口下手で無愛想な彼は、またどこかで「仲良くする必要はない」と言っているのだろう。




 残念ながら私の監視はこれでお仕舞い。




 あなたの職場にもいるかもしれない進藤さんの声が無事届きますように。




END

最後まで読んで下さいってありがとうございます。

今回は過去作品の「ふるさと」から大久保と「間違いと正解と」から進藤の妻が登場しています。


私も毎日がむしゃらに過ごしてまいりましたが、先日家族と話している時にふと忘れていた事を思い出し、分かってらっしゃる方がほとんどとは思いますが、あえて文章にしてみました。


主に書くものは恋愛がほとんどなのですが、書いてみるとこれもまた楽しかったです。

ただいつも勢いで書いてしまうため、見辛くされた方もいらっしゃると思います。


どうか皆さまが健やかに毎日を送ることができますように。

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