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銃身と刃の間で、チリチリと火花が散る。対峙するのは、ヨツヤの狂的な赤い瞳と、クチが割けんばかりに吊り上がった楽しそうな笑み。
時速七十キロで走行するエクスプレスの屋根の上は、決して戦闘に適した場所では無いはずなのだが、その不安定を感じさせずに、二人の武器は空中で交差する。
片やハンドガン、片や刀。どちらが強いか、有利か、などと野暮な話である。問題は、どちらが先に相手の心臓を抉るか、なのだ。
ツキシマが、銃身とトリガーの隙間で刀を受け止め、上方に一気に押し上げる。片手のハンドガンの銃口を、目の前のヨツヤに向け引き金を引くも、ヨツヤは片手でツキシマの腕を掴み、照準をずらす。銃弾はヨツヤの頬を僅かに掠って虚空へと消えていく。
ヨツヤが、刀を引いて、捕らわれていた銃身から抜け、ツキシマの左肩めがけて切っ先を突きだす。それに反応したツキシマは、刀を捕えていたハンドガンの銃口を、トリガーに指をかけてくるりと反転させ刃に向けて引き金を引いた。
じぃん、と痺れる様な振動が、ヨツヤの腕に伝わり、弾丸を受けた刀は弾かれるようにして軌道を変え、刃はツキシマの腕の下を通る。
にたりと笑ったヨツヤに悪寒を感じ、ツキシマは素早くバックステップで彼との間合いを空けた。
「ははっ…ははは! イイ判断だ。もう少し遅かったら腕一本切り落としちまってたところだ」
色褪せたベージュのマントをはためかせながら、ヨツヤが楽しげに笑う。
攻防、一ミリとて隙がない。それは、互いに感じている事だった。
ツキシマの二丁拳銃は、左右からその凶悪な銃口で以てヨツヤを襲い、一見銃器に比べれば隙のありそうな刀も、その切っ先から得に至るまでを自在に操ることによって僅かな隙も殺している。
ヨツヤは、楽しくて楽しくて仕方がなかった。
「まぁでも、オマエにとっちゃぁ腕の一本や二本問題ないんだろうが」
刀を肩で担いで、ヨツヤが笑う。
冗談では無い、とツキシマは思った。
ツキシマだって、痛いのだ。そりゃぁ、常人よりは遥かに痛みに耐性はあるが、痛いものは痛い。頭をふっ飛ばされれば意識も飛ぶし、首を跳ねられたら、ショックのあまり気を失う。腕なんか切り落とされた日には、哀しさのあまり泣き出したくもなるだろう。
だから、本当はツキシマは、戦う事が好きではない。戦わざる終えない時は戦うし、怒った時は相手をぶっ殺してやったりもするが、基本的に、必要以上の戦闘行為はしたくないのだ。
だから、カグラに仕事に誘われても気乗りしない。彼女は不満そうであるが、嫌なものは嫌なのだ。
ツキシマの、ムッとした沈黙を緊張と捉えたヨツヤは、にたりと凶悪に笑って刀を振るう。
「首を切り落とされても死なねえってのは、スゴイな。原理に興味はねぇが、俺にとっちゃ実に都合が良い」
ツキシマは、無言でヨツヤを睨む。彼は語る様に続けた。
「人間の闘争本能ってヤツは、古来から伝わる最も人間らしい本能だ。人間の、基本的な欲求とはまた別の次元に存在する、人間の基盤となる本能。人間は、戦いを好む。傷つけ、傷つき、失い奪い! 永遠にそれを好む! 人間の歴史は戦いの歴史だ。飽きもせずに血みどろになって戦い、その果てに何を得たのか問う暇もなく戦う! そしてそれを繰り返す。ははは…馬鹿じゃねぇか。愚かだ、どうしようもねえ馬鹿野郎だよ人間は。だが素直だ! 愚直なんだ。ふっ…くくく…その愚直さは、生き物らしいと思わないか? 飽くことなく本能の赴くまま野生動物の様に殺し合う。生物としてあるべき形だ! 食事や睡眠やセックスに娯楽を感じ、今の人間は本能を忘れてやがる! だから、思い出すべきなのさ。闘争という生き物としての本能を…殺し合いという形でなァ!」
ヨツヤは、額を片手で押さえながらゲラゲラと笑った。
狂的だ、とツキシマは感じる。彼の言動も、考えも、ツキシマには理解しがたい。殺し合う事が、そんなにも愉快なことであるわけがない。
だが、そんな反論意見を持ったところで、彼がヨツヤの意見に、言葉で以て異を唱える事は出来ない。だから、態度で示すのだ。
それは間違っているのだと。理解できない、馬鹿げた理屈であると。
ツキシマは、腕を上げて両手のハンドガンをヨツヤに向ける。シューシューと呼吸音が漏れる。いかついフォルムの防毒マスクは、ただ、ただ無言のまま、ヨツヤに対する敵意を露わにした。
それを見て、ヨツヤは一際愉快そうに口角を吊り上げ、目を大きく見開いて刀を握る。
「そうさ! はは! わかってるじゃねえか! 殺し合いだ、殺し合い! 食うなよ?寝るなよ?犯すなよ!? オマエは死ぬまで俺と殺し合え! ツキシマ!」
ヨツヤが叫んで屋根を蹴る。慣性など全く無視した動きだ。ズラリ、と長い刃を振って、ヨツヤは一気にツキシマとの間合いを詰める。
ツキシマは考えた。ヨツヤ自身に弾丸を撃ち込んでやるには、フラフラと上下左右に動いて、ツキシマが放った弾丸をいともたやすく弾き返してくれるあの刀が邪魔だ。
一瞬でも、あの刀の自由を奪えればいい。銃身で受け止めるだけでは、まだまだ刀に自由がある。
幸いにも、ヨツヤは反射的に防御態勢を取ろうとしない限り、刀は両手で構えてくる。一瞬、彼の意識に隙を作り、尚且つ刀の動きを止められたらいいのだが。
気乗りはしないが、方法は一つしかない。
ツキシマは、向かってくるヨツヤに数回トリガーを引いた。当然のように、ヨツヤは刀を振ってそれを弾く。ニタリと笑ったヨツヤが、大きく踏み込んで刀の切っ先をツキシマの腹部めがけて突き出した。
「!」
カーキのコートを破り、皮膚を引き裂いて、凶悪な刃がツキシマの脇腹に深々と突き刺さる。冷たい血液が逆流し、防毒マスクの下から真っ赤な鮮血が垂れた。ヨツヤの視界も赤く染まる。それを見て彼は、悪魔の様な笑みを浮かべ、更に深々と刃を突き刺した。刃がツキシマの背中に貫通し、血を浴びてキラリと光る。
「…あ?」
腹から、大量の血を吹き上げたツキシマがよろけるも、彼は、片手に握っていたハンドガンを投げ捨て、腹に突き刺さった刃を握りしめた。
ヨツヤが、刀を引き抜こうと柄に力を入れるが、ツキシマに刃を握られた刀身はビクともしない。刀が振るえねば、殺し合いができないではないか。
ヨツヤが怪訝そうに顔をしかめた瞬間、彼の視界に黒い影が落ちた。
ハッとして顔を上げる。視線の先には吸い込まれそうな絶望を映した銃口が、ヨツヤの額に添えられていた。
「…!」
発砲音が轟く。硝煙が舞った。
ガクン、とヨツヤの頭が後ろに逸れ、ツキシマの視界が赤く染まった。ヨツヤが頭に付けていたゴーグルが、プラスチックの破片を飛ばして壊れて落ちる。
今度こそ、頭をふっ飛ばしたか、とツキシマは緊張すると同時に、あらぬ不安に襲われた。
可笑しい。この大口径マグナムにこの距離で頭を撃たれれば、人間の頭など木っ端みじんに砕け散る。しかし、血は上がったが、ヨツヤの頭が吹き飛んだ様子は全くない。
ツキシマの嫌な予感は、次の瞬間に現実の物となった。
「…!?」
ツキシマが掴んでいた刀身が、ぐりっと九十度回転する。肉を抉る痛みが脇腹を中心に広がり、次の瞬間には、刃が横一線に薙いで、血と一緒に肉片を飛び散らせた。内臓ごと切り裂かれる不快感がツキシマを襲った。
「っー…。うわ…死ぬかと思ったなぁ、今のは」
ツキシマの腹を引き裂いた刀を握り、額をおさえながら数歩後ろによろめいたヨツヤが言った。
ツキシマも、ぽっかりと無様に穴が開いた腹をおさえてヨツヤを睨む。
今度は、弾詰まりなど起きなかった。確かに、発砲音が響いて、弾丸はヨツヤの頭部めがけて発射された。しかし、予想外の出来事が起こったのだ。
ツキシマが、トリガーを引いた瞬間、いや、それでは間に合わない。その前に、ヨツヤは野性的反射能力で頭を後ろにそらし、弾丸を回避したのである。
ヨツヤの額ギリギリの軌道を走った弾丸は、彼のゴーグルを破壊し、額の皮膚を裂いて頭蓋骨を僅かに掠るにとどまった。
「ふ、はは…まさか身を切ってまで俺の動きを止めに来るとはさあ…フツーの人間じゃやらねえよ…。そういうとこ含めて最高だなオマエは」
流れ出す血を手のひらで塞き止めながら、ヨツヤは言った。
ドクドクと、額が脈打つのを感じる。傷のせいか、それとも全身を駆け巡る戦闘本能が興奮しているせいか。ヨツヤは、それほどまでに楽しくて楽しくて仕方がなかった。
頭から流れ出る血で顔を真っ赤に染めたヨツヤは、常軌を逸した凶悪な光を放つ瞳でツキシマを見据える。それを見て、ツキシマは沈黙せざるを得なかった。
あの距離での射撃を、避けたなんてありえないだろう。いや、実際ありえたのだが、それは、人間としてどうなのだ、とツキシマは自分の事は棚に上げて思う。
それに加え、あれだけ出血しても怯むどころか愉快そうに笑うその精神。常人ではあり得ない、と、改めてツキシマは呆れた。
そして彼は、ようやく理解するのだ。自分は、とんだ化け物に捕まってしまった、と。
「そこまでよ」
冷たい血が溢れだす腹をおさえるツキシマの耳に、風に乗って高い声が届いた。
ハッとして視線を彷徨わせ、声の主を探す。ヨツヤを挟んで、反対側の車両の先から、カグラが上半身を屋根の上に出してライフルを構えているのが見えた。
「…あぁ?」
ヨツヤが、不機嫌そうに顔を歪めて視線だけを後ろに向ける。自分に銃口を向けているカグラの姿を見て、小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「邪魔すんじゃねぇよ。今俺は、最高の気分なんだ。その汚ねぇ子宮から全身真っ二つにされたくなかったら、ライフルをお守り代わりに抱えて震えてな、お姉さん」
ニタリと笑みを浮かべて瞳を光らせるヨツヤに、カグラは一瞬眉をひそめると、すぐに妖艶に口角を吊り上げて余裕の笑みを見せた。
「やってみなさいよ。でも、アンタが動いた瞬間、私の魔弾がアンタの未使用の股間を吹っ飛ばしてやるわ」
「…言うねぇこのアバズレ」
カグラとヨツヤの眼光が、空中で交錯し火花を散らす。時が止まったかのような緊張が、二人の間に走った。
その緊張に呑まれて、ツキシマもその場に硬直せざるを得ない。
息を呑む様な沈黙が続く。
カグラは、何故自分がこの様な行動に出たのかわからない。さっきも見たように、あんな狂戦士などはツキシマに任せて、自分は金の臭いのする方向だけを見ていればいいのだ。だが、身体は勝手に動き、ライフルの銃口をヨツヤに向けていた。
化け物の相手は化け物にさせれば良いが、こっち側の化け物が劣性ならば、少しくらい手を貸してやらない事もない。
何せアレは、カグラの『メトロ一大富豪計画』には無くてはならない存在なのだから。
動くのは、どちらが先か。沈黙が続き、乾いた風が廃れた街中に停まる列車に吹きつける。
しかし、その沈黙を破ったのは、カグラでも、ヨツヤでも、ましてやツキシマでもなかった。
「お前達ー! そこを動くなぁー! 速やかに武器を捨て、投降しなさーい!」
拡声器によって増幅された、気だるげで間延びした声が荒野に響き渡った。
「…へ?」
カグラは、思わず間の抜けた声を上げてスコープから目を離し、辺りを見渡す。
顔を上げると、いつの間にか既に列車は停車していて、その車両を左右から挟みこむように、拳銃を携えた警察官たちが待機しており、彼らが乗って来たのだろうライトバンの物陰に身を隠しながら、三人に向かってその銃口を向けていた。
エクスプレスの運転手が警察に通報し、列車を緊急停車させたらしい。緊張のあまり、全く気が付かなかったのだ。
「いいかぁー、動いたらー撃つからなあー! まったく…こっちは非番なのに無理矢理出勤させられて、堪ったもんじゃないよまったくー。おじさんはなぁー早く帰って娘の誕生日を祝ってやらにゃいかんのだよー。だからさっさと投降しなさーい」
メガホンを持った、小太りの中年警官が、面倒くさそうに声を上げて言う。
中年のやる気の無い、また間延びした間抜けな声に、戦意という牙をすっかり抜かれた三人は、互いに視線を交じらせた後、呆れたように肩を竦め、ほぼ同時に武器を落として両手を上げた。
*
「いや、だからさー、言ってんじゃん。俺は賞金稼ぎで、ハイジャック犯なんかじゃねぇって」
エストメトロの駅員室で、ヨツヤがテーブルの上に足を投げ出して気だるげに言った。
「じゃあ何でお前達二人は血まみれだったんだ。賞金稼ぎ同士で戦う理由なんてないだろう」
「それは何と言うか、じゃれあい程度のお遊びですよ」
「じゃれ合いで腹に穴が開くか!」
列車が停車している時に、メガホンで三人に呼び掛けていた、小太りの中堅の警察官が怒鳴り、ヨツヤの隣のパイプ椅子に腰かけていたツキシマが、信じられないモノを見る様な目でヨツヤを見た。
ツキシマにとって、アレは冗談でもお遊びなどと言える代物では無かった。
エクスプレスハイジャックの通報を受けて駆け付けたメトロの警察官たちに、ハイジャック犯と間違われて連行された三人は、こうしてエストステーション内の狭い駅員室に押し込められ、事情聴取を受けている。
直接、警察署へ連れて行かない杜撰さが、メトロらしい。
それから、実行犯のシティ・アベンジャーの下っ端たちは、残らず捕まったようであった。
因みに、ツキシマの腹に空いた穴は、ステーションに着く前に塞がった。警官は、酷く驚いていたが、メトロならばそう言う事もある、と納得した。
「わかったわかった、私が説明するから。単純明快、わかりやすいたった一つの真実。悪いのは、全ッ部コイツ。コイツが主犯で、私達はそれを止めようとした。オーケイ?」
「勝手な事言ってんじゃねえぞババア」
「何ですってこの脳筋馬鹿。歳なんか大して変わらないでしょうが!」
「知らねえのか、二十過ぎると女は劣化するしかねえんだよ」
「黙んなさい、戦うことしか頭に無い単細胞が人様に偉そうなクチ効いてんじゃないわよ!」
「んだとこの垂れ乳女! そう言うテメェの頭には脂肪しか詰まってねぇんじゃねえの!」
「何よ、警官に囲まれたら一気に戦意喪失しちゃって。あんだけ吠えたと思ったらとんだチキンじゃない!」
「うるせえ! 俺はこれでも常識の心得はあるんだよ!」
「……!」
ガタン、とパイプ椅子を倒して睨みあいの口論を始めたカグラとヨツヤをなだめようと、ツキシマがわたわたと両手で宙をかくも、二人の目に彼は映っていないようであった。
机の上で、保護されたコルトが尻尾を振りながら怒鳴り合う二人を見つめている。
それを見て、警官は疲れたように溜息をついた。
「…あー、困ったな。報告書をまとめないといかんのに…。君、君は何か言う事は無いのか?」
警官が、顔を上げてツキシマに問う。
終に取っ組み合いの喧嘩になって、周りに居た警官たちに取り押さえられたカグラ達を横目に、ツキシマは話題を振られて顔を警官の方に向けた。
「…… ……!」
「うーん、わからん!」
「……!」
必死でジェスチャーを駆使して何かを伝えようとするツキシマだが、警官は頭上にクエスチョンマークを浮かべながら首を傾げた。
ものの数秒でコミュニケーションを切られたツキシマは、ショックを受けたように肩を落として俯いた。
「とにかくなあ、争ってたのがコンビの賞金稼ぎなら良いんだよ。コンビなら」
「何でよ。コンビなら殺し合って良いって言う決まりでもあるの?」
ヨツヤと睨みあっていたカグラが、警官の言葉に怪訝そうに顔をしかめて視線を向けた。
「ああ。賞金稼ぎはならず者だからな。コンビも組んで問題を起こす事もあるだろう。賞金の山分けとか。そう言うのは、その二人の問題だから警察は極力関わらなくて良いって暗黙のルールがあるんだ」
「そんなんでいいの? 警察…」
「このメトロじゃあ、それくらい適当でないとやっていけねぇ」
税率が低いから、給料も少なくてね、と警官は荒んだ笑みを浮かべた。
そういえば、カグラもメトロでの警察官の給料は、駆け出しの商人よりも薄いと聞く。カグラだったら絶対に就きたくない職業ナンバーワンであるが、同時に世の中の歪みを垣間見た気分になった。
「なんだ。じゃあ簡単な事じゃねえか」
ヨツヤは、警官の言葉を聞いてにんまりと笑うと、自分を取り押さえていた警官の腕をするりと抜けて、ガックリと肩を落としているツキシマの首に腕を回し、絞める様に後ろから引き寄せた。
「俺ら、コンビだから問題ない」
「…!」
「…はぁ!?」
眉を寄せて、顔をしかめるカグラと、ショックと拒絶反応の余り僅かに身体を震わせるツキシマを尻目に、警官はトンッと軽快に机を叩いた。
「オーケイ! じゃあ解散!」
「えっ!? ちょっ!」
「チーフ、帰りに呑みに行きますか!」
「すまねえなぁ、これから家に帰って娘の誕生パーティーが…」
「待て待て待てぇ!」
カグラの抗議の声も虚しく、いそいそと解散準備を進める警官達。彼らも、さっさと適当な理由をつけて帰りたかったようである。
「よーし、そんじゃあ俺らも帰るかー」
「…!」
ゾロゾロと駅員室を出ていく警官たちに紛れて、ヨツヤが半ば引きずる形でツキシマの首を腕で締めながら駅員室の出口に向かった。ツキシマもバタバタと暴れてカグラに助けを求めるが、不安定な姿勢からは無駄な抵抗である。
「ちょ、ちょっと! 待ちなさい! それは私の相棒だって…待て! 話を聞け!」
ヨツヤの後を追うように、カグラが慌てて駅員室を飛び出した。
がらんどうになった室内で、ぽつんと取り残されたコルトが、机の上に乗って、ぴゃあ、と一鳴きした。
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