―終―
何かを忘れている気がする。
そんな気はするけど、何を忘れているのか分からない。
私は少し首を傾げながらも目の前の扉が開くのを待っていた。
教会の鐘が鳴り、二人を祝福する。
扉が開き、赤いじゅうたんの敷かれた道が目の前に現れる。その脇にはたくさんの人々。祝福の声を受ける。
おめでとう、おめでとう、おめでとう・・・。
鐘の鳴り響く音と人々の歓声を聞きながら、遥かな青い空を見上げる。
紙吹雪の舞う中に、何かを見た気がする。
「どうしたの?」
「ううん、何でもない」
何だろう、胸の奥がほんの少しだけちりちりと痛む。
ねぇ、私幸せだよね、私達幸せだよね?
隣に立つ人を見上げて、ふとした疑問を思う。
彼は優しく微笑んだ。
彼とは平凡に出会って、平凡に恋をして、平凡に結婚した。
ねぇ、私幸せよ、幸せよ・・・ね?
答えを返してくれるはずのない虚空に向かって問う。
空に答えなどない。
きっと気のせいね。
私は彼と腕を組み、ライスシャワーを浴びながら二人の道を歩き出した。
大丈夫、私は幸せ、幸せ・・・。ねぇ・・・。
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