71 アコセイサクショ
セフィアの考えた転送箱を実際に作り、ステラに見せていた。
「うーん、すごい! 直ぐにでも売りに出したいんだけれど、一つ問題があって売れないわ」
「えっ? 何が問題なんだ? 直ぐにでも改良するぞ」
「いえ、商品の問題じゃないの。この転送箱を個人同士で国家間で使われたら、どうなる?」
「そりゃ、離れれば、離れるほど便利だろ?」
「あっ!」
セフィアが先に勘づいた。
「密輸になります」
「そう! 残念ながら、そうなっちゃうのよ」
「そういう事か!」
「そう、だから一般向けには売れないの。でも考えがあるわ! 商業ギルドを使うの、ギルドに管理させて配送業をさせるのよ」
「なるほど! 各国のギルド間でやり取りするんだな? それなら、密輸の心配もなくなるし、各村の村長の家にでも、この箱を置いておけばギルドから郵便物が届くってことか」
「そう! 話が早いわね! じゃ、早速ギルドに話に行きましょう!」
ギルドではガーファが直接応対した。
「なるほど! ギルド間のお金を動かすことも、これなら安心して出来ますね。この話に乗らせてもらいましょう!」
「でね、前の世界でこういう郵便物をやり取りするのに、切手ってシールがあったんだ。前もってお金を支払ってこの切手を買っておいて、送るときに、その郵便物に宛名を書いて、その切手を貼るんだ。そしたら回収するポストに投函しておくだけで、勝手に相手に届くってシステムだ」
「そりゃぁ、いい! 窓口に人を置く必要がなくなりますね」
「じゃ、この案件はギルドで買い取りという形で進めさせていただきます。一箱セットで金貨一枚でいかがでしょうか?」
「そんなに貰えるのか?世界中の村の数だけとなると、凄い金額になるぞ?」
「これまで、その為に人が届けに行っていたことを思えば、安いものですよ。しかもこれの登場によって流通が増え、ギルドにはその分の規定納金が入ってきますし、誤魔化し様がありません」
「なるほど! ギルドはもっと儲かるってことか。ウインウインだな!」
「ウインウイン! ってなんですか?」
セフィアが聞く。
「どっちも勝者ってことだよ」
「ウインウインですか! いい言葉ですね。では、各国の商業ギルドに通達しますので、認められれば転送箱の数量分の作成をお願いします」
「では!」
裕介とガーファは握手して、ギルドを後にする。
「ステラにも、アイデア料を払わないとな」
「そんな小銭は、いらないわよ! でも、決めた! やっぱり私は、あなた達の旅についていくわ! 危なっかしくて見ていられないもの」
「えぇぇぇ~!! ついてこられるんですか?!」
セフィアが絶賛大ブーイングで、ステラを見る。
「大丈夫よ、あなた達の邪魔はしないわよ! 私にも仕事があるし、傍にいて変なもの作った時に対処したいだけよ」
「でも!」
「安心して、こんな私のおっぱいを見て鼻の下を伸ばすような男には、興味はないの! でも、彼とあなたの作るものには、興味深々。確実に商売になるわ」
「あなた! ステラさんのおっぱいに鼻の下を伸ばしたんですか?」
「いや初めて会った時の話だ。男ばかりで免疫が無いところに、こんな魔王級のおっぱい見せられたら、そりゃ不可抗力というものだ」
「…!!」
セフィアは悔しそうに、ステラのおっぱいを睨む。
「大丈夫よ! 私のおっぱいは商売道具だから。私は、ビジネスとプライベートはきっちり分ける人間なの」
「どういう理屈だよ! 大丈夫! 俺はセフィアのおっぱいで十分満足してるから」
「本当に?」
セフィアの顔が明るくなる。
「見るだけのおっぱいよりも、触れるおっぱい。って言うだろ?」
「言わないわよ!」
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アコセイサクショに寄りもせずに、勝手に話をどんどん進めている。そのまま三人でやっとアコセイサクショに足を運んだ。びっくりするほど大きな工場だ。四つくらい工場がある。
「あれぇぇ~! カワハラ大尉!」
最初に裕介に気づいたのは、マカロン君だ。裕介が最初に魔力を流した人間はマカロン君だったのだが、男同士では、特に何も起こらないようだ。
「なんだって? カワハラ大尉だって? 本当だ! お久しぶりです!」
「カワハラ大尉が来たらしいぞ!!」
ドヤドヤドヤっと、人が裕介の周りに集まってきた。見ると、ほとんどミステイクの工事の時にリンゲやパストゥールで手伝ってくれた連中だ。二百人くらいいる。
「なんだ、みんなアコセイサクショで働いてたのか?!」
「そうですよ! あのトンネル掘りや橋作りが楽しかったって、みんな退役した後、うちにやってきたんですよ」
そう話したのは、亜湖さんの一番弟子、テクニ君だ。今は、アコセイサクショの代表を務めている。レア君、チーズ君、ショコラ君も前に出てきた。
「どうされてたんですか?」
「田舎で、魚を釣って畑を耕して、嫁さんをもらった」
「えっ?! どちらです?」
テクニ君が、セフィアとステラを交互に見る。
「セフィアだよ。紹介しよう、彼女は俺の嫁、セフィア・エスパールいや、今はもうセフィア・カワハラだ」
初めてセフィア・カワハラと裕介の口から紹介されて、セフィアは花が咲いたように笑顔になる。
「よろしくお願いします」
「まっ、カワハラギケンの共同研究者でもある。ステラは嫁さんじゃないぞ。相変わらずの怒りんぼ顧問ってとこかな?」
「誰が、怒りんぼよ!」
「ほら、もう怒った」
一同から、笑いがこぼれる。
「今日はな、アコセイサクショで研究と開発、製作製造販売をお願いしたい、新素材と新動力、その商品を持ってきた。絶対、儲かるぞ、商業ギルドと、パルージャ商会のお墨付きだ」
「わぁぁぁ~!!」
二百人の歓声が上がる。
「それはありがたい話しです。まだまだ人を増やして大きくする必要がありそうですね」
「そりゃ、社員が三万人くらいいるんじゃないか?」
「軍隊じゃないんですから… 脅かさないでください」
「いや、そのうちそうなるぞ」
「本気ですか?」
「じゃぁ、事務所の方で見せてください」
「うん、その前に、ここで一つ新製品のデモンストレーションを見せよう」
裕介は、アイテムボックスから、バイクを取り出した。
「えっ! アイテムボックスですか?」
「うん、貰ったんだ」
「これは、うちで作ったサイクルですね。でもペダルがない」
「そう、魔力で走るんだ」
「えっ?!」
裕介は、魔動モーターに魔力を通した。結構なスピードでバイクが走り始める。
工場の端まで行くと、Uターンをして戻ってきた。
「どうだい?」
「すっ、すごい!」
二百人がシーンと静かになった。




