70 結婚祝い
すみません。毎朝6時の投稿、忘れました。
コンコン!
数日後の夜、裕介とセフィアの新居のドアをノックする者達がいた。
「はーい!」
「裕介ぇ〜! 戻って来てたのなら、連絡しろよな!」
ドヤドヤ〜っと玄関から雪崩れ混んで来たのは、大統領首席補佐官の柿沼、副大統領の池宮、国務長官のエクレア、国防長官のヒルトン、そして副大統領補佐官のスピカだった。
「なに、VIPが団体でやって来てるんすか? うちは、ホワイトハウスじゃないっすよ!」
「なに言ってんだ、忙しい中を、お祝いを持って来てやったんだぞ! 外務長官の娘と結婚したそうじゃねぇか!」
「いやぁ~! セフィア、政府首脳の皆さんがおこしだ」
「ご無沙汰してます」
「祝賀パーティ以来だね。結婚おめでとう!」
セフィアが挨拶をすると、池宮さんが代表でお祝いを述べてくれる。
「ありがとうございます。今、とっても幸せです!!」
「おめでとう!!」
「裕介… あの、面倒くさい女の何処が良かったんだ?」
柿沼がこっそり裕介だけに聞こえるように日本語で聞く。
「いや、可愛いんすよぉ~! 美人だし。頭はいいし。俺には勿体ないくらいですよ」
「だめだ、こいつ骨抜きにされてる…」
と柿沼は情けなさそうな顔をした。
「まぁ、いいか、蓼食う虫も好き好きって言うしな」
「私は蓼じゃありません!」
それが聞こえたセフィアが、柿沼に食ってかかる。
「あややや~!! セフィアさん、日本語が分かるのか? そりゃ、すまなかった。物の例えだ。口が滑った許してくれ」
「いいですよ、カキヌマさんは、初めて会った時から相性が悪いですから」
セフィアは冷ややかな目で柿沼を睨む。
「まぁまぁ、許してやってくれ、柿沼君も悪気があるわけじゃないんだよ」
「うん、柿沼さんは、脳筋だから」
池宮のフォローに被せて裕介もフォローを入れる。
「脳筋って何ですか?」
「脳みそが筋肉で出来てる人のことだ」
「ぷっ! うぷぷぷ~!!」
セフィアに受けている。
「脳筋で大統領首席補佐官が務まるかぁ~!」
「それにしても、驚いたな。いつの間に日本語を?」
「この半年ほどの間です」
「あんな慣用句まで?」
「セフィアは、一瞬見た映像を全て記憶出来る、一種の天才なんですよ」
「へぇ〜! 天才って本当にいるんだな?」
「まぁ、幸せそうで良かった!」
「はい、ありがとうございます」
「じゃぁ、飲もう。祝杯を上げよう!」
と、柿沼とエクレアは持参した酒とつまみをテーブルに置いた。
「じゃぁ、乾杯!」
「これ、お祝いです」
ヒルトンとスピカが大きな花束をセフィアに渡す。
「ありがとうございます。なんて綺麗な花!」
「最近フレーブから輸入出来るようになった、切り花です。朽ち止めの魔法が施してあるので、一月くらいはこのままですよ」
ベイグルでは、春先の花は珍しい。
「アリサも誘ったんだが、あいつ今、革命孤児達の面倒を見ててな、手が離せないらしい。おめでとうって伝えてくれって」
「そうですか、そんな事を… 偉いな」
「詳しくは、エクレアさんに聞いてくれ。なっ、エクレアさん!」
「いや、自分は国務長官としてですね!」
「はいはい」
ちなみにアメリカ合衆国の国務長官は、日本の外務大臣に当たるが、ベイグルの場合は、セフィアの父、外務長官がその役割に当たり、エクレアの国務長官は内政、特に行政を統括している。
アリサとエクレアが、柿沼の言うような仲になりつつあるのなら、と裕介は心のどこかでホッとした。
「それで、どうですか国事は?」
「まぁ、いろいろあるけどな、こうして揃ってお前の家に来れるくらいの余裕はある。ぼちぼちやってるよ。海野さんは忙しいけどな。まぁ、仕事の話はやめとこう!」
「それで、どうですか新婚生活は?」
そのままの言葉で、裕介にスピカが返えした。
「楽しいぞ~! なっ! セフィア!」
「はい!」
「ご馳走さま~!」
「そうだ、池宮さんがな、犯罪に手を染めるそうだ」
「えっ?! 池宮さん、何をするんですか? ダメですよ!」
「いや、その…」
「スピカさんと結婚するんですよ」
と口ごもる池宮に変ってヒルトンが言う。
「えっ?! えぇぇ~! 確か二十二歳違いですよね?!」
「いや、お恥ずかしい…」
「厳冬期作戦の時からスピカさんは、池宮さんがお気に入りだったものな」
「知ってたんですか?」
「もちろん! そりゃ、おめでとうございます!」
恥ずかしそうに笑う池宮とスピカ。
「じゃ、もう一度、乾杯!」
「それで、これからカワハラさんは、どうするんですか?」
エクレアが裕介に聞く。みんなが裕介を見る。
「うん、一年ここに滞在した後、セフィアと二人で世界を旅して釣りをしようと思ってるんだ」
「あぁ、亜湖とそんな話しをしていたもんな」
「アコさん…」
ヒルトンがしんみりした顔になる。
「俺がいるじゃねぇか!」
柿沼が、ヒルトンの肩を抱く。
「こいつはよ、俺のアタックになかなか首を縦に振らねーんだ。俺はいい男だって言ってやってくれよ!」
「そりゃ、脳筋は嫌ですよね?」
「いえ、嫌ってわけじゃ…」
『おっ! 柿沼さん脈ありじゃないですか?』と裕介は思った。
セフィアが裕介に耳打ちする。
「ヒルトンさんのアレは、たぶん革命の時に、アコさんの闇魔法に包まれたからだと思いますよ。闇魔法には魔力を流されたのと似たような効果がありますから」
「そうなの?」
だとしたら、亜湖さんの闇魔法ってモテモテになる魔法だったんじゃないか、生きてるうちに教えてあげたかった。と裕介は思うのだった。
「きっと、柿沼さんが回復魔法をかけてあげれば治ります」
「マジ?」
「マジ…です」
「柿沼さん、柿沼さん」
裕介は、今、セフィアに聞いた話を柿沼にこっそり教えた。
「本当か?! じゃ、今度チャンスがあればやってみる。いや、お前、いい嫁さんもらったじゃねえか!」
脳筋の大統領首席補佐官のセフィア評価は、急転、高評価に変わった。
まだ花の咲かないベイグルで、恋の花は沢山の蕾を付けていたのだった。




