67 商業ギルド
裕介とセフィアは、ゲルトに到着し、先ずは商業ギルドを訪れた。
「ちゃんと作ったものを登録しておかないと、あとでステラにまた叱られるからな」
「何を登録するんですか?」
「うーん、とりあえず全部だな。魔動モーター、バイク、サファイア樹脂、樹脂ボトル、ファンヒーター、サファイアライン、ベイトリールってとこかな?」
「ルアーはいいのですか?」
「ルアーは、流石にいいだろう。売り出す予定もないしな」
セフィアの案内で商業ギルドに二人は入った。
「でかいな。実は俺は来るのは初めてなんだよ」
「こんにちは!」
受付のカウンターの女性に話しかける。
「こんにちは、ギルド登録ですか?」
「いえ、新しく開発した商品の登録をしようと思って」
初顔だと思ったのに、あれ? 誰だっただろう? と言うような顔を受付嬢はする。
「では、屋号をおっしゃってください」
「はい、カワハラギケンです」
ガタ!
受付嬢が驚いたように立ち上がる。ロビーにいたギルド会員たちもざわつき始める。
「失礼ですが、証明証はお持ちですか?」
「そうか、確かステラがくれたギルドカードがあったな。はい!」
「少々、お待ちくださいますか、上の者を呼んでまいります」
受付嬢は、裕介の顔とカードを何度も見比べ、立ち上がって、奥に行ってしまったが、時間をほとんど開けずに、その上の人と一緒に戻ってきた。
「これは、カワハラギケン様でしたか。お初にお目にかかります。このギルドのマスターをしておりますガーファと申します。以降、お見知りおきを。ささ、奥へどうぞ」
なぜかビップ待遇である、裕介とセフィアは顔を見合わせて首を傾げた。
「どなたかと思えば、黒髪の美魔女、セフィア・エスパール様ではございませんか!」
さすがは、商売人の元締め、立て板に水のセールストークだ、美魔女ときたか。と裕介が思ってセフィアを見ると、セフィアは苦笑いしている。
「はい、このユースケ・カワハラの妻になりました」
「おぉ~! それは存じませんでした。おめでとうございます!」
「それで、今日はどういったご用件で?」
ガーファは揉み手をしながら聞く。
「はい、新しい素材と材料、動力を開発しました。それらの商品も含めて新案登録と、現在の私の預け金はどのくらいになっているかと」
「承知いたしました。今、バルージャ商会のステラ様を呼びにやっておりますので、新案の方はステラ様がいらしゃってからと言うことで、預かり金の方ですが」
裕介はなんで、ステラを呼びに行くんだろう? と思ったが、帳簿を確認したガーファが言った金額を聞いて、どうでも良くなった。
「現在、税金とギルドの規定納金を差し除いて、金貨、三千二百八十五枚でございます」
「三千二百八十枚?! ロイヤリティだけで?」
「ロイヤリティって何ですか?」
セフィアも驚きながら聞く。
「その商標や新案の使用料のことだよ」
「そんなになるのですか?!」
「はい、カワハラギケン様は、五年間一度もお引き出しになっておられません。現在、絹、鏡、サイクル、刺繍を登録されておいでですが、アコセイサクショとパルージャ商会によって、商品として今や、ベイグル共和国の輸出品のメインとなっております」
「輸出してんのかぁ~」
「そうです、特にセフィア様のお父上、エスパール伯がフレーブとの国交正常化に成功なされて、この一年は生産が追い付いておらず、完全に売り手市場になっております」
「すごいことになってたんだな。これで、サファイヤ樹脂と魔道モーターを登録したらどうなっちゃうんだろうな」
セフィアと裕介は、顔を見合わせる。
「お金持ちだったのですね」
「俺も、今、初めて知った」
「ユースケ! なんでまた勝手に来たの!」
「なんで、怒るんだよ! 登録せずに商品を作ったら怒るし、登録に来ても怒られるのかよ!」
ステラが大きなおっぱいを揺らせながらやって来た。
「私が、怒るようなものばかり作るからよ!」
「じゃぁ、今度はセフィアも一緒に怒られるしかないな」
「えぇぇ~! 私もですか?!」
「今度は何を作ったの?」
「今回のは、凄いぞ!」
「なに?!」
「じゃじゃん! 魔動モーターだ!」
「何をするものなの?」
「例えばこれだ、ステラ、魔力を流してみてくれ」
裕介はファンヒーターを取り出す。
「あら、暖かいわ」
「そうだろ? 夏の暑いときは、ヒーターを取れば風だけが来る」
「暑い国に売れそうね」
「そして、まだアコセイサクショで正規開発してもらおうと思っているんだが、バイクだ。魔力で走るサイクルだぞ」
「あなた、そんなもの作ったら、馬がいらなくなるじゃない!」
「うん、魔力の継続時間のテストが必要なんだけどな。これらは、全部セフィアが考えた魔動モーターで動くんだ!」
「す、すごいわね」
「認めたな!」
「うん、認めた…」
「じゃ、魔動モーターはセフィアの名前で登録してくれ」
「更に! サファイヤ樹脂だ。熱で溶かせば、自由な形の商品が作れる」
「……!」
「それで作ったボトルだ」
「軽くて丈夫そうね」
「そう! しかもキャップ付きで逆さにしてもこぼれない。液体を入れて持ち運びも簡単だ」
「もう、開いた口がふさがらないわ」
「最後に、釣り用のアルミニウム製のベイトリールと、サファイヤ樹脂製の釣り糸だ」
「アルミニウムって?」
「それはだな、セフィアが…」
裕介は、セフィアに手で口を塞がれた。
「それは、重要企業秘密ですから、お教えできません!」
とセフィアが答える。
「じゃ、しょうがないじゃない。大体、釣り具って、釣りをする人がいないんだから、これは売れないわ」
「わからないぞ!」
「じゃ、釣り具はカワハラギケンで売りなさい! 後は、私とアコセイサクショで作って売るわ」
流石は商売人、売れないと思うモノには手を出さない。
このやり取りを、ガーファとギルド職員は目を白黒させながら、黙ってみていた。
次々と出てくる、新素材、新動力の商品がまたベイグルの輸出品目に加わることは間違いないと、新たな歴史の誕生を目の当たりにしたのであった。




