50 ゴーレム
「海野さんはどうします?」
「僕は市民の蜂起の方を手伝うよ。市民にはあまり犠牲を出したくないからね。そうだな、ゴーレムを召喚しようかな?」
「えっ! ゴーレム? ゴーレムって言いました? あの巨大ロボみたいな、ゴーレムですよね?」
「そうだよ」
「そんなのを召喚出来るんですか?」
「やろうと思えばドラゴンも出来るよ。一応は賢者だからね」
全員が初耳で、驚くしかない。
「でも、ドラゴンを召喚したら見境いがないでしょ? その点、ゴーレムならば、命令を聞くからね」
「いや、それすら知らないし、実際に見たこともなんですけど。なんで今まで隠してたんですか?!」
「ごめんね。隠していたつもりも無かったんだけど、作戦以外に僕の出番が無かったからね」
「一人でも行くとか、ルルドが一日で落とせるとか言ってたのは、そういう力があったからですか?」
「ごめん、ごめん。でもフレーブに召喚術を見せちゃうと、本気で緊張が走ってしまって、停戦も出来なくなっちゃうでしょ?」
俺たちは海野さんが、ビッグマウスではなくて、本当に一人でも成し遂げてしまう、ズル、いやチート能力を持った賢者だったのだと、再認識し、ゴーレムが味方に付くのなら、五千の兵が増えたよりも心強いと思った。
「カワハラ大尉、あなたは土の勇者ね。魔力は大丈夫?」
会議が終わって解散した後、セフィア嬢に俺は呼び止められた。
「大丈夫でしょ、パストゥール攻めの時、一日で三十ペクトの川を作りましたが、枯渇の心配はありませんでした」
「ふーん。じゃぁ、貴方は蜂起の日、私と一緒に行動しなさい」
セフィア嬢は、ペロリと舌でその薄い唇を舐めそう言った。
「いえ、カワハラ大尉はミステイクとして…」
アリサがそう言いかけると、セフィア嬢は面倒くさそうにアリサの言葉を遮って聞く?
「あなた達、そういう関係なの?」
「そういう関係って?! 違います! そんなんじゃありません!」
「じゃぁ、いいじゃない。私が彼の能力を引き出してアゲル。あなたには出来ないでしょ?」
「でも…!」
アリサは、そう言いかけて悔しそうに口ごもった。
「じゃぁ、決定ね」
そう言うと、セフィア嬢は俺に流し目をくれて、部屋を出ていった。
「何なの?! あの女!」
アリサは、セフィア嬢が出て行った扉の方に向かってプンスカ怒っている。
「裕介? 痴話げんかか?」
「確かに、あの女、面倒臭ぇよな。裕介ロックオンされちまったか?」
亜湖さんと、柿沼さんがニヤニヤ笑いながら、アリサの怒りに油を注ぐ。
「そんなんじゃ、ないですよ! 別に部屋に呼ばれたわけでもないですから!」
「カワハラ大佐! 部屋に呼ばれてたらどうしたんですか?!」
「いや、一応は行ったかな…?」
「なんですか! それは! 黒髪の淫魔女だって教えたでしょ!」
「なんだ? その黒髪の淫魔女って?」
「あっ!!」
アリサは怒りに任せて墓穴を掘ってしまった。俺に内緒だって言ってたくせに。
「なぁ、なぁ、アリサ、教えろよ。その黒髪の淫魔女ってなんだ?」
アリサは、亜湖さんと、柿沼さんに連れられて部屋から出て行った。
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五月三十日の未明、夜明け一時間前が蜂起の時間なので、まだ四時間ある。
「じゃぁ、行ってくる」
柿沼さん、亜湖さんとファミリー、エクレア少尉とヒルトン中尉は王宮内に忍び込むために出発していった。
海野さん、マッケル将軍とその取り巻きとアリサは、レジスタンスの隠れ家へ、俺は池宮さんと一緒に、残りの兵士を連れてセフィア嬢との落合場所に向かう。
「遅かったわね」
黒一色のタイトなレザーに包まれた、黒髪の淫魔女は月の光に照らされてスレンダーなその身体がより淫靡に光って見えた。さて、俺の能力をどう引き出してくれるのか?
「私が魔法陣を目標に投射するから、あなたはそれに魔力を注いで」
「魔力を注げばいいのか?」
「そう、ここだけの秘密よ。私には魔力がないの。人に話したら、殺すわよ!」
うわぁ〜 面倒臭ぁ〜! 自分から一緒に行動すると言っておいて、魔力が無い魔女だと?! この非常時に、何を言ってるんだ、コイツは?
「こちら海野だ。今から決行する。僕たちは東の正門から王宮に突撃する」
海野さんからの合図だ。通信機を通してレジスタンスの喚起の声が響いている。
「柿沼だ、了解! こちらも行動を開始する」
「池宮です。こちらは西の壁の前にいます。今から動きます」
王宮は、二階建ての壁を兼ねた回廊で囲まれた一つの街と言ってよく、東西に長く、東に正門、南門、北門があり、中央あたりに王の居城だった建物がある。ホフマンの寝所や、秘密警察の本部はそこにあるという話しだ。俺たちのいる西面には門はなく、その代わり兵の宿舎兼詰め所と真ん中に高い塔が立っている。
「私を抱いて魔力を注いで!」
突然セフィア嬢が意を決した様に言う。
「いいのか?」
「早く!」
そう急かされ俺は、セフィア嬢の腰のあたりを右手で抱いて魔力を彼女に注いだ。彼女の身体がビクンと波打ち、杖から空中に魔法陣が現れる。
「魔法陣に魔力を注いで!」
注ぐもなにも、急速に魔法陣が魔力を吸い込む感覚だ。
ドーーーン!!!
塔の上半分が爆発で消し飛んだ!
「すっげぇ~!」
「次!」
ドガガガ!
今度は、宿舎の三階左部分
「次!」
まるでピンポイント爆撃だ。寝込みを爆撃された兵たちは、たまったものではないだろう。
「安心して、今、この宿舎にいる兵は全部が敵よ!」




