33 魔法
「カワハラ中佐、ちょっと見てもらえませんか?」
ミステイク兵士のマカロン君が、珍しく俺に見て欲しいものがあるという。
「どうした?」
「俺、カワハラ中佐の土魔法を見て自分も出来ないか試してみたんです」
「ほぉ~、出来たのか?」
「亜鉛は出来たのです。鉄や石は無理でした」
そう言いながら、マカロン君が亜鉛に魔力を注いだ。ハンダで溶かしたように、亜鉛が溶けて液体状になった。
因みに俺の魔法でもそうだが、溶けた亜鉛は温度は常温のままだ。但し時間が経過して魔力が拡散すると通常の固体に状態に戻る。奇妙な話しだが、早く固体化させたい場合には、また魔力を注ぐ。この魔力が拡散すると、また液体に戻るのかというとそうはならない。通常温度で固体のもの、砂や粉など元々固体だったものを固めて塊にしたものも、その塊を維持し続ける。
水が氷になると体積が膨張することは良く知られている。だから氷は比重が水より軽くなり水に浮かぶのだ。けれども、これは氷のみが特殊なのであって、普通の金属は固体化すると体積が減る。だから金型から、ポンポンと取り外すことが出来る。膨張したら金型が割れてしまう。
元々、液体の物は土魔法では、固体化出来ない。元々固体の物質のみが、液状化や気化や昇華させることが出来て、液体に変化させたものだけが、再度個体化出来る。土魔法は無機物に限られているようで、木などの有機物は変化させることは出来ない。
「ほんとだ、亜鉛は出来たんだな。個体化も出来る?」
「はい、出来ます」
マカロン君は、溶かした亜鉛を固体に戻した。
「銅や鉄はどうだった?」
「銀は出来たのですが、銅や鉄はだめでした」
「そうか、何の違いだろうな?」
「それが良く分からなくて、中佐との魔力の強さの違いだとは思うのですが」
「うーん…、土はどうだった?」
「土魔法なのに、土や石は全然だめでした」
「となると、対象物の溶ける温度の違いかな?」
俺は、高校のテストの問題を思い出した。『金属を溶融温度が高い順に並べよ』ってな問題だったと思う。千度くらいの溶融温度が魔法の限界の境目だとすると、マカロン君の出来る出来ないの境目だということになる。
魔力の強い弱いは、例えば池宮さんの風魔法で、そよ風が送れるか強風が作れるかの違い、魔力の量はそれをどれだけの範囲、どれだけの時間継続できるかってところで、きっと土魔法も同じなんだろう。
「質問なんだけど、この世界の魔力の強さって人によって違うものなの?」
「ミステイクの勇者みたいなのは、別格で人間離れしてますけど、普通の人通しでもある程度のバラツキはありますよ」
「人間離れって…、酷いこと言うな。背の高い人と低い人がいるみたいな感じかな?」
「すみません。そうです。親は子供がお腹にいる時から、魔力が強くなるようにと願って、お腹に魔力を注ぐんです。産まれた後も、子供に魔力を注ぎます。だから、魔力の少ない人や弱い人は、親の愛情に恵まれ無かったか、親と違う属性に産まれた気の毒な人だと言われるんです」
「なるほどな。魔力を注がれると魔力が強くなるって事なのかな?」
「魔力量は、成長期を過ぎるとほとんど増えないと思いますが、強さは瞬発力と同じで鍛えれば強くなるって言われてます。属性が違うと無理ですけどね」
「じゃ、俺がマカロン君に魔力を注ぐと強くなるって事?」
「やってみますか?」
「いいのか?」
「もちろんです。同じ土属性ですから、俺からお願いしたいくらいです」
「じゃ、やるぞ!」
俺はマカロン君に魔力の通り道を、太くするようなイメージで魔力を注いだ。どうだ?
「アレ?治癒魔法ですか?なんだか身体が軽くなった気がします」
「銅や鉄が溶かせたら強くなってるよ」
マカロン君は鉄に魔力を注いだ。鉄は見る見る液体に変った。
「おぉ! 魔力が強くなったみたいです! ありがとうございます!」
マカロン君は大喜びで笑った。
「こんなにも、はっきりと結果が出るものなんだな」
「そうですね。俺も驚きました。それに量も多くなってる気がします。まるで魔力を分けて頂いたような感じです」
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何日か後、マカロン君とレア、チーズ伍長が三人で面白いものを見せてくれた。でも心なしかマカロン君の元気がない。
「亜湖中佐に教わって作ったんです」
三人がテーブルにいくつかの道具を置いた。
「おい! これは、六角ボルトとナットじゃないか!」
「そうです。これが金型と、ネジを切る道具です」
木箱の中の数種類の金型、タップとダイス、平ダイスまである。
亜湖さんの指導で、三人で工夫をしながら作ったらしい。すごいな。
「すごく楽しかったのですが、金型が出来て量産しようとしたところで、マカロンが魔力切れを起こしてしまって、作れなくなったので、カワハラ中佐にお願い出来ないかと」
「そうか、マカロン君。魔力切れするまで頑張ったのか」
「いえ、中佐に魔力を注いでもらってから、楽しくて乱発しちゃいました」
「魔力切れを起こすとどうなるんだ?」
「…その…、男としてダメになると言うか、しばらく不能になるんです」
「えぇ~! マカロン君EDになっちゃったの?!」
「しっ! 中佐、声が大きいですよ!」
食堂には、他のメンバーやアリサもいる。みんな、ピクッと聞き耳を立てたようだ。
「すまなかった。あんまりびっくりしたもんで。そうか魔力切れを起こすとそんなことになるのか…」
「い、一か月ほどですけどね。女性なら妊娠しなくなります」
「魔力って、性に直結しているものだったのかよ」
「そうです。だからたぶん、勇者はモテますよ」
「それは、いいこと聞いたな。でも、それじゃマカロン君があまりにも可哀そうだ」
俺は、マカロン君に魔力を注いでやった。
「おぉぉ~! 中佐! 復活しました。魔力を感じます!」
マカロン君の顔がパァ~っと明るくなった。
「じゃ、後で作ろう。 マカロン君はくれぐれも、ヤリすぎないようにね」




