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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第1章 ミステイク
30/325

30 テクニ少尉

「おはようございます!カワハラ中佐」

「おはよう」

 って、誰だったっけ? 何処かで見たことある人だけど?

 若い、爽やかな青年に朝から食堂で挨拶をされ、俺は誰だったか悩んでいる。亜湖さんがやって来た。


「おう! 来たのか?」

「亜湖中佐、いえ師匠! おはようございます!」

「師匠?! なんの?」

「わはは、裕介、覚えてないんだろう? リンゲで俺と一緒に望遠鏡を作ったテクニ少尉だ」

「あっ! あぁ~! 失礼しました」

「いえ、とんでもない。あの時はカワハラ中佐は、とてもお忙しかったですから、覚えていらっしゃらなくて、当然です」

「すまん」


「こっちに来て、俺の側で技術を学ぶって聞かなくてな。ちゃんと許可をもらって来たんだろうな?」

「もちろんです」

「おれは、ヒルトン中尉の方が良かったんだがな」

「あっ、ヒルトン中尉がみなさんによろしくって言われてました」

「みなさんかーい!」


「じゃ、今日からお前は俺の小間使いだ」

「技術を教えてください!」

「使われながら覚えろ!」

「了解です!」

 爽やか、テクニ君は亜湖さんの弟子になった。違う技術を覚えなければいいが…


 それに触発されたのか、エクレア少尉の下の二人の兵士が、エクレア少尉に申し出る。

「自分らも、亜湖中佐の下で技術を学びたいのであります!」

「ん~? お前らもか?」

 エクレア少尉が海野さんを気遣う。

「いいんじゃないですか? 戦争が終わったら、若い技術者は沢山いたほうがいいでしょう」

「いいだろう! 海野大佐に感謝しろよ。その代わり、戦闘時はしっかり働け!」

「はい!」

 確か、レア伍長とチーズ伍長だったと思う。こうして、亜湖ファミリーが誕生した。


「じゃ、お前らに機械の三大要素、ネジ、ギア、ベアリングの基本を教える。暇な時はいろんなサイズのものを、製図しとけ。上手く描けたら、カワハラ中佐に実際に作ってもらう」

「えっ? 俺が作るの?」

「この三つがあれば、リールが作れるぞ」

 亜湖さんが、こっそり言う。

「なら、オーケー!」


「じゃ、ホフマン連隊長が戻られたそうなので、僕は参謀会議に行ってきます。」

 海野さんはそう言って出かけて行った。連隊長、帰ってきたのか~!


--------------------------


「くっそ! パストゥールが落ちたせいで、ボロクソに言われたわ! 今年中に落とせと言っておる!」

 参謀会議の席で、ザイス・ホフマン連隊長が恨めしそうに海野を見ながら言う。

「また、第一大隊からだが、作戦はどうなっている?」

「はっ!ルルドの守りが固くなっており、兵が増員された模様であります。この為、これと言った妙策が見つからず、昨年の高地を奪回する方法を未だ検討中であります」

「脳なしめ! 他の大隊から、妙案はないか?!」

 他の大隊長、参謀たちはうなだれる。

「えーい! もうよいわ! 来週の参謀会議までに、各隊、夜を徹して作戦を立案してまいれ! 海野大佐のみを残して、解散!」


 参謀達が立ち去り、会議室には、連隊長と海野だけが残った。

「第二師団のキスリングと、親衛隊のブロッケンは何もせぬのに、国王の威を借りて偉そうにいいおって! お前らミステイクをよこせと言うてきおったわ!」

「それは、困りましたね。せっかく兵舎まで頂いて、みんな気を良くしているというのに」

 連隊長の言葉に海野が困った顔で返す。

「ここだけの相談なのだ。他言は無用だぞ。ミステイクでルルドを落とすことは出来るか?」

 睨みを利かした目で、連隊長が問う。そしてベイグルの方向に目をやる。


「もしも、ルルドを落とせるなら、落としたのち停戦して王都を攻めると?」

 少し、間を開けてため息をつくように、海野が問う。

「ふん!」

 連隊長は明確な回答をさけ、目と口元の動きで答えを言った。

「マッケルとエスパール辺境伯からそのようなことを聞いたことがある」

「どうせやるのなら、主になって、という事ですね?」

「どうだ? 悪いようにはせん」


「いいでしょう、私たちも王宮には少なからず恨みがあります。ルルドを落としましょう。但し…」

「但し…、なんだ?」

「春まで待ってください。今から落として、フレーブと勝手に休戦し、厳冬期を迎えれば、王宮に感づかれ準備の期間を与えてしまいます」

「うむ」

「厳冬期の間にルルドに気づかれずに工事を行い、春の渇水期に第一大隊が拘っている高地から、一気に全軍で攻めましょう」


「全軍で? どうやって川を渡る?」

「橋をかけます」

「出来るのか?」

「我々、ミステイクなら」

「責任は背負ってもらうぞ?」

「問題ありません」

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