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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第1章 ミステイク
28/325

28 昇進

 フレーブは死者百二十、重傷者三百。対するベーグルは死者十六、重傷者五十。圧倒的な勝利だった。

 ミステイクは、進路の確保、先陣を褒賞され二階級特進した。

 すなわち、海野大佐、池宮、柿沼、亜湖、川原中佐、グレッグ少佐、エクレア少尉となった。

 今回、俺が貰った褒賞金は、金貨三十枚だった。


「ご苦労だった。お前たちのお蔭で、元帥の命令の遂行どころかリンゲの悲願の達成まで、一気に事が運んだ」

 連隊長室隣の貴賓室で俺たちエクレア少佐以上のミステイクは、連隊長に会食に招待された。

「いいえ、リンゲ兵士の協力的な働きと、勇猛さによるものです」

「いや、勇者の魔法とは凄いものだ、あのトンネルを半月で掘ってしまうとは、今でも信じられん」

「今回は、特にカワハラ中佐には頑張ってもらいましたからねぇ」

「そうだな、ユースケ無しでは出来なかった作戦だったな」

 と柿沼さん、池宮さん、亜湖さんまで、うんうんと頷いている。


「このまま、ここに居てはもらえぬ、ものかのう~」

「それは、難しいでしょう。私たちは一応は第一連隊、連隊長直属ですから」

「ホフマンの奴もいい拾い物をしたのう。羨ましいわ」

「マッケル連隊長には、良くして頂きましたし、指名いただければいつでも参上いたします」

「ふわふわふわっ!」

「お前たちがいれば、ベーグルでも落とせそうじゃのう」

「これは、またキツイ御冗談を…」

「ふわふわふわっ!」


 うーん、なんだ、この悪代官と越後屋みたいな会話は?

 まぁ、マッケル連隊長は、悪い人でも無さそうだし、元々、海野さんが味方に引き入れるって言ってた人だからな。


「ワシは、王都のキスリングとブロッケンが気に入らなくてのう」

 あっ! 言っちゃった。やっぱり嫌いなんだ。

「前線にも出ず、王都で元帥の側にいて、好き放題やっておる」

「そのようですね」

「もしワシが奴らと事を構えるような事があれば、是非ともこちらに加勢願いたい」

「私たちはご存じの通り、召喚者です。特にこの国の貴族とのシガラミもありません。この国が良くなるのであれば尽力いたします」

「ふむ、その時は頼んだぞ」


 ヒルトン中尉他、その場にいた取り巻き幹部たちが揃って立ち上がり、頭を下げた。

 なるほどな。リンゲの総意ってわけか。海野さんの向こうから接触してくるって、言った通りになった。海野さんの人心操作なのかも知れないが、いきなり腹話しをされた以外は、不自然な感じを受けなかったので、まぁ、本心なんだろう。

 アリサと、エクレア少尉は流石に重い話に息が詰まりそうな顔をしていた。


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「はぁ~、ご馳走だったのに、食べた気がしませんでした」

 アリサがため息を漏らしながら、そう言う。

「ハハハ、重い話しだったからな。海野さんだけでなく、ミステイク全員に話して単独でも引き抜きたいんだろうな」

「私は、勇者じゃありませんから、関係ないですけどね」

「ハハハ、勇者も辛いんだぞ」


「望遠鏡も出来たし、道も作ったし、そろそろ帰るか」

 柿沼さんが言う。

「えぇ~、また、あのホフマン連隊長の下ですかぁ~?」

「仕方ないだろ、俺たちはヤツの部下なんだから」

「へーい」


 俺たちは、リンゲを離れ帰路についた。そうだ、タルモ村だ。絹糸はどうなっただろう?

 タルモ村では、キヌの部隊と呼ばれ大歓迎だった。

 絹糸の染色にも成功し、布を織り始めたらしい。


「綺麗~!」

 アリサが目を輝かせて、草色に折られた光沢のあるシルクを手に取った。

「でしょう。ほんとあの魔物の繭がこんな綺麗な布になるとは思いもしませんでした。お礼に、これを一反、お持ち帰りください」

 と村長。

「グレッグ少佐がもらっておきなさい」

 海野さんが、そう言う。

「良いのですか?」

「他の男たちには、女性にプレゼントするくらいしか用がないからね。それならキミのドレスでも作った方がいいだろう」

「ありがとうございます」


 ほぉぉぉ~、海野さんも、こんなスケコマシなトークが出来たんだ。パンツだパンツだと騒いでいた、どっかのセクハラ野郎とは大違いだ。

「良かったな、グレッグ少佐」

「はい!」

 今度は柿沼さん。どうしたんだ? 皆さん。

「今回は、グレッグ少佐も命がけで戦ったからねぇ~、いいご褒美だ」

 池宮さんも。


「そうだな、その色はキミに似合うと思うよ」

 あっ、亜湖さ~ん!!!

「パンツの話しじゃないですよね?」

「何を言ってるんだ、カワハラ中佐、ドレスに決まっているだろう!」

「えぇ~! どうなってんだ!」

 俺はアリサにジト目で睨まれることになった。

 俺たちに巻き込まれて、戦闘に参加したアリサになにかしてやりたいとみんな思っていたそうで、いい機会だと思ったらしい。なんだかんだ言って、みんなアリサのことを可愛がっている。


「そうだ、村長! もしブルケンに行く機会があれば、このシルクをパルージャ商会に持ち込んでみてください。俺の発案だと言えば、きっと、適正価格で買い取ってくれます」

「おぉ、それはありがたい。売ろうにも、どこに売れば良いものか、困っていたのですよ」

「この製法をステラに教えて、ベーグルに広めるように言って下さい。タルモ村の様に助かる村も出てくるハズです」

「分かりました。パルージャ商会のステラ様ですね」


「グレッグ少佐に嫌われたんで、ステラちゃんに乗り換えかぁ~? ユースケ?」

 亜湖さんがニヤつく。

「誰ですか? ステラちゃんって?」

 とアリサ。

「秘密だよ!」

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