〜異世界冒険記2〜クロを眺めてみた
水汲みを終えたワタルは、マリと別れて縁側に来たのだが、どうやらそこには先客が居たようで………
マリと水汲みも終わり、少し暇になったので、僕は少し村の中を散歩してみようと思った。
「誰か一緒に散歩についてくる?」
と、家の中で聞いてみたが、
「私、これからカケルと外で遊んでくる!」
と言ってマリは家を飛び出していき、
「私も外の行商人の所で、少し買い物をしてきますね」
と言って、シャルも出て行ってしまった。
家に残っているのは、縁側で日向ぼっこをしているクロだけとなっていた。
「お〜い、クロ〜。」
と、少し呼びかけてみたが返事が無かった。
(これは寝ちゃってるな〜。)
と、僕は思いつつ、クロに近づいた。
縁側に着き、クロの寝顔をジッと見てみた。
ここに来たばかりは、毛並みは荒れて、身体も今よりもだいぶ細かったが、食事などの体調管理をしっかりとするようになってからは(ほとんどがシャルのおかげではあるけど…)毛並みも整ってきた初めの頃は、村のおばちゃん達は、
「可愛くなったね〜。」
と、クロの容姿を褒めていた。
この話は、前にも少ししたとは思うが、その時よりもさらにクロは可愛くなっていた。
普通の男なら、クロを彼女にしたいと思うはずだと思う。
しかし僕には、
「彼女にしたい感情は出てこないんだよな〜。」
と、心に思った感情が声になって出ていた。
僕の中には、確かにクロを『可愛い』という感情はある。
ただし、それはクロを『家族として見て、可愛い』という気持ちだと思う。
本当の家族は、今も日本で暮らしている両親と兄だけである。
でも、それとは別にマリやシャル、トモコさん、それにクロを、
【家族】
の定義で捉えている、僕が居る。
近い例えなら、ホームステイ先の家の人達を、
【家族】と捉えるのに近いと思う。(実際に行ったことがないので正しいかはわからないが…)
そんな事を頭の中で思っていたので、
「だから、クロの気持ちは分からないけど、僕にはクロを彼女にするって気持ちはないんだよ。」
と、言い訳をするかの様に1人で呟いていた。
「まぁ、私にもワタルを彼氏にしようって気持ちはないから、別に良いんだけどね〜。」
そんな声が隣から聞こえてきたので、横を向いてみると、眠そうな顔をしたクロがこっちを見上げていた。
「寝てたんじゃないの?」
僕がそう尋ねると、
「寝てたし、この後また寝る予定なんだけどね。
ただ、寝る前に聞いておきたい事が出来たから少し話を出来るタイミングを待ってたんだ〜。」
と言って、最後の方にあくびをしていた。
僕には予想は出来ていたが、
「聞きたいことって何?」
と、クロに聞いてみた。
クロは、
「私に対しての恋愛感情を持たない事は、独り言で分かったんだ。
だけど、マリやシャルに対してはどうなの?」
と、予想通りの質問をしてきた。
(確かに、僕が恋愛感情を持っていないと口に出したのはクロに対してだけだからな…。
もしかしたら、マリやシャルには持っているかも、と気にするのは当然かもね。)
僕は、そう思ったのでクロに改めて言葉にして伝えた。
「僕には、マリやシャルに対して家族として大切に思う気持ちはたくさん持ってる。もちろん、トモコさんやクロに対してもたくさん持ってるよ。
でもそれは、恋愛感情では無いことは、はっきりと分かってるんだ。」
クロは、まっすぐこちらを見て、真剣に話を聞いてくれているので、僕もクロの目をまっすぐに見て、話を続けた。
「ただ誤解しないで欲しいのは、僕の中では恋愛感情=家族愛じゃなくて、家族愛の方が強いんだ。」
と続けた所で、
「つまり?」
と、何となく察したらしいクロがニヤニヤしながら聞いてきたので、
「つまり、僕に『家族』として認められた女の子は、恋愛で作る彼女以上の存在になるという事なんだ!」
と、僕は真顔で言った。
クロは、
「今の所、その『家族』認定されている若い女の子は?」
と条件を絞って聞いてきたので、
「マリとシャルとクロかな。」
と、はっきりと答えた。
わざわざ、若い女性と条件を付けたのは、僕がトモコさんを入れてしまうのを防ぐ、という理由だと思う。(まぁ、確かに僕には熟女好きの趣味はないからね…)
そうして質問が終わったようで、
「ワタルって彼女が欲しくないんだね、変わってるよ。」
と、クロが言ってきたので、
「まぁ、彼女を作って結婚するぞ!って気持ちも無いからね〜。」
と、最近の日本の若者を彷彿とさせる様な言葉を呟きながら、クロの横に座った。
「だから、こうして異性の隣に普通に座ることだって出来るよ。」
と、伝えてみると、
「まぁ、いつも私達って4人揃って、横になって寝てるから、今更ではあるんだけどね…」
と、クロが本当に今更のことを言ってきたので、
「今日から別々にして寝る?」
と、冗談混じりに言ってみると、
「私はそれでも良いけど、絶対にマリさんが嫌って駄々をこねるから良いかな…」
と、少しマリが暴れたイメージを想像したのか、表情が少し暗くなっていた。
(まぁ、簡単に想像できるよね…
マリが拗ねたら、暴れまわって家がめちゃくちゃになるのは時間の問題だろうし…)
と、僕にも簡単に想像が出来たので、
「マリを敵に回すのだけはやめようね?」
と、僕はクロに言い、
「そうですね、絶対にやめましょう!」
と、誓いをするかの様に、軽く拳を握りながらクロは答えた。
そうして、僕たちは喋り疲れたのでそのまま縁側で座って日向ぼっこをしていた。
(やっぱり、ここでする日向ぼっこは最高だな〜。
少しぼんやりしているだけでもう眠くなってきたよ。)
と、僕はウトウトしながら隣を見ると、
「……………」
と、寝息も立てずにクロが寝ていた。
(確かに、恋愛感情は持ってないとは言ったけど、その後でも男の横でこんなにも安心して寝られるってのは、かなり凄いな…)
と、クロに感心したところで、
「僕もそろそろ限界だな…」
と、自分の眠気を我慢することが出来なくなり、僕はクロの横に寝転がった。
(日本なら色々と問題になりそうだけど、まぁこっちなら大丈夫だろう…)
と、今の状況を客観的に見るとそうなるだろうなぁと、そこまで考えた所で限界を向かえたので、
「おやすみ、クロ。」
寝ているクロにそう伝え、僕達はシャルが帰ってくるまで仲良く縁側で眠った。
続く
今回は、クロメインの話を作ってみました。昨日は、マリを中心として書いてみたので今回は順番的にはシャルにしようと思ったのですが、書いているときに、
(あ〜、日向ぼっこでもしたいな〜。)
という気持ちになったところから、日向ぼっこが似合いそうなキャラと言うことでクロを採用してみました。明日はシャルについて書いてみようと思っていますのでよろしくですm(_ _)m
今日は投稿が遅くなりましたが、読んでいただけると嬉しいです!
それでは、また次回もお会いしましょう〜!それではm(_ _)m




