〜異世界冒険記〜奴隷を解放してみた2
聖都へ向かったワタル達。様々な思いを胸に奴隷たちを開放していくべく奮闘していった!
「よし、じゃあ聖都に向かおうか!」
と村の外で号令をかけた。
「張り切っていこう〜!」
「そうですね、頑張りましょう。」
「そうだね、頑張っていこう!」
とマリ、シャル、そしてクロの張り切る声も聞こえてきた。
ちなみに、クロは温泉に入ったままの格好で着てもらっている。
正直、奴隷の時に着ていた服の方が王に説明はしやすかったが、
「それは可愛そうだよ…」
「そうですね…せっかく奴隷から開放されたんですから…」
とマリとシャルが反対したのでやめた。
ちなみに、僕も反対だったが
「別に私は構わないよ。」
とクロが言ったが多数決で決め、温泉上がりの普段着の格好にしてもらった。
「私は別に気にしないのに…」
とクロは少し文句を言っていたが、ここは譲れなかった。
もし、あの格好をしたクロを見たら自分が暴走しそうだったからだ。
「とりあえず、この場所からテレポートで聖都に向かうことにするよ。」
と3人に伝えると、
「テレポートって何?」
「私も知らない…」
とマリとクロは知らなかったが、シャルは知っているらしく、
「テレポートは、一瞬で移動できる便利な魔法何ですが、条件が少し大変なはずなのですが…」
とシャルが説明をしながらこちらを見てきた。
なので、
「さっき、マオウが使っているところを見たからね。
イメージは出来ているよ。
ちなみに、マオウにはクロの故郷の〈ネコの村〉へ行ってもらい、騎士達が襲った証拠を探しに行ってもらってる。
クロに報告が遅れて申し訳ない…」
とりあえず僕はクロに謝った。
「いえ、ワタルさんが謝る事ではないですよ。
確かに村を漁られるのは、少し複雑な気持ちですが、騎士たちの悪行を王に報告をすることが出来れば、私の村の人達の無念も少しは晴れるでしょう!
それに、今後私達の様な人を出さないためにもここで終わらせないと!」
と決意を固めた目をしていた。
(僕よりも少し若いのに凄いな…)
と感心してしまった。
ちなみに、年齢を聞いてみたところ19歳らしい。
日本ではまだ成人にもなっていない年齢でこんな考えが出来るのは、聖都での生活がよほど酷かったんだろう、と僕も少し気持ちを引き締めた。
「とりあえずは、テレポートのための魔法陣を作るよ。」
と言って意識を集中させていった。
クロは初めて見るので、
「ワタルさんは何をしているんですか?」
「ワタルも少し集中しているから、後で説明するよ。」
とマリが人差し指を口の前に持ってきて、静かにしていてのポーズをしていた。
(確か、魔法陣の形は…)
とマオウが作った魔法陣の形を思い出しながらイメージを強くしていき、
「これだ!」
と少し声を出しながら作ってみた。
イメージ通りの魔法陣が出てきて、確認したところどうやら聖都に繋がる魔法陣が出来たようだった。
「ワタルさんってもしかして勇者でもあり、そして優秀な魔法使いでもあるんですか?」
とクロの目がキラキラと輝いていた。
(ようやく、年頃らしい反応が見られて良かったよ。)
と思いながらタネ明かしをした。
「実は、この世界に来る前に女神からこの箱を貰っていてね。
この箱は自分のイメージしたものを作り出せるんだ。
この魔法陣もこの箱で作ったんだ。
だから、僕は魔法使いではないんだ。」
とクロに箱を見せながら説明した。
「なるほど〜。」
とマジマジと箱を眺めるクロを微笑ましく見ながら、
「後は、聖都のどこへ繋がる様にするかなんだけど…」
と聖都で生活していたシャルに聞いてみた。
「そうですね、この時間でしたら教会には誰も人は居ないと思いますので教会でよろしいかと。」
と答えてくれたが、
「教会ってどんな外装と内装をしているの?」
と見た事がないからイメージが出来なかった。
「少し試してみてもよろしいでしょうか?」
と言いながら僕の持っている箱を指差し、
「なるほどね。」
と言ってシャルに箱を渡した。
(エルからは、僕達にしか使えないとは聞いたけど、シャルはエルから選ばれた聖女だ。
もしかしたら、使えるかもしれない)
そう思っていると、
「………出来ました!」
とシャルの声が聞こえた。どうやら成功したらしい。
「ありがとう、シャル。」
と箱を返して貰いながら言った。
「いえ、お役に立てて良かったです。」
と僕に箱を返しながらシャルはそう言った。
「これから、聖都に行くんだけど…」
と3人の方を見ながら言った。
「僕は聖都に行ったことがない。それはマリも同じだ。
それにシャルは聖都で暮らしていても、奴隷がいた事を知らなかったらしい…多分場所も知らないだろう…」
「そうですね…私は教会の周りしか行かなかったのであまり聖都の詳しい場所までは分かりませんね…」
とシャルが申し訳なさそうに言った。
僕は、
「だから、クロに地下の牢屋の場所まで案内して欲しいんだ!」
とクロに頼んだ。
いい思い出がない場所に案内するのはあまり気が進まないだろうと思っていたが、
「分かったよ。私がみんなを案内する!」
と力強く言ってくれた。
「本当に大丈夫なの?あまりいい思い出は無いと思うんだけど…」
とクロを心配して僕はそう言ったが、
「私は平気だよ?今から牢屋に向かうのはみんなを助けるためだもん!
だったら、反対にやる気が出てくるよ!」
とクロは言った。
(本当に強い娘だな…)
と改めて感心してしまった。
「それじゃあ、聖都の案内はよろしくね、クロ。」
「分かった!」
そうして話を終えた。
4人で魔法陣の前に立った。
「この魔法陣は1度使ったら自動で消えてしまう…
だから、ここにはすぐには帰ってこられないけど大丈夫?」
と最終確認をした。
「私は大丈夫だよ!」
「私も問題ありません。」
「私も問題ないよ!」
とみんな覚悟は決まったようだ。
「よし、じゃあ出発しよう!」
「「おー!」」
「はい!」
と声を出し、そのまま4人で魔法陣の上に乗り、光に包まれていき、聖都へ向かった。
光が収まり、辺りを見渡してみると長い椅子がたくさんあった。
どうやら人は居ないようで、安心した。
「懐かしいですね。」
とシャルが感傷に浸っていることからどうやら教会に間違いないらしい。
「とりあえず地下の牢屋に急ごうよ!」
とマリが今にも飛び出して行きそうだったが、
「マリ。少し落ち着いてくれ…
クロ、案内をお願い。」
とクロに案内を任せた。
「分かった!ついてきて。」
とクロが走りながら案内を始めようとしたが、
「ちょっと走るのは無理みたい…
足がかなり弱ってるみたい。」
とクロの足を見た。
確かに細くてあまり筋肉もついているようには見えなかった。
なので、
「なら、僕がクロを抱きながら走るよ。
マリはシャルをお願い!」
とクロを抱きながら言った。
「うわぁ!」
とクロは驚いていたが、ちょっと急ぎたかったので!
「ちょっと揺れるかもしれないから先に謝っておくね、ごめんよ。」
とクロに謝った。
ちなみに、お姫様だっこだ。
負ぶると少し胸が当たってしまうのでクロが照れると思い、こちらにした。
マリとシャルは、
「それではお願いしますね。」
「任せといて!」
とマリがシャルを抱いていた。(こちらもお姫様だっこだった。)
「それじゃあ、クロ。案内をお願い!」
と僕は、少し放心気味のクロに言った。
「え?…あ、うん!任せて!」
と正気に戻ってくれたらしく案内を始めてくれた。
クロは内心ドキドキだった。
(何か距離感間違ってない?)
とワタルの態度に困惑していた。
普段、一緒に生活をしているマリとシャルはもう慣れているが、クロはこんな事をされるのは初めてなので、
(もしかして、ワタルって私の運命の王子様なのかな…?)
と少し期待に胸を踊らせていた。
村に帰ってからその期待は打ち砕かれたのだが、それはまたの機会に紹介しようと思う。
そんな感傷に浸っていたので、
「クロ?次ってどこを曲がるの?」
とワタルが質問をしてくる声も聞こえずに、
(あ〜、ワタルのお嫁さんにしてくれないかしら?
あ、でもマリさんとシャルさんってとてもスタイル良くて綺麗だし、私じゃあ勝ち目はないよね…)
と妄想に夢中で声が聞こえていなかった。
「お〜い、クロ?」
と身体を揺すられて、
「………え?何?」
とようやく現実に戻ってきた。
(あ〜、恥ずかしい…)
と思いつつ、
「とりあえず、次に曲がるところを教えてくれないかな?」
とワタルの声が聞こえたので、
「このまま、まっすぐ行けば着くわ!」
とワタルに伝えた。
「了解。」
と言ってさらに走る速度を上げた。
(ワタルって何か鍛えてるのかしら?
こんなに人間で速く走れるかしら?
マリさんは獣人だから分からなくもないけど…)
と少し疑問に思っていた。
実は、ワタルは夜中にこっそりと抜け出し体力づくりのために走っていた。
そして、それがマリにバレてからは毎晩一緒に走っていた。
ちなみに、全力疾走をしても30分ぐらいなら息すら上がらないまでには体力がついている。
(やっぱり勇者って凄いのね!帰ったら聞いてみよう!)
と帰ってからの事を考えていた。
ちなみに、聞かれたワタルは、
「勇者補正じゃあないんだけどな…
良かったらクロも夜に走る?」
と少し落ち込んで、クロを誘って3人で走るようになるのは、また別のお話である。
しばらくまっすぐの道が続き、
「もうすぐ地下の牢屋がある場所に着くわ!」
と私が言ったので、
「そうか、ならラストスパート!」
と言ってまた走る速度を上げた。
(本当にワタルって凄いな…)
と抱かれながら考えていた。
出会って間もない私を助けたり、見ず知らずの人を助けるのはそれなりに勇気のいる行動だろう…
そんな事は普通なら出来ないと、私は思った。
(ワタル達は本当に優しいな…)
と最近触れていなかった、
【人間の優しさ】
を実感していた。
私達は、聖都の人間の騎士達に暗い牢屋に閉じ込められて酷い生活を送っていた。
私は運良く先に助けられて、再び、人間の優しさに触れる事が出来た。
早く仲間のみんなにも、
「人間にも、優しい人は居るんだよ!」
と言うことを伝えたかった。
「みんな、待っててね!」
私はワタルに抱かれながら拳を握り、小さく呟いた。
「ここが牢屋に繋がる階段か…」
と息を整えながら確認した。
マリも到着して、
「ここに捕まっている娘がたくさん居るんだね!」
と、今にも暴れそうな感じだったので
「マリさん、落ち着いてください。
ここで暴れてしまうと人が集まってきて面倒になってしまいますよ?」
「う〜、分かった…」
とシャルがなだめてくれたおかげでなんとか収まった。
「ワタルさん、ここからどうするの?」
とクロが聞いてきたので、
「僕とシャルでここに居る騎士達と話をしてくる。
マリとクロは獣人だから、ここに居る騎士達から襲われるかもしれない…
僕は戦闘の経験はないから守り切る自信がないんだ…
だから、2人はここで待っていて欲しい。」
と2人に待つように言った。
クロは何かを言いたい様な感じだったが、
「分かったよ、ワタル。」
とマリが素直に言うことを聞いたのでクロも、
「分かったわ…」
とおとなしく聞いてくれた。
(本当に良い子だな。マリと仲良くなれそうだな〜。)
と気を抜きそうになったが、
「気を抜かないようにしましょう。」
とシャルの声でもう一度気を引き締め直すことが出来た。
(ありがとう、シャル。)
とお礼を心の中で言いつつ、
「あまり人は来ないだろう、念の為に…」
とマリとクロに透明にした。
ちなみに、僕とシャルからは普通に見えるようにしている。
「2人には透明化の付与をかけたから、周りの人からは見えないようにしたよ。
と言っても、もしかしたらそれを破る人が中に居るかもしれないから2人はここで待ってて。
マリ。もし、襲われたらクロをしっかりと守ってほしい…」
と2人に伝え、
「ワタルとシャルも頑張って!」
「仲間をお願いします!」
とマリとクロの声を聞きながら、
「行こうか、シャル。」
「そうですね。」
と言って階段を降りていった。
階段を降りた先はまるで地獄だった。
灯りもなく、とても暗くて何度も転びそうになった。
(こんなところに長時間いたら、精神がおかしくなるだろう…
早く助けてあげないと!)
と焦る気持ちをどうにか抑えつつ、歩みを進めていった。
しばらくすると、少し明かりが見えてきた。
「どうやらだいぶ牢屋に近くなったみたいだね…」
「そのようですね…」
とシャルも声を潜めながら話した。
別にバレても構わなかったけれど、雰囲気に飲まれて小声になっていた。
「とりあえず騎士達にあったら打ち合わせ通りによろしくね。
まあ打ち合わせ通りに進めるには、まずは話をちゃんと聞いてもらえないと駄目なんだけど…」
と先ほどした打ち合わせを再確認していた。
「そうですね…話を聞いてくれれば良いのですが…」
とシャルと確認していると、
「おい、そこに誰か居るのか?」
と前から人が現れた。
格好から見ると、頭に兜はしていないが体は鎧で覆われていることから騎士であることは予想できた。
シャルに、
「とりあえずは打ち合わせ通りにやろう。」
と目配せをして、
「分かりました。」
と頷いたので、僕は騎士に向かって話をした。
「突然訪ねて申し訳ありません。僕は、ワタル。こちらはシャルロットと申します。
私達は、それぞれ『勇者』、『聖女』として王に仕えております。
その王より、この地下に奴隷を売っている場所があるらしいからやめさせる様に勅命を受けたので、ここに訪ねて来たのですが…。」
と目の前の騎士に伝えた。
もちろん、大嘘である。
僕は王に仕えてはいないし、それこそ会ったことも無い。
それはシャルも同じなのだが、目の前の騎士は騙されてくれたらしく、
「クソ。あの能無しの王にもうバレたのか…
うまく隠せていたと思っていたのだが!」
と自分から自白してくれたので、
(これは、予想以上に簡単に終わりそうだな…)
と思いつつ、打ち合わせ通りにやるためシャルに目配せをした。
それに気付いたシャルが、
「どうして、誇り高いはずの騎士がそんな事をしているのですか!」
と少し怒気を含んだ質問をした。
すると騎士は、
「[誇り高い]だぁ?そんなのを持っているのはは上の奴らだけだ!
俺達みたいな落ちこぼれはそんなもの持ってねぇよ!」
と反論してきたので、
「なら、どうして騎士になったのですか!」
とシャルもさらに質問を続けた。
「そんなの、楽して金を稼ぐためさ!
騎士は他の仕事と違って給料も良いからな!
しかも入る条件が、
[この国を守る覚悟がある人物]だけで、しかも面接すら無かった。
おかげで楽に金を稼げたぜ!」
聞いていて、だんだんとイライラしていたがそれはシャルも同じ様で、
「お金を稼げていたなら、このような奴隷は必要無いではありませんか!」
とほとんど叫ぶようにして聞いた。
「うるせぇな…俺はうまくやっていたが他の奴がバレちまってな、サボっていた奴全員が辞めされられたんだよ。
その時に鎧も返さなきゃいけなくなったんだが、この鎧がかなり頑丈で動きやすくてな!
手放したくなくて、辞めさせられた奴全員、鎧を着て聖都から逃げたんだよ。」
と言った。
続けて、
「流石にこの鎧は目立つし、逃げるときにバレちまってな…
聖都の騎士に追われる生活をしていたんだが、偶然、獣人たちが暮らす村を見つけてな。
俺達も少し追われててイライラが溜まってたからな… 男は子供でも殺してやったぜ!
女は利用価値が有ると思ってな、残しておいたんだ。大人の女は殺したけどな。
そのおかげで今ではこうして奴隷として使えるからな!どうやら正解だったみたいだぜ!」
シャルは聞いていて、もう怒りが振り切れそうになっていた。
僕も流石に聞いていて、我慢できそうになかったが、
「その子達にどんな事をさせているのですか?」
と怒りを抑えながら聞いてみた。
目の前の男 (もう騎士とは思わない)は、どうせ殺すから良いだろうという感じに全てを話した。
「あ?奴隷の扱いなんて分かりきってるだろ?
そんなの人間扱いされないから殴る、蹴るは当たり前。
犯そうとしたやつも居たが、こっちは日雇いでやってるから、妊娠したりかたわになって商品にならないと困るから一線だけは超えさせない範囲で商売してたよ。」
男の言葉を必死の思いで堪えながら聞き、
「食事は?」
と僕が尋ねると、
「そんなものほとんどやらねぇよ!
流石に死なれたら困るから必要最低限はやるけどな、ハッハッハッ!」
もう我慢の限界だった。
「今の話しは全て録音させてもらった!
これでお前達は終わりだ!」
と胸ポケットにしまっていた小型の録音機を取り出した。
もし、マオウが証拠を見つけられなかった保険として、僕も色々と準備をしていた。
その1つがこの録音機だ。
目の前の男は、
「へえー、そいつはまずいね。」
と笑いながら近づいてきたので、
「僕達を殺すつもりかい?」
と聞いてみると、
「そりゃそうだろ!知られたらまずい事を知られちまったんだ。
それにその録音機もマズイ…
ってな訳でお前ら!」
といつの間にか囲まれてしまっていた。
僕はシャルを守るようにしながら、
「何人か鎧を付けて無いけど、余裕の表れかな?」
と挑発してみた。
すると、
「いや〜、この鎧って意外と重くてな。村の女を連れて帰るときに仲間の何人かは鎧を置いてきたんだよ。
ちょうどいいから、お前たちを殺した後に回収に向かうとするか。」
と村に自分たちが居た証拠を残してきたらしい。
(証拠が残っているのは確認できた。
後はちゃんと持って帰れよ、マオウ。)
と今後の事を考えていると、
「何だよ?ずいぶん余裕じゃねぇかよ!
この人数相手に勝てると思ってるのか?」
男が挑発してきた。
まあ、確かにこの人数差なら普通は余裕だろう、周りを見渡してみると、10以上居た。
「そうだな、お前達みたいな騎士の真似事をしている奴らには負けないだろうな。
というか、これだけの人数しか居ないのか?
あんまり人望無いんだな?」
と僕も挑発をしてやると、
「確かにこれで全員だが、問題ないだろう。
お前達、やっちまえ!」
とその男が指示を出すと周りの奴らが一斉に僕達に向けて剣を振り下ろしてきた。
僕とシャルは振り下ろされる剣をジッと眺めていた。
「ハハッ、動くことを出来ないとは雑魚だな!」
と三下の台詞を履いていた。
「ハハハッ。…………おいどうしたお前達。」
と部下の剣が僕達に届いていないのを確認した。
「すいません。何かこれ以上剣が動きません!」
と部下の1人がそんな事を叫んだ。
「そんな訳あるか!俺に貸せ!」
と言ってリーダーの男が剣を僕達に振るってきた。
しかし、
「何だ?本当に動かねぇ…」
とリーダーの男が振るった剣は先ほどと同じように僕達の1mぐらい手前で止まっていた。
これが、2つ目の準備だ。
どうせ話し合いは無理だろうと、僕はみんなに結界をみんなの1m位の位置に張っておいた。
これなら、襲われても問題は無い。
たとえ、奇襲を受けることがあっても奇襲をすると言う事は、少なからずその人は殺意を持っているわけである。
なので、奇襲対策にもなっている。
みんなには来る前に伝えてあるが、クロからは、
「ワタルさんって何か凄いですね!」
と変な評価をされていた。
(何かって何なんだろう…)
と少し思い出しながら、
「お前達の攻撃は僕達には通じない。
おとなしく王の所まで同行してくれないかな?」
と提案するも、
「行くわけないだろ!
俺は捕まるわけにはいかないんだ!
とりあえず奥に居る奴隷たちを回収する!
お前たち、時間を稼いでおけ!」
と部下が目の前に立ちふさがり、リーダーの男は逃げようと反対側に走っていった。
「逃がすわけ無いだろ?シャルはここで待っててくれ。」
といつもの口調と変わり、少し強気の言葉遣いになっていた。
「ワタルさん、気をつけてください。」
とシャルが心配してくれたので、
「行ってくるよ。」
と言い、目の前の部下達に迫った。
僕の怒りメーターは振り切れていた。
なので、
「手加減なんて必要ないよな!」
と言い、箱の力を使って身体強化を自分に付与してみた。
すると、どうやら成功したらしく、普段よりも力が湧いてきた。
(ノリでやってみたけど、意外と出来たな…)
と思いつつ、部下の奴らの全員に腹パンをお見舞いしていった。
どうやら、一撃でみんな立ち上がらなくなってしまった。
(本当なら、首をトンッと格好良くしたいところだけど、あれって実はやるの怖いんだよね…)
と日本で見たテレビ番組を思い出していた。
(実際に出来るらしいけど、そんな力でやると首の骨折れちゃうらしいからね…
だからお腹、というかみぞおちを殴ったんだけどね。)
そうして、部下を倒してリーダーの方を見た。
「来るんじゃねぇ!」
と言いながら、持っていた剣を僕に向かって投げてきた。
もちろん、結界が発動するので剣は結界で止まり、そのまま足元に落ちた。
「ひぃ〜!」
と男は尻もちをつき、そのまま後退りをしていった。
僕は男が投げた剣を拾いながら、近づいていった。
「ワタルさん…」
と後ろでシャルが心配そうな声を出していたが、
「大丈夫だよ、殺しはしないよ。」
と男を見ながらシャルに言った。
「へぇー、殺さないのかい。
なら俺をどうしようってのさ!」
と殺されないと分かると男は強気になった。
(こんなにムカつくけど殺したらコイツラと同類になってしまう…)
そう思いつつ、男に向かって、
「これから王の所に一緒に来てもらう。」
と言うが、
「嫌だね!」
と男が答えたので、
「だと思ったよ!」
と男が見えないような速さで癌面を思いっきり殴った。
「まぁ、僕はこれで勘弁してあげるよ…」
と少しの達成感を得ていた。
後ろからシャルが歩いてくるのが聞こえたので振り返った。
「これでとりあえず1つは終わったよ…
後は、奥に居る奴隷の子達を開放しよう。
シャルは2人を呼んできてくれ。」
とシャルに頼んだ。
「分かりました。」
と言い、来た道を戻っていった。
僕は、
「とりあえず、コイツラをどこかにまとめてしまっておくか…」
と縛るのが面倒だったので、簡易的な檻を作り、全員そこに入れていった。
壊されるのも面倒だったので、檻に壊れないように【不壊】の付与を付けた。
後はみんなが来るのを待つだけだな、と少し休憩をした。
しばらくすると、
「おつかれ〜!」
とマリの元気な声が聞こえたので、
「そんなに身体は疲れなかったんだけどね、
精神的に疲れたよ…」
とマリに少し愚痴を漏らしてしまった。
「この人達、ワタルさんが倒したの?」
と檻の中を見ながらクロが言ったので、
「そうだね、全員弱かったからね。
まぁ、箱のおかげかもしれないけどね…」
と笑いながらクロに返事をした。
僕は足元にあった剣を拾いながらクロの前に差し出した。
「ワタルさん?」
とクロは少し戸惑っていたが、
「クロにはコイツラを殺しても当然の理由がある、だからこの剣を手にして殺そうとしても僕は止めない…
でも良く考えて決めてほしい。」
僕はクロにそう伝えた。
クロは少し悩んでいたが、
「いや、殺さなくても良いや。
とりあえず、みんなを助けましょう?」
と牢屋のある方へ歩いて行った。
「クロは強いな。」
僕はそんな事を呟いていた。
クロの立場になったらどうだろうか、とマリやシャル達が殺されるのを想像していき、
(間違いなく復讐するだろうな…)
と自分に呆れていた。
クロは復讐しなかった。
色んな気持ちがあり、復讐の機会を与えると少し悩んでいた。
しかし、最終的には復讐をしなかった。
年齢は僕より下でも精神的にはもう僕を越してるな、そう思いつつ、
「私達も行こう!」
「そうですね、行きましょう。」
とマリとシャルの声を聞き、
「ああ、行こうか。」
とクロを追って歩いて行った。
牢屋の前に着くとそこにはたくさんの獣人の子が捕まっていた。
「みんな!助けに来たよ!」
と言うクロの声にも反応がなかった。
(まだクロより幼いから、その分精神的なダメージが大きかったのか…)
と牢屋の中の子達を見ながら僕は思った。
捕まっている子は見たところ、8〜10歳前後に見えた。
日本なら小学校に通っている年齢だろう、無理もない…
僕はそう思いつつ、
「早く出してあげよう…」
とクロに伝え、
「うん!」
と言い、鍵を開けていった。
「これで全員かな?」
と、全部の牢屋の鍵を開けて開放していった。
助けた人数は30人を超えていた。
(若い女の子達で30人を超えているなら殺された人数は…)
と、僕は数えようとしてやめた。考えたくなかった。
「これで全員だよ!」
とクロが答えたので、
「ここから早く出よう!」
と、マリが言ったので僕達は地下から脱出した。
「やぁ、おかえり!」
と元気にマオウは挨拶をしてきたので、
「ただいま…」
と少し暗い表情で答えた。
マリ達も表情が暗く、返事をしたのは僕だけだった。
「こっちは全員助けることが出来た。
けど…」
と、少し言葉に詰まってしまった。
地下から出るまでに何度か助けた子に話しかけてみたが、反応が無く身体を少し揺さぶってみると、
「やめて!殴らないで…」
と怖がられてしまった。
(奴隷商人のコイツラも酷いが、この聖都に住んでいる一部の奴も酷い…)
と先ほど捕まえた騎士まがいの奴らと、この街を見ながら思った。
街はキレイだがそこに住む人達の心までキレイとは限らないと僕は学んだ。
(本当にあの村に最初にたどり着けて良かった…
この街に最初に着いていたら、僕は今の生活は無かっただろうな…)
と少し感傷に浸っていたが、
「こっちは無事に村で証拠を見つけてきたよ。」
とマオウが言い、
「この騎士達が着ていた鎧だと思うよ、村の家の中にあったよ。
中の様子は、悲惨だったけど…」
と、マオウも悲しい顔をしていたが、
「僕は、約束を守ったからね?ワタルもちゃんと守ってよ?」
とあえて明るく言ったので、
「分かったよ、ちゃんと村に住む場所を作るよ。」
とマオウに言った。
「よし、なら早いとこ王様に報告して村に帰ろうか!」
と言いながらマオウが呪文を唱え、魔法陣を作った。
「みんな乗って〜。」
と言った。
かなり人数が多くなっていたが、問題ないくらい大きい魔法陣を作ったらしく余裕だった。
「それじゃあ、行こうか。」
と魔法を発動させて、王の城へ向かった。
魔法陣はどうやら王の間に繋がったらしく、
「お前達、いきなり入ってきて何のようだ?」
と国王のような、玉座に座った老人が周りの衛兵を集めようとしたが、
「連絡もせずに突然訪問をすることになり、申し訳ございません。
ですが、緊急事態でしたのでご容赦をお願い致します。」
と僕から国王に説明し、国王も何かあった事を理解してくれたらしく、
「何があったか話してみよ。」
と話を聞いてくれそうだったので、
「実はーー」
とこれまでの流れを説明していった。
話し終えると、
「本当に済まない…」
と国王が頭を下げたので、
「いえ、顔を上げてください。」
と僕は慌ててそう言ったが、
「今回の件は私の管理不足が原因だ、そのせいで罪もないたくさんの命が消えてしまった。
そこのクロという獣人の子よ、申し訳ない。
罪滅ぼしにもならないが、せめて謝らせて欲しい。」
深々と頭を下げたので、クロも驚いていたが、
「今後は、私達の様な人が出ないように騎士の管理等をしっかりとお願いします!」
と国王に伝え、
「ああ、約束をしよう。」
と言ってくれた。
ここからは、後日談になるが、
首謀者の騎士まがいの連中は、クロ達が捕まっていた牢屋に閉じ込められたらしい。
僕としては処刑でも良かったのだが、
「生きて自分のやったことを反省してほしい…」
と、クロが国王に伝えたらしく処刑にはならなかったようだ。
地下で助けた子達は、初めはとても暗い顔をしていて、死んだような顔をしていたが、村のみんなが毎日優しく接してくれたので、次第に明るくなり、瞳にも光が戻っていった。
初めは大きな家を作って、村のみんなで1つの家族のように暮らしていたが、次第にみんな明るくなったので、それぞれの家に引き取る形となった。
ちなみに村のみんなは、
「孫が出来たみたいで嬉しいよ!」
と喜んでいた。
マオウの家に関しては何だか知らない内に勝手に作られていた。
まぁ、住んでも良いと言ったから別に文句は言わなかったけど…
そして、クロはというと、
「ワタルさん、マリさん、起きてください!」
と朝ごはんの時間になったので、クロが起こしに来た。
「今行くよ…」
「ワタル、早く〜!」
と布団から出ながら挨拶をした。
「クロ、おはよう…」
僕はまだ眠たかったのでボーッとした感じて挨拶をした。
「おはようございます、ワタルさん。
マリさんも、おはようございます。」
と言って挨拶を返してくれた。
クロはこの家に住むことになった。
どうやら僕の事が好きになってしまったらしく、
「ワタルさんの事が好きになりました。
どうか同じ家に住まわせてください!」
と言われてしまい、
「良かったね、ワタル!」
「おめでとうございます、ワタルさん。」
「ついに、あんたにも春が来たんだねぇ〜。」
と3人も賛成だった。
僕も別に困ることは特にはなかったので、
「それじゃあ、これからもよろしくね、クロ。」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
と元気よく挨拶をした。
僕達は、5人揃って朝ごはんを食べた。
マリが、
「1人で食べるのは寂しいから、食べるときはみんな揃ってから!」
と言い出してからはみんなが揃うまで食べないルールとなった。
僕としては、先に食べてしまいたかったが他のみんなに止められたので自重した。
そして、朝ごはんを食べ終わると、
「よし、クロ。朝のランニング行くよ〜!」
「はい、行きましょう!」
と言って2人で元気よく外へ出ていこうとした。
これが最近のマリとクロの日課となっていた。
クロは、初めは走ることが出来なくて歩くのもやっとだったが、次第に筋肉もついてきて最近やっと走れるようになった。
まだあまり筋肉は戻っていないので、
「あまり無茶はしないようにね〜!」
と僕は、クロに注意をしておいた。
「大丈夫ですよ、マリさんも居ますし平気ですよ!」
「そうそう、私に任せてよ!」
と2人が言うので、
「それじゃあ、気をつけてね。
行ってらっしゃい!」
「「行ってきま〜す!」」
と2人で元気よく返事をしてランニングに向かった。
「さてと、僕も日課の水汲みをしてこようかな。」
と言って立ち上がり、
「それじゃあ、僕も行ってくるよ。」
とシャルとトモコさんに挨拶をして外に出た。
外に出ると、まだ夏の暑さが続いており、朝でもかなり暑かった。
「これは、そろそろプールが必要かな?
ちょうど小さな子達も居ることだし。」
と村の全体を見渡しながら口にしていた。
村のあちこちで獣人の子達が走り回っていた。
初めは慣れない環境に戸惑っていたが、慣れると村の中を走り回るようになっていた。
「村の拡張も考えたほうが良いかな…
何にしてもやる事がいっぱいだな〜。」
と考えていた。
(まぁ、この前みたいに大変な事は起きてほしくないからね…)
と思った。
この世界に来てからは、ほのぼのと毎日を暮らしていて、それがとても楽しかった。たまに僕がやらかしたけど、それを含めて毎日が充実していて楽しかった。
(この世界に送ってくれたエルに感謝だな。)
と感傷に浸っていると、
「ワタル〜!一緒に走ろうよ〜!」
とマリの声が聞こえ、後ろでは、
「私はもう無理です…」
と言ってクロが日陰で休んでいた。
(クロと一緒に走ってあげろよ…)
と思いつつ、
「よし、なら川まで競争だな!」
とバケツを持ちつつ、マリの横に並んだ。
「私も負けないよ!」
とマリもバケツを持ちつつそう言った。
「クロ〜、合図をお願い!」
と僕が頼むと、
「分かりました〜。それでは行きますよ。」
と言ってクロも日陰から出てきてくれた。
シャルとトモコさんも朝ごはんの片付けが終わったのか家の外へ出てきて、
「今日はどちらが勝つと思いますか?」
「今日もマリだろうねぇ。」
と話しているのが聞こえたので、
「だってさ、ワタル。」
「今日こそは負けない!」
と2人で笑いながらスタートの合図を待っていた。
「位置について〜よ〜い、」
僕とマリは走る体勢を作り、次の合図を待った。
「ドン!」
とクロの合図で僕達は走り出した。
そうして、新しくのんびりした1日が始まった。
終わり
今回で第一部は完結します。新しく、第二部を投稿していきます!
それではまた次回もよろしくお願いしますm(_ _)m




