〜異世界冒険記〜奴隷を解放してみた1
「ご飯が出来ましたよ。」
シャルの呼ぶ声が聞こえたので、
「分かった…」
「今行く〜!」
と僕達はそれぞれ返事をした。
ちなみに、後半の元気な返事がマリだ。
昼ご飯を食べながら、僕はこれからの予定を考えていた。
(とりあえず、今日の夜は1人は助けられるとの事だ。
でも、聖都にはまだ多くの奴隷になっている子達が残ることになっちゃうから…)
と少し難しそうな顔をしていたのがバレたらしく、
「何を考えてるの?」
とマリに質問されたので、
「いや、一応今日の夜ぐらいに1人は助けられるんだけど、他の子達は残ることになるからね…
そのことについて少し考えていたんだ。」
と僕は答えた。
「確かに残っている子達はこれからも酷い事をされちゃうんだよね…」
とマリが言ったので楽しい食事が暗くなっていった。
そんな空気を変えようと、
「今考えててもあまりいい案は浮かばないだろうから、後でゆっくりとみんなで考えようじゃないか。」
トモコさんが言ってくれたので、
「そうだね!」
「そうですね、後でみんなで考えましょう。」
とマリとシャルも明るくなり、食事を進めていった。
(やっぱりトモコさんにはかなわないや…)
と僕も食事を進めていった。
昼ご飯を食べ終わってから、再度みんなで考えてみた。
「とりあえずは、今日の深夜ぐらいに1人は助けられるんだけど、残った子達も出来るだけ早く開放してあげたいんだ。
だけど、あんまりいい案が思いつかないからね。
とりあえず、色々と意見を言って欲しい。」
と片付けの終わったキッチンのテーブルで話し合った。
「とりあえず、マオウが使う魔法は人間を獣に変えるものらしい。
捕まっている子達は、みんな猫の獣人らしいから多分、猫になると思う。
」
とマオウの魔法について説明していった。
途中でマリが口を挟みそうになるが、自分でも覚えていたらしく、慌てて口を押さえるのが見えた。
(ちゃんと覚えていたんだな。)
と僕は感心した。
一応、エルのおかげでマリは犬から犬の獣人にしてもらい、その魔法は禁忌とされているらしく、あまり人に言わないで欲しいとの事だった。
僕は誰にも言ってなかったが、マリは喋ってしまったのかな、と不安になっていたが心配は無用だったらしい。
(まあ、こうして話しちゃってるからもう遅いんだけどね…)
と僕は思いながら、
「ちなみに、この魔法は、女神のエルから、禁忌扱いされているから、あまり村のみんなには言わないで欲しい。
ちなみにマリは、元々犬だったけれどエルに魔法で犬の獣人にしてもらったんだよ。」
と説明を加えたので、
「えっ!言っちゃって大丈夫なの?」
とマリは心配したが、
「大丈夫だよ。エルも緊急事態ってことで納得はしてくれると思う。
それにこんな話は信用できる人にしかしないよ?
まあ、別に村の全員信用はしてるんだけど、出来るだけ少ない人数にしておきたいからね。」
とマリに説明をしたら、
「なるほどね〜。分かった!」
と納得してくれた。
聞いたシャルとトモコさんも、
「分かりました。」
「了解したよ。」
と言ってくれたので僕は安心した。
だから僕は、次の不安を解消しておこうと思った。
「それと、マオウは今回は助けるのは1人と言ったけど、僕は全員を助けようと思うんだ。」
3人は驚いていたが、僕の表情から真剣なんだと理解してくれて、
「どうやって助けるの?」
とマリが代表で聞いてきた。
「とりあえずは、自分の立場を利用しようかなと。ね?」
とシャルを横目で見て、
「なるほど。それは良いかもしれませんね。」
とシャルも気付いたらしく頷いた。
しかし、マリは分からないらしく、
「どういう事なの?説明してよ!」
と少し拗ねてしまったので、
「これからちゃんと説明するから、安心してよ。」
とマリを撫でながら、説明を始めた。
「僕は一応この世界の勇者として女神に召喚された。
それに、ここには元とはいえ聖女のシャルも居るんだ。
この国の王様に会うことが出来るのは偉い人を除けば、僕達のように神から選ばれた人達しか会えないらしい。
だからそれを利用する。」
と一旦呼吸を整えるため目線をシャルの方に向けた。
シャルは僕の続きを理解してくれたのか、
「王様はこの国で一番偉い方ですので、その人の命令と言えば奴隷商人も無視は出来ないでしょう。
問題はどうやって王様に会うかですが…」
とシャルがこちらを向いて確認してきたので、
「その点は問題ないよ。
別に王様にあったわけじゃないけど、
僕に考えがあるから任せてほしい!」
と3人に向けて言った。
「分かりました。」
「頑張ってね〜!」
「あんまり無理はしないでおくれよ?」
と3人とも信じてくれた。
(トモコさんは心配していたが…)
「後は、助けた後の住むところの確保なんだけど
ここの村の人の家に泊めてもらっても良いですか?」
とトモコさんに話題をふってみると、
「今はあんたが村長なんだから、自分でみんなに聞いてみたら?」
と言ったので村のみんなを集めて聞いてみた。
「ーーと言う訳で聖都で捕まってる子達を助けた後、この村に連れてこようと思っているんですけど、誰か泊めても良いという人は居ますか?」
と村の人に聞いてみると、
「私の家は問題ないよ!」
「私も大丈夫ですよ!」
と村人全員が、泊めても良いと言ってくれた。
「皆さん、ありがとうございます!」
と僕はお礼を言った。
「まあこの村には優しい人しかいないからねぇ〜。
聞く前から私は分かってはいたんだけどね。」
とトモコさんが言った。
(なるほどね、しっかりと自分から聞いてみることが大事だと伝えてくれたんだな。)
と嬉しくなったので、
「本当にありがとうございます!」
と村人の全員にまた言った。
これで僕の不安要素は消え、後は実行するだけとなった。
「とりあえず、初めの1人を治すのは僕達の家の裏でも良いけど、捕まっている人数が分からないから、大きい方も同じようにしよう。」
とマリ達に伝え、公衆浴場も家の温泉と同じようにしてきた。
「後は、マオウが連れてくるのを待つだけなんだけど…」
と家の時計を確認した。
「もうすぐ、深夜の1時か…」
マオウが言ってた時間近くとなったので、3人で村の外へ向かった。
マリは普段着のままだが、シャルには聖女だった頃の服を着てもらった。
その方が後々、都合が良いため着てもらった。
そうして3人で村の外へ行くと、
「あそこに誰か居るよ?」
とマリが少し離れた所に人影を見つけた。
1人はマオウと分かったが、もう1人は見たことがなかったので、助けられた子だと思い、近づいていった。
その時にスマホが鳴り、画面を見るとマオウからだったので、
「もしもしマオウ?もう2人見えてるから、後ろを振り返ってみて?」
とマオウに伝えた。
電話ではマオウがまだ何かを言っていたがよく聞こえずに、2人が振り返るのが見え、そのまま、
「どうも、こんばんは。」
と獣人の子に伝えてみた。
その子は全身が、キズやアザだらけでとても酷い仕打ちを受けたとひと目で分かった。
その子が何かを喋ろうとしたが、
「あ、今は喋らなくてもいいよ。
必ず助けるから、安心して寝てていいよ?」
と僕は伝えた。
無理に喋ると体力も使うから出来るだけ安静にしていてほしかった。
「そうだよ〜。ワタルに任せれば安心だから、ゆっくり寝てて〜。」
とマオウが伝えると安心したのかそのまま眠った。
獣人の子が眠ったのでちょうどいいと思い、
「マリ。その子を抱いてもらえないかな?」
「分かった!」
とマオウからマリに女の子を抱くのが代わった。
「いや〜、助かったよ。
僕って見た目通り力がなくてね、もうそろそろ落としちゃいそうだったよ〜。」
と少しおちゃらけた感じで言っていた。
確かにマオウは、見た目的には腕が細くて力もなさそうに見えた。
だから、まあ納得は出来た。
(もっと筋トレでもしたら良いのに…)
そして、マリが抱きかかえてる女の子を見た。
年齢はあまり僕たちと変わらないぐらいには見えたが、腕や足がだいぶ細くて、ろくに食事を貰えてなかったのがひと目で分かった。
「とりあえず立ち話はこれくらいにして、まずは家に戻ろうか。」
と3人に伝えて、家に戻った。
家に着いてすぐに、
「マリは、女の子と一緒に裏の温泉に浸かってもらうね。
シャルは、その女の子に似合う着替えを準備しておいて欲しい。
僕は、ここでマオウと少し話してるから。」
と伝えて2人と別れた。
「僕も結構疲れてるんだけどな〜。」
とマオウが言うので、
「疲れているところ悪いけど、もうひと仕事頼めるかな?
あ、疲れに関しては問題ないよ?
温泉に入れば疲れもとれるから。」
とマオウに伝えた。
「人使いが荒いな〜。
それで、僕は何をすれば良いのかな?」
と文句を言いつつも手伝いをしてくれるので本当に人間が好きなんだなと思いつつ、
「これから聖都に向かい、残っている子達も全て助ける。
僕達が捕まっている子達を助けている間に、マオウには騎士達が村を襲った証拠を探してきて欲しい。」
と頼んだ。
「証拠なんて残ってないと思うけどな〜。」
とマオウが言った。
聖都に残っている奴隷を全て助けることはマオウには伝えていなかったが、驚かれなかった。
多分、僕ならそう言うと分かっていたんだろう。
「いや、多分残っていると思うよ。
聖都の王にバレないように村を襲うとなれば、
時間にそれほど余裕があるとは思えない…
だから、証拠を隠す時間なんかはないはずだよ。」
とマオウに伝えた。
「まあ、証拠はあまり必要ないかもしれないけど一応ね。
とりあえず、あの助けた女の子にももう一度聖都に付いてきてもらいたいんだけど…
それは温泉から上がってから僕から伝えるよ。」
マオウは、
「まあ、確かに証拠があれば王様も話を聞いてくれるかもしれないからね。
分かったよ、探しておくよ。」
と言いながら、床に横になった。
(本当に魔王らしくないな…)
と思いながら、
「魔王なら禁忌の魔法の1つや2つ、ポンポン使えないの?
それこそ、過去の映像を映すとか。」
と軽い気持ちで言ってみた。
すると、
「あ〜、確かにそんな魔法もあるにはあるんだけどね…」
「あるんだ…」
と少し呆れた感じになるが、
「なら、それと証拠が揃えば最高なんだけど…」
とマオウに聞いてみると、
「確かにあるんだけど、条件が面倒でね。
その場所に行って、その土地の人に触らないと駄目なんだ…」
何か暗い雰囲気で話したので、
「確かにたいへんかもね………あれ?」
僕は少し考えて、
「村の人ってさっきの女の子でも良いんだよね?」
マオウに聞き、
「え?大丈夫だけど?」
と軽く返してきたので、
「なら後は村に行けば良いだけじゃ無いの?」
僕が聞くと、
「そうだね!」
と元気に返事をした。
(面倒だと思ったんだな…)
と少し呆れてしまった。
なので、
「とりあえず、女の子が温泉から上がったら君にも入ってもらうよ?
その後で村まで行って証拠を探してきてね?
その後は、聖都まで証拠を持って合流してもらうね。
どうせ、テレポートみたいな魔法もあるんだよね?」
と少し怒った様に言ってみた。
「そんなに怒らなくてもちゃんとやるって。
前にも言ったけど、基本的に人間は好きだからサボらないよ。
後、ちゃんとテレポートも出来るから時間は余裕だよ!」
とマオウは笑いながら言った。
(これから疲れるんだから、あんまり疲れさせないで欲しいな…)
と僕は思いつつ、
「その村の場所って知ってるの?」
とマオウに聞くと、
「えっと、確か〈ネコの街〉って名前のはずだから知ってるよ。」
と知っている感じだったので、
「なら、温泉に入ってからすぐに行ってもらえないかな?」
と先ほどまでのふざけた感じを壊し、真剣な顔で言った。
流石に、マオウもこれ以上はふざけるのはやめたらしく、
「さっきの疲れたってのも実は嘘だから、体力はまだ余裕があるんだ。
だから今から行ってくるよ。
ちなみに、他には頼みはないよね?」
とマオウも真剣な顔で言ってきたので、
「ああ、頼みはそれだけだよ。よろしく頼むよ。」
と僕も簡単に済ませた。
「それじゃあ、行ってくるよ。」
と何やら唱えていて、それが終わるとマオウの足元付近に魔法陣が現れた。
そして、次第に光が強くなっていく中マオウが、
「あ、言い忘れてたけど頼みの報酬として村に住まわせてもらうからね〜。」
と言った。
(このタイミングで言うってことはダメと言われると思っていたんだな…)
と少し信用されてなかったことにショックを受けつつも、
「ちゃんと証拠を持ってきたらね〜。」
と笑顔でマオウに答えた。
「了解したよ〜。ちゃんと証拠は見つけてくるよ。
それじゃ。」
と言ってマオウは光に包まれていき、光が収まるとマオウは居なくなっていた。
(頼んだからね。)
と心の中でマオウを応援しつつ、こちらも準備を始めていった。
(ここは何処なんだろう?)
私が目を覚ますとそこは見たことがない景色だった。
どうやら家のようだったが、聖都では見たことが無いような少し古いような内装だった。
それに、
(何だか身体が軽くて、それに体調も良くなったような…)
と自分の身体を見てみた。
「あれ?キズやアザが無くなってる?
しかも、牢屋に居た時に着ていた服と変わっていて、何だか普通の服を着ているような…」
と驚いていた。
(こんな普通の服を着るなんて何年ぶりなんだろう…)
と少し感傷にひたっていると、
「あ!目が覚めた?良かったよ〜。」
と1人の獣人の女の子がやって来た。
見た目は私とは違い、スタイルも良くて元気な印象を受けた。
(スタイルが良くて羨ましいな〜)
と思っていると、
「もしかしたら覚えてないかもしれないから自己紹介をもう一度しておくね。
私の名前はマリ。
君と同じ獣人だね。と言っても獣人の村で産まれたわけじゃないんだけどね…へへっ。」
と笑いながら自己紹介をしてくれた。
(へぇ、マリさんか。ひと目見て明るそうなイメージはあったけど、本当に明るくて喋りやすそうだなぁ。)
と私が思っていると、
「君にあったキズやアザに関してはワタルの作った温泉に入れて治したんだ。
その時に着ていた服は捨てて、新しく服を用意したんだ。
ちょうどいいサイズがあって助かったよ〜。」
と説明をしてくれた。
(なるほど、私のキズやアザが治っていたのはそのオンセン?に入ったから治ったのね。)
と少し分からないことがあったので、
「あの、オンセンって何ですか?」
とマリさんに聞いてみた。
「あ、そっか〜。こっちの人は知らないんだった。
温泉って言うのは簡単に言うと大きいお風呂って感じかな。」
と説明してもらった。
続けて、
「でも、ワタルの作った温泉に入っても身体の疲れや身体の異常はとれるんだけど汚れまではとれなくてね…
私が君の身体を洗わせてもらったんだ!」
と付け足して説明をしてくれた。
(久しぶりにお風呂に入れたのか〜。
しっかりと意識のある時に入りたかったな…)
と少し泣きそうになっていると、
「あ、やっと目が覚めたんだね。良かったよ。」
「そうですね、良かったです。」
と2人分の声が聞こえたので、2人の方を見てみた。
1人は男の人で、見た目は何だか普通に見えた。
女性の方は、何だか修道服を着ていたので聖職者か何かだと思った。
そんなことを思っていると、
「とりあえず、自己紹介をしておくね。
僕の名前はワタル、一応この世界には勇者として召喚されたんだ。よろしくね。」
と男の人が言った。
確か、マリさんが言っていた名前も「ワタル」だったので、どうやら私のキズ等を治してくれたのはこの人なんだと分かった。
「私はシャルロッテと申します。呼びにくいならどうぞシャルとお呼びください。
この格好から予想はつくかと思いますが、少し前までは聖都で聖女の仕事をしていました。
よろしくお願いします。」
と女性の方は丁寧に挨拶をしてくれたので、
「こちらこそ、助けていただきありがとうございました。私は…えっと…」
と言葉に詰まっていると、
「どうしたの?」
と先ほどワタルと名乗った男の人が聞いてきたので、
「いえ、聖都で地獄の様な毎日を過ごしていたので自分の名前を思い出すことが出来なくて…」
と3人に説明した。
すると、
「そう…なんだ…」
とワタルさんは辛そうな表情で言った。
マリさんとシャルさんを見ると、2人も辛そうな表情をしていて、私を心配してくれているようだった。
(優しい人たちなんだな…)
と少し心があったかくなるのを感じながら、
「でしたら、皆さんで私に名前をつけてくれませんか?」
と私が提案すると、
「本当に僕達なんかでつけても良いのかい?
名前っていうのは親から付けてもらう大切なものなのに…
それを僕たちで勝手につけてしまっても…」
とワタルさん達ががまた悲しそうな顔をしたので、
「いえ、良いんですよ。私が親から貰った名前を思い出せるまでの仮の名前ということにしてください。
名前がないと呼び方に困ってしまいますから…」
と私が少し困った顔で言ったので、
「じゃあ、とりあえずは仮の名前として君の名前を決めようと思うんだけど…」
と3人で相談を始めようと、ワタルさんは後ろの2人の方を振り向こうとした時、
「なら、その子の名前、『クロ』って名前にしたら?
耳や尻尾がキレイな黒色だから!」
とマリさんが言った。
「クロ、ね。確かに見た目通りの付けやすい名前なんだけど…」
「そうですね…そんな安易な名前で良いものか…」
とワタルさんとシャルさんが真剣に考えてくれたので、
「いえ、『クロ』で大丈夫ですよ。
私の特徴を捉えているし、それに短くて呼びやすいですし。」
と私が笑顔で言ったので、
「そうだね、君が平気なら問題はないよ。」
「そうですね。」
と2人も納得をしてくれたようだった。
そして、ワタルさんは、
「これからよろしくね、クロ。」
と握手をするように手を前に出したので、
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
と私も手を前に出し2人で握手をした。
「私もよろしく〜!」
「これからよろしくお願いします。」
とマリさんとシャルさんも手を前に出したので私は2人にも握手をした。
3人と握手を交わした後、ワタルさんから、
「さっき聖都から逃げ出してきたばかりで申し訳ないんだけど…
お願い!もう一度僕たちと一緒に聖都へ行ってくれないか?」
と土下座をしながらお願いをされてしまった。
訳がわからない私は、少しテンパってしまった。
「ちゃんと理由を言わないと分からないよ、ワタル。
ちゃんと説明をしてあげて。」
とマリさんが私の代わりに言ってくれた。
「そうだね、僕も少し冷静さを失ってたよ…
ごめんね…」
と謝ってくれたので、
「いえ、大丈夫ですよ。それよりも詳しく説明をお願い出来ますか?」
と私は言った。
もう一度、あの聖都に戻るのは私はとても嫌なのだが、ワタルさん達が頭を下げてまで私に頼むことなのだら、きっと私にしかできない事なんだ、
私はそう思い、話を聞こうと思った。
「分かったよ、それじゃあ説明をするよ。
それと、話を最後までした後に確認をするよ?
僕達はあまり無理強いはさせたくないから行きたくないなら断ってくれても構わないから。」
とまっすぐこちらを見つめながら、話し始めた。
「実はーー」
と言って少し長い話が始まった。
「ーーーと言う訳で僕達は聖都に捕まっているクロの仲間を助けようと思うんだ!」
と説明が終わった。
説明では、私達の村が襲われて聖都に連れて行かれたこと。
その後、私達がどんな仕打ちを受けていたのか。
そして、それを聞いてワタルさん達がどんな気持ちを持ったのか、詳しく説明をしてくれた。
「僕はこの世界に来る前の、日本という国には奴隷というものが無かった。
世界として見れば居ただろうけど、僕には関係のない話だと思っていた。」
と話し始め、
「でも、この世界に来て初めて訪れた街がこの村で、見ず知らずの僕とマリを助けてくれたんだ。
困っているから、っていう小さな理由だけどね。
だから、僕は困っている人を積極的に助けていこうと思っているんだ!
せめて、手の届く範囲ならってね。」
と自分の気持ちを全て出し切ってくれた。
「私もワタルと同じ気持ちだよ!
この世界で出会った人達は困っていたら手を差し伸べてくれる人達ばかりだったんだ。
だから、私も困っている人がいたら助けたいんだ!」
「私も、元とはいえ聖女でしたので困っている人を見過ごす事はしたくありません。」
とマリさんとシャルさんも自分の素直な気持ちを私にぶつけてくれた。
(この世界には、まだこんなにも優しい人が残っているんだ…)
と話を聞いて思わず泣いてしまった。
そして、泣きながら、
「私も、助けられたばかりですが、捕らえられている私の仲間達に、
『この世界にはまだ温かいものは残っているんだよ!』
と伝えたいです!
だから、私も連れて行ってください!」
と3人にお願いをした。
「辛いだろうけど、よろしくね!」
「一緒に頑張ろう!」
「辛くなったら我慢をしないで私達に言ってくださいね?」
と3人が私に激励をくれ、私はもう一度聖都へ向かう事にした。
私が貰った温かい気持ちを仲間のみんなにも伝えるために。
本当に良いところで切り上げてしまい申しわけありません。
このあと、頑張って書いてすぐに投稿します。
それでは、ワタル達の頑張りを期待して待っていてください!