↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/45

Duct18 ダクトテープでゲットだぜ2

 そして、次の日。


 昨日と同じ場所、同じ罠に、昨日と同じタヌキの女の子が掛かっていた。


 アホかこいつ……。

 

「……肉」

「さばきましょう」

「んっ、んっ、んっんん――!!」

「ダメ、食べちゃ、ダメ!!」


 そして、昨日とまったく同じ工程を繰り返し、「「チッ」」という2人の舌打ちが鳴り響いた後、俺はタヌキの女の子をダクトテープの罠から解放してあげた。

 

 すると、タヌキの女の子はかしこまったように俺の前で両膝を地面につけた。

 そして、


「1度ならずも2度までも助けてもらってありがとうですの」


 と話すと、俺に向かって深々と頭を下げた。

 

 おおっ、人語を解するんだな。

 語尾が変だけど、まあ、ご愛嬌か。


「いや、こんな場所に罠を張った俺が悪いんだよ。もう罠はかけないから。さあ、森にお帰り」

「そうはいきませんですの」


 タヌキの女の子は大きな瞳で俺の顔をジッと見つめた。

 丸い小さな顔に、少したれぎみの大きな目と、まさにタヌキのようなかわいらしい顔だ。

 

 しかし、森に帰らないって、どういうことだ?

 小首をかしげていると、タヌキの女の子が神妙そうに話し始めた。


「私はフィアと申しますですの。フィアの一族には、命を2度助けられた相手には、その恩に報いるために一生をかけてお仕えするという掟がありますの」

「ふむ、ふむ、それで?」

「ですから、フィアはこれからあなた様にご奉仕して、ご恩を返しますの」


 フィアと名乗ったタヌキの女の子が頬を赤らめ、恥ずかしげに俺を見つめた。


「……その、ですから、なんなりとご命令くださいませですの……ご主人様……」


 あー、そういうことね、俺が命の恩人なのね。

 命の危機におちいった原因が俺なのにね。

 パラッドクスだなー。

 

 助けられた動物が恩返しするっていう設定は元の世界の昔話では王道だったけれど、この世界でも似たようなことがあるんだな。

 しかし、あれだな……これは、これで、面倒だな。

 

 だって、同居人はもう間に合ってますから!

 これ以上増えても、面倒みきれませんから! 


「いえ、結構です」

「ええええええ!!!」


 俺が右の手の平をバンッと突き出して断ると、フィアは目を白黒させた。


「さあ、森にお帰り」


 優しくほほ笑む俺。


 しかし、フィアは「なぜですの? なぜですの?」と泣き顔で俺の足にすがりついてきた。


「一族の掟に反すると例外なく死罪ですの! ですから、お側に置いてほしいですの!!」

「いや、別にしてほしいことないし」

「な、何かあるはずですの! ご主人様がお望みとあれば、夜伽でもなんでもいたしますの! というか夜伽させてくださいですの!!」


 おい、おい、君、見た目は中学生ぐらいじゃあないか。

 そんな年端もいかない女の子が変な言葉を使ってはいけません。


「でも、やってほしいことなんてないしな……」

「うえーんですの、そんな殺生なですの!!」


 泣き叫び、鼻水を俺のズボンにグリグリとなすり付けるフィアを見ながら、帰ったらズボンを洗濯しないといけないなあとふと思った。

 

 洗濯!? そうだ、洗濯だ!!

 

 俺はフィアの両肩をつかむと、半ば無理矢理にその場に立たせる。

 フィアは驚いた様子で、涙に濡れた瞳を俺に向けた。

 

「フィアは料理とか洗濯とか、つまり家事は得意かい?」

「はい、得意ですの! 大得意ですの!!」


 俺の言葉に、フィアが嬉しそうに何度もうなずく。


「では、フィアに我が家の家政婦さんをお願いしたいのだが、それでもいいかい?」

「はい! もちろんですの。フィアはご主人様の家政婦さんになるですの!!」

「よし、では、任せた!」

 

 信任の証として肩をポンっとたたくと、フィアは涙を指で拭って嬉しそうに笑った。

 

 あー、よかった、よかった。

 これで、俺は家事から解放されるぞ!!

 1日12時間寝て暮らす生活にかなり近づいた!!

 

 それに、恩返しができることがよほど嬉しいのか、フィアも笑顔で尻尾を揺らしている。

 まさにwin―winの取り引きだ。

 

 しかし、その嬉しそうなフィアの表情が突如として青ざめ、汗が滝のように流れ、尻尾をけば立て、獣耳を伏せ、全身を激しく震えさせ、歯の奥をガチガチと鳴らし始めた。


 どうしたの?

 君の視線の先になにがあるの?


 フィアの視線を追って振り返った先には、冷たく笑う2匹の鬼がいた。


「……肉」

「さばきましょう」

「んっ、んっ、んっんん――――!!!!!」

「ダメ、食べちゃ、ダメ――――!!!!!」


 森の中に俺の絶叫がこだました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。