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20/33

19.煩う3

4/29に投稿したものです。時系列に合わせて疑似餌後に並べ替えました。

 想像していたよりあっさりと、大地はナニかを背負ってこまろと出発した。


 ・・・昔から(あやかし)を見慣れてるからって、落ち着きすぎじゃないか、大地のヤツ?


 ヒトって、いきなり背中にナニか乗ったら、もっと、こう、ワー!とかギャー!とかさぁ。

 「!?」だけで普通におんぶとかナニよー激しいリアクション欲しかったなー。


 ナンか、つまらん・・・。


 閉じた蛇の目傘の頭に両手と顎をのせて、半分目を伏せて大地が走り向かった方をみる。ちょろちょろと視界から逃げ出す赤リボンに、目が釣られた。




 にや。




「ぎゃ」

「ひいっ」


 笑んだだけで園児達が園児らしからぬダミ声を出して足を(もつ)れさせている。


 小悪魔笑顔(般若顔)は効果テキメンだったんだな。


「百鬼祓いの前に、準備運動しなきゃね。運動不足で体を壊しちゃいけないし。ねぇ?ホラ、そう思うでしょ」


 畳返し、小鬼、砂かけ婆、垢舐、女郎蜘蛛・・・


 呼んだ種族ごと、五六匹ずつが、ビクン!ぶるぶるっ!と震えて反応する。あーぁ、せっかく化けてるのに、バレバレじゃん。


「呼ばれただけで、ソレか。・・・まだ甘いなあ」


 蛇の目傘を一旦消して、「ピコ」(ピコハン)を出す。


「ホラ、ホラ、その格好みたらナンかヤる気が出てきちゃったなあ。強くなりたいんデショ?胸を借したげるよー」


 ピコをびゅん、びゅん、と横8の字に振りながら、凍りつく園児達に近寄る。


「さあ? はっじめっるよー」


ぴこっ!


 片手で床を軽く打ち鳴らすと同時に、ぴゅん!と音が聞こえそうな速さで赤リボン園児達は走り出した。四方八方クモの子だ。風切り音の中に、毒女、と混じっていたのは気のせいだろう。





 そう時間をかけずに全員捕まえた。それでも園児に化けて居られないくらい可愛がったよ。組合員との鬼ごっこたのしー!


 もうみんな普通に妖怪スタイルだから、『通り道』の妖と判別が付くようにリボンだけ付けさせる。大地の行く道を掃除しときたいし、今日のところはコレで仕方ないな。時間のあるトキもっとやろうね!


 目を潤ませた組合員達は、力なく地に膝をついている。もうバテてるのか?わかむうに、みんなの体力付けるよう言っとかないと。




 気を取り直して、閉じた蛇の目傘を手に『通り道』を進む。祓うのは混雑しているトコロだけで充分だろう。そう思いながら歩いていると、


(あね)さん、」


 赤リボンをつけたゴツい小鬼がシュタ、と私の斜め前に降り立った。コイツは組合員の中でも古株で実動部隊の取り纏め役だったか、確か名前が・・・


斑角(まだらつの)?」


「っ!名を覚えてやしたやんで」


 ちょっと嬉しそうに口の端を上げる小鬼。斑角は、まだらの角が生えてたから付けた。私がそう呼んだせいか、周りからもそう呼ばれているそうだ。斑角は視線を左に流し、言う。

 

「・・・妙な、蝶がいやす」


 ん?


 気付かなかったけど、白い蝶が飛んでいる。一匹、二匹、三匹・・・んん、多いな。


 目で追いかけた先には、十匹以上の白い蝶が固まり舞っている。でも、変な感じはしない。それが逆に妙だ。もう、蝶?五月だよ?


 目を(すがめ)ると、きぃん、と耳鳴りがする。耳の中で膨らむような高音だ。組合員達も前屈みで耳を塞いでいる。


『三十五日・り・・う・・』


 ーーーーーーーーいーいいいいぃーぃぃん。




「・・・耳鳴りが、やんだ?」


 空気が鳴るなか、ナニか聞こえた気がしたけど?


 私の足元でしぃまろは肩をいからせている。もう蝶はいない。組合員達に異変もない。道を歩くヒトは何事もなく通りすぎていく。『通り道』の妖怪達はキョロキョロするものの、頭を掻いたり首を傾げたりして去っていく。


 ナンだったんだ?


 分からないけど、わからないことをやるだけの妖もいるし、そういうモノなのかも。






くるりくるりくるりくるり・・・・・・・


ばた、ぼたぼた、どさ。


「ーーーこんなモノかな?ここで仕舞いにしよう」


 傘を回して何度目か。きれいな女に、童子やら、布地やら、岩みたいなのやら。倒れた妖怪は右に左に組合員に運ばれて、混雑していた住宅街はもう閑散としている。

 そろそろ大地も最後のお札を貼る頃だろう。しぃまろにこまろからの連絡がないから、無事なのは間違いない。

 

 私がやっていることは退治じゃなく追い払うだけだから、弱いのは一か月、強いのは二週間ほどで、ココを思い出して戻って来るヤツもいるだろう。また混雑したら祓いに来よう。


「組合員ー、終わりの点呼するぞ~。斑角、どこ?」


 組合員を集めようと斑角を探して細い路地に足をのばすと、(すね)に、くん、と紐を引っかけた感触。そしてぶわり、と頭に網のような軽いナニかが被さった。


 はふ!!


 全身を薄いナニかにくるまれる前に、しぃまろの口から黄白い炎が放たれ、頭に乗るモノを燃やす。溶けるようにソレの端まで火がまわり、灰もなく消えた。


 頭でまだチリチリいってるケド?燃えてないよね、髪の毛?ねぇ、しぃまろ、じっと見てるけど、燃えてないよねえ?!


蜘蛛(くも)の巣、でやすね。火に弱いはずでやすが、ずいぶんとしぶとい」


 ナンだ。蜘蛛の巣か。しぃまろ、ありがとね。


 なんとなく頭を払い、来てくれた斑角に組合員の数を確認してもらう。こちらの仕事は終わりだから解散していいんだけど・・・ナニそわそわしてるの?みんな。あ、鬼ごっこしたいの?


 みんな首がもげるんじゃないかってくらい、頭を横に振ってる。そう?楽しいのに。


 はふん!


 しぃまろが応えるいちどきに、空気が澄み渡る。おおっ。大地はお札を五枚、貼り抜いたな。五芒星にしたソレは効果テキメンで、悪い気が無くなった。


 私だけの時は、傘を回しながら五芒星を描くようにまわり、できるだけ漂う気を身に吸い込んでいた。それなりにキレイになる感じ。


 大地のお札は、『通り道』に溜まる気をありったけ吸うようだ。居すぎる妖怪に引き寄せられたヒトの、よくない気を。泥棒とか痴漢なんかは、これで当分出ないな。


 気の貯まったお札は私のご飯になるし、楽しみだなぁ。大地の気は雑じり気無くてウマイけど、雑多な気も味わいがあっていいんだよね!言うなれば、清水とミックスジュースみたいな違い。


 考えていると、組合員がわああ、と突然群れて走り出した。その先に、こまろに先導された大地が見えた。ナンだか足許が覚束(おぼつか)ない?あ、組合員に埋もれた。


「Terra~?」


 ぴこっ!ぴこっ!ぴこっ!ぴこっ!


 ピコで組合員をとばして、大地を掘り出す。

 道路に尻餅を付いて目を丸くした大地が、わはは!と弾ける笑顔を見せた。ちょうどヒトの途切れたときでよかった。


「お疲れ様、Terra」


「・・・うん。螺旋(らせん)も。お前らも」


 そういって、懲りずに近寄ってきていた組合員達の頭を撫でた。大地、目が赤い?だけど、すっきりした笑顔だ。


 組合員達は順番に名を呼ばれながら頭を撫でて貰っていた。(いか)つい斑角まで・・・。目を細めて気持ち良さそうだな。


 そっか、ソレを待ってたのかお前達。・・・鬼ごっこもヤろうよ?え?ナニ。急に消えるとかナニ?帰っちゃったの?・・・アイツら公園待機組だろ、今度特別訓練するからなっ。





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