19.煩う3
4/29に投稿したものです。時系列に合わせて疑似餌後に並べ替えました。
想像していたよりあっさりと、大地はナニかを背負ってこまろと出発した。
・・・昔から妖を見慣れてるからって、落ち着きすぎじゃないか、大地のヤツ?
ヒトって、いきなり背中にナニか乗ったら、もっと、こう、ワー!とかギャー!とかさぁ。
「!?」だけで普通におんぶとかナニよー激しいリアクション欲しかったなー。
ナンか、つまらん・・・。
閉じた蛇の目傘の頭に両手と顎をのせて、半分目を伏せて大地が走り向かった方をみる。ちょろちょろと視界から逃げ出す赤リボンに、目が釣られた。
にや。
「ぎゃ」
「ひいっ」
笑んだだけで園児達が園児らしからぬダミ声を出して足を縺れさせている。
小悪魔笑顔は効果テキメンだったんだな。
「百鬼祓いの前に、準備運動しなきゃね。運動不足で体を壊しちゃいけないし。ねぇ?ホラ、そう思うでしょ」
畳返し、小鬼、砂かけ婆、垢舐、女郎蜘蛛・・・
呼んだ種族ごと、五六匹ずつが、ビクン!ぶるぶるっ!と震えて反応する。あーぁ、せっかく化けてるのに、バレバレじゃん。
「呼ばれただけで、ソレか。・・・まだ甘いなあ」
蛇の目傘を一旦消して、「ピコ」を出す。
「ホラ、ホラ、その格好みたらナンかヤる気が出てきちゃったなあ。強くなりたいんデショ?胸を借したげるよー」
ピコをびゅん、びゅん、と横8の字に振りながら、凍りつく園児達に近寄る。
「さあ? はっじめっるよー」
ぴこっ!
片手で床を軽く打ち鳴らすと同時に、ぴゅん!と音が聞こえそうな速さで赤リボン園児達は走り出した。四方八方クモの子だ。風切り音の中に、毒女、と混じっていたのは気のせいだろう。
そう時間をかけずに全員捕まえた。それでも園児に化けて居られないくらい可愛がったよ。組合員との鬼ごっこたのしー!
もうみんな普通に妖怪スタイルだから、『通り道』の妖と判別が付くようにリボンだけ付けさせる。大地の行く道を掃除しときたいし、今日のところはコレで仕方ないな。時間のあるトキもっとやろうね!
目を潤ませた組合員達は、力なく地に膝をついている。もうバテてるのか?わかむうに、みんなの体力付けるよう言っとかないと。
気を取り直して、閉じた蛇の目傘を手に『通り道』を進む。祓うのは混雑しているトコロだけで充分だろう。そう思いながら歩いていると、
「姐さん、」
赤リボンをつけたゴツい小鬼がシュタ、と私の斜め前に降り立った。コイツは組合員の中でも古株で実動部隊の取り纏め役だったか、確か名前が・・・
「斑角?」
「っ!名を覚えてやしたやんで」
ちょっと嬉しそうに口の端を上げる小鬼。斑角は、まだらの角が生えてたから付けた。私がそう呼んだせいか、周りからもそう呼ばれているそうだ。斑角は視線を左に流し、言う。
「・・・妙な、蝶がいやす」
ん?
気付かなかったけど、白い蝶が飛んでいる。一匹、二匹、三匹・・・んん、多いな。
目で追いかけた先には、十匹以上の白い蝶が固まり舞っている。でも、変な感じはしない。それが逆に妙だ。もう、蝶?五月だよ?
目を眇ると、きぃん、と耳鳴りがする。耳の中で膨らむような高音だ。組合員達も前屈みで耳を塞いでいる。
『三十五日・り・・う・・』
ーーーーーーーーいーいいいいぃーぃぃん。
「・・・耳鳴りが、やんだ?」
空気が鳴るなか、ナニか聞こえた気がしたけど?
私の足元でしぃまろは肩をいからせている。もう蝶はいない。組合員達に異変もない。道を歩くヒトは何事もなく通りすぎていく。『通り道』の妖怪達はキョロキョロするものの、頭を掻いたり首を傾げたりして去っていく。
ナンだったんだ?
分からないけど、わからないことをやるだけの妖もいるし、そういうモノなのかも。
くるりくるりくるりくるり・・・・・・・
ばた、ぼたぼた、どさ。
「ーーーこんなモノかな?ここで仕舞いにしよう」
傘を回して何度目か。きれいな女に、童子やら、布地やら、岩みたいなのやら。倒れた妖怪は右に左に組合員に運ばれて、混雑していた住宅街はもう閑散としている。
そろそろ大地も最後のお札を貼る頃だろう。しぃまろにこまろからの連絡がないから、無事なのは間違いない。
私がやっていることは退治じゃなく追い払うだけだから、弱いのは一か月、強いのは二週間ほどで、ココを思い出して戻って来るヤツもいるだろう。また混雑したら祓いに来よう。
「組合員ー、終わりの点呼するぞ~。斑角、どこ?」
組合員を集めようと斑角を探して細い路地に足をのばすと、脛に、くん、と紐を引っかけた感触。そしてぶわり、と頭に網のような軽いナニかが被さった。
はふ!!
全身を薄いナニかにくるまれる前に、しぃまろの口から黄白い炎が放たれ、頭に乗るモノを燃やす。溶けるようにソレの端まで火がまわり、灰もなく消えた。
頭でまだチリチリいってるケド?燃えてないよね、髪の毛?ねぇ、しぃまろ、じっと見てるけど、燃えてないよねえ?!
「蜘蛛の巣、でやすね。火に弱いはずでやすが、ずいぶんとしぶとい」
ナンだ。蜘蛛の巣か。しぃまろ、ありがとね。
なんとなく頭を払い、来てくれた斑角に組合員の数を確認してもらう。こちらの仕事は終わりだから解散していいんだけど・・・ナニそわそわしてるの?みんな。あ、鬼ごっこしたいの?
みんな首がもげるんじゃないかってくらい、頭を横に振ってる。そう?楽しいのに。
はふん!
しぃまろが応えるいちどきに、空気が澄み渡る。おおっ。大地はお札を五枚、貼り抜いたな。五芒星にしたソレは効果テキメンで、悪い気が無くなった。
私だけの時は、傘を回しながら五芒星を描くようにまわり、できるだけ漂う気を身に吸い込んでいた。それなりにキレイになる感じ。
大地のお札は、『通り道』に溜まる気をありったけ吸うようだ。居すぎる妖怪に引き寄せられたヒトの、よくない気を。泥棒とか痴漢なんかは、これで当分出ないな。
気の貯まったお札は私のご飯になるし、楽しみだなぁ。大地の気は雑じり気無くてウマイけど、雑多な気も味わいがあっていいんだよね!言うなれば、清水とミックスジュースみたいな違い。
考えていると、組合員がわああ、と突然群れて走り出した。その先に、こまろに先導された大地が見えた。ナンだか足許が覚束ない?あ、組合員に埋もれた。
「Terra~?」
ぴこっ!ぴこっ!ぴこっ!ぴこっ!
ピコで組合員をとばして、大地を掘り出す。
道路に尻餅を付いて目を丸くした大地が、わはは!と弾ける笑顔を見せた。ちょうどヒトの途切れたときでよかった。
「お疲れ様、Terra」
「・・・うん。螺旋も。お前らも」
そういって、懲りずに近寄ってきていた組合員達の頭を撫でた。大地、目が赤い?だけど、すっきりした笑顔だ。
組合員達は順番に名を呼ばれながら頭を撫でて貰っていた。厳つい斑角まで・・・。目を細めて気持ち良さそうだな。
そっか、ソレを待ってたのかお前達。・・・鬼ごっこもヤろうよ?え?ナニ。急に消えるとかナニ?帰っちゃったの?・・・アイツら公園待機組だろ、今度特別訓練するからなっ。




