お祖母ちゃん家。1。
◇
俺が退院して数日後。
俺は久しぶりに1人で家を出ていた。
と、言っても特に何処かに行きたくて家を出た訳ではない。
母さんがお祖母ちゃんの家に行って退院した事を報告して来いって家を追い出すから仕方なく向かっているだけ。
本当は、母さんと黄桜と3人でお祖母ちゃんの所に行く予定だったのだが、母さんに急な予定が入ってしまったために1人で行く羽目になった。
予定があるなら明日でいいって言ったのに。
母さんは、お祖母ちゃんが待ってる!って聞かないし、黄桜は知らないうちに姿が見えなくなってしまって上手い具合に逃げられた。
多分、近くの友達の家に逃げて行ったんだろう。
俺も黄桜もそこまでお祖母ちゃんの事が好きではないし嫌いでもない。
でも、いざ行けって言われるとなんか嫌だ。
だってつまらない昔話を永遠と語られるんだもん。
途中でゲームをやったって、そんなモノを使わないで外で遊んで来なさいとか、今時の子はとか・・・正直言ってうるさい。
俺は1人路上を歩きながら深いため息をついた。
そして、上着のポケットに突っこんでいた手が何かに触れたのに気が付いた。
手をポケットから引き抜いて開いてみる。
掌の上に乗っかっていたのは金色に光る500円玉。
そういえば、退院の時に忘れちゃいけないと思って上着のポケットに入れたんだっけな・・・。
すっかり忘れてた。
ちょうどコンビニが目の前にあるし、おやつでも買ってお祖母ちゃん家で食べよっ!