霊感と家族を見つけました。7。
公園までカナちゃんを連れて行くと、男の人は立ち止って驚いた顔をしていた。
カナちゃんは、パパを見つけると俺の手から離れてパパと泣きながら抱きしめ合っている。
なんか、怖い思いもしたけど・・・やっぱ良い事をしたなって思うと自然と笑みがこぼれる。
最後にパパとカナちゃんは、互いに笑い合うとありがとうと言葉を残して、体が透けていきやがて見えなくなった。
これを見るとやっぱり幽霊なんだって分かる。
俺、いつの間にか幽霊が見えるようになったんだ。
「少年、アナタの名前は?」
見えなくなった所をずっと見つめていたら、不意にお姉さんが聞いて来た。
「俺、黄羽・・・烏丸黄羽。お姉さんは?」
「黄羽・・・・私ね、特定の名前は作らない様にしているのよ。だから、名前は無いに等しいの」
「・・・?」
「黄羽、アナタは不思議な子ね。見つけられない女の子の霊を見つけてくるなんて。それに病院にいたあの毛布の子・・・また今度、私に紹介してくれないかしら?」
「いいよ。」
「ねぇ黄羽。アナタは病院で1度怖い思いをしてきたわね。存在も何だったのかも分からない出来事が起きたのよね」
「うん」
お姉さんは尻尾をまたゆっくり揺らす。真っ直ぐに俺を見降ろして、静かに俺の目を見つめる。
「幽霊が見えるって事は、こういう変な事に巻き込まれる可能性が高くなったって事なのよ。本当は要らない能力なの。霊感の事を、幽霊と対話する事も触れる事も、それなりのリスクがかかる。黄羽のような子なんて、すぐに幽霊に付け込まれるわ。」
「・・・」
「またどこかで、幽霊と出くわしても・・・アナタは幽霊と関わらないって約束できる?」
「関わっちゃ、危ないの・・・?」
「そうよ。もう戻れなくなるかもしれないの、アナタの日常ってものに」
「・・・」
俺の日常・・・?
確かに昨日今日で、日常なんて言えない事が起きているのは自覚している。
本当は出会わないものに、俺は沢山出会っているんだ。
これを、非日常っていうのかな・・・?
「関わらない様に、出来るのかな・・・」
ちょっと不安になってお姉さんに聞いてみる。
俺、お姉さんに言われるまで全く気付かなかったんだ。
タクト君もあの男の人も、きっとカナちゃんの事だって・・・幽霊だなんて思わなかった。
「意識して関わらない様にする事はできるわ。でも、相手の方から関わろうとしてくるとアナタは相手を嫌でも見る事になるわ。霊感が急に無くなる事なんてないの。アナタは死ぬまで霊をその視界に移し出すわ。でも、話を聞かない様に努力すれば相手をある程度無視する事は出来る。」
「・・・・」
わからない・・・どうしよう?
お姉さんが幽霊は危険だって言っている訳はよく分かるんだけど、何か、俺でも分からない何かが後ろにあるように思えた。
俺はジッと小石が転がっている地面をみつめた。
「思い悩む事は無いわ。これは必然な事なの。」
「・・・?」
「私が思うに、アナタは幽霊と生きた普通の人との区別がつかないほどハッキリみえてしまっているのね。自力で区別をつけれるようになるまで、まだ時間が必要ね。その間に幽霊に付け込まれるような事があっていけないわ。」
俺が顔をあげると、そこにはもうお姉さんはいなかった。
「私がアナタを、黄羽を守ってあげるわ・・・」
でも、お姉さんの声はしっかりと聞こえてくる。
「お姉さん・・・?」
「下よ、下を向きなさい」
「した?」
言われるまま下を向くと、そこには黄色い瞳と2つの尻尾を左右に揺らす黒猫がジッと俺の事を見上げていた。
「お姉さん・・・?」
「黄羽、私の猫耳の事に疑問を持っていたわね。これが私の本当の姿なの。妖の力ってもので、私は人の姿に変身できるのよ。普通の人は、こういう事が出来る獣を化け物とかモノノケというのだけどね、私はそこら辺にいる化け物とは違って遠い昔の人からこの力をもらったの。だから、私はアナタのような人の為にこの力を使うの。わかるわね?」
「わかんない・・・」
なんか、急に方向性が変わった気がする。
話についていけないよ・・・!
「それでいいわよ。理解する必要なんてないんだから。とりあえず、今は現状を受け入れる事だけ理解しなさい。さぁ、帰るわよ」
そういうとお姉さん・・・黒猫は尻尾を左右に2つ揺らしながら俺の家に向かって歩き出した。
家に帰ったのはいいけど、猫の姿のままリビングまで普通に入って来たお姉さん。
いろいろと・・・つっこみたいんですけど・・・。
第一に俺ん家ってペットOKだっけ?
お姉さんって猫だったんだとか考えながら、すっかりぬるくなった牛乳を冷蔵庫の中に入れていると、リビングの扉がバンッと勢いよく開いた。
「兄ぃ、おそーーい!!どこまで買いに行ってんのよ!」
黄桜が怒っていた。
大分時間が経ってしまったけど、ちゃんと買ってきてあげたんだ。
黄桜とここで言い合ったって、遅くなった理由が幽霊とアレコレなんて見苦しい言い訳にしか受け止めてくれないに決まっている。
もう!!と、怒って腕を組んだ黄桜は、ソファにドカリと座って牛乳!と叫んだ。
持ってこいってことね。
「冷えてないよ」
「いいの!」
コップに入れて、ソファの前のテーブルに出すと一気に飲み干す黄桜。
それで、落ち着いたのかやっと気が付いたみたいだ。
「猫が居る・・・」
黄桜は目を丸くして、テーブルの下から顔を覗かせる黒猫のお姉さんを数秒見つめていた。
「黒猫とか、ちょーかわいい!!」
いきなり叫ぶと黄桜は一目で気に入ったらしい、嫌がるお姉さんを無理矢理抱き上げて膝の上に乗せて頭や背中を撫でまわす。
お姉さんは最初は驚いた様子だったけど、強引な撫で方に嫌な顔をしつつも大人しく黄桜の膝の上にいる。
「兄ぃ、いつからこの子、ここにいたの?」
「え、えっとついさっき?」
「かわいい~。うち猫飼ってみたかったんだ。ね、この子野良猫だよね、首輪無いし~。迷い込んできたのかな?なんでもいいから、この子ほしい!お母さんに電話して飼うって宣言しよっと!」
そう言うが早いか、猫を抱きかかえて電話の所まで行く。
それから猫のお姉さんが黄桜から解放されたのは夕方になってからだった。
やっと解放されたお姉さんは、疲れた様な顔をしてTVを見ていた俺の横に座った。
「あれは黄羽の妹?まるで嵐のような子ね。」
「ハハハ・・・・黄桜は俺の双子の妹だよ。」
「そう。疲れる相手だわ。お嬢様の私が相手してあげる事自体感謝してほしいわね」
あ、その路線は健在なのですね・・・お嬢様なお姉さん。
「兄ぃ~、兄ぃ~、猫ちゃんの名前考えたんだけどさ~?」
一旦部屋に戻ったと思ったらすぐに戻ってきた黄桜。
「猫の名前?」
「そうそう!飼うならやっぱ名前が必要でしょ?それで考えたの!!」
どーんと胸を張って得意気に言う黄桜を俺はお姉さんと顔を見合わせて見た。
「お姉さんの、名前って・・・?」
勝手につけて勝手に呼んじゃいけない気がして、お姉さんに声をかけて見るけどお姉さんは黄桜がどんな名前を考えたのか聞いてみたいようだ。
楽しそうに尻尾をソファの下に垂らして揺らしている。
「でも、いくつかあるのよね・・・だから、どれにするか兄ぃに決めてもらおうと思うの!」
「うん、それでどんな名前なんだよ?」
「1つ目はキュウイ、2つ目はマンゴー、3つ目はパイン、4つ目はココナッツ!」
フルーツ・・・?
一般的なイチゴとかではないのは、黄桜らしいけど・・・キュウイ、マンゴーね・・・なんか、俺個人的に猫につけたくない名前だな。あいかわらず黄桜のセンスが分からないから、1番まともそうで普通だと思える4つ目の名前・・・ココナッツを選んでみた。
そうすると黄桜は、やっぱりね!と喜んで、またお姉さんの頭を撫でまわす。
「アナタは今日からウチの猫ちゃん、ココナッツよ!」
「あら、可愛らしい名前ね」
黄桜が名前を言えばお姉さんはニッコリと微笑んで答えた。
俺にお姉さんの声ははっきりと聞こえているが、黄桜には聞こえていないみたい。
お姉さんが答えても、黄桜は知らん顔で一人で喜んでいる。
「お姉さん、黄桜には声は聞こえないの?」
「ええ、聞こえないわ。普通の猫と同じ、私がニャーって言った様に聞こえるの。黄羽は強い霊感があるから私の声がはっきりと聞こえるのよ。霊感があるとないでは、とても違うの。理解してよね?」
お姉さんは、黄桜を1度見てからまた俺と目を合わせる。
「それに私は経った今、名前がついたのよ?お姉さんだなんて、これからも呼んだら黄羽、アナタが変な子よ。私の事は、これからココナッツと呼びなさい。お嬢様らしい南国の果実ではないの」
名前、気に入ってくれたんだ。
でも、俺はやっぱりお姉さんをお嬢様って感じだとは思え切れていないみたいで・・・ちょっと笑いそうになった。
南国の果実・・・温かい所っていうのは、合っているのかな・・・・?
まぁ、とりあえず、我が家に新しい家族が増えました。
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