霊感と家族を見つけました。3。
「でも・・・あのスーツの男の人が幽霊って言うなら、お姉さんも霊感があるって事だよね。」
先ほどまで見ていたよれたスーツを着た男の人は何度も、立ち話をしている俺とお姉さんの隣を通り過ぎて行く。
お姉さんの話によると、おそらくあの男はここで死んだか、もしくは思い出深い場所でここから他の場所に行けれなくなってしまっている自爆霊・・・らしい。
首の片方が黒くなっているのも、靴を片方はいてないのも死んだ事が原因だとお姉さんは言いきった。
「そうね・・・私が霊感を持っているって言うのは当り前ね」
お姉さんは俺を見降ろすと得意気に笑って、顎に人差し指と中指を立てて置いた。
猫耳がピクリと揺れて、2本の尻尾も大きく左右に揺れる。
「てか、話戻すけど・・・お姉さんの猫耳とかどうなっているの?風で揺れているって感じじゃないよね・・・?」
急に霊感の話をされても俺にはよく分からないし、理解がなかなか出来ない。
あの男の人が何度も通り過ぎる事には不思議に思うより、今は不気味に思えてきてしまっているけど・・・本当に霊なのかどうか、どうもよく分からない。
男の人以外にも通り過ぎる人は沢山いるし、第一誰も男の人を見る人はいない。まぁ、靴を片方はいていないとかなんとかは、見ればすぐに分かる事だから目を会わせないようにしているのかもしれないけど。
そんな男の人よりも、今目の前にいる猫耳のお姉さんの方が気になる。
猫耳ってコスプレとか仕事とかで女の子が付けている物だと思っていたから、昼間――おそらくプライベートで――から堂々とつけているお姉さんの方が俺にとっては、取っ付き易い疑問点で不思議な事だ。
「・・・これは、とることは出来ないものよ。私って証みたいなものだから」
「証・・・??」
「分からなくていいのよ、少年には今後とも関係の無いものだから」
・・・そうっすか。なら、いいやっ!って簡単に思えるとは、自分でも思わない。
なんか違和感を感じるけど、これ以上は話してくれないみたいだから聞くのはやめた。
疑い深い男は嫌われるって言われたばっかだし・・・・・・・。
「それより、あの男をどうにかしないとね・・・思いが強くなったりして悪霊になられても困るし」
そう呟くとお姉さんは、また角から現れた男の前に立つ。
そうすると、男の人は自然と立ち止まって俯いていた顔をあげた。
「こんにちは、すぐに終わらせたいから直球で聞くけど・・・アナタ、どうして成仏しないのよ?」
ずいぶんと直球な・・・と、思ったけど男の人は虚ろな目をお姉さんに向けるだけで何も答えなかった。
「ちょっと、聞いているの?それとも話せないのかしら?」
「・・・カナ・・・・」
「え?何?」
「・・・・カナが・・・・・・居ない、んだ・・・・」
「カナ・・・アナタにとってそれは誰なの?」
「娘だ・・・公園に、あそぼ・・・・・・帰りに・・・・帽子が・・・・・・・・」
お姉さんが話しかけたら、途切れ途切れだけど話し始めた男。
でも、なにを言っているのか、俺にはよくわからない。
「娘のカナ・・・ね」
お姉さんは携帯を取り出すと、画面を操作し1つうなづいた。
「とりあえず、分かったわ。カナって子をさっさと探してしまいましょ。」
ポケットに携帯をしまうとお姉さんは、ひらひらと手を振って歩きだして行った。
お姉さんが、目の前からいなくなると男の人はカナ・・・カナ・・・帽子・・・と、呟きながらまたゆっくり同じ道を同じように彷徨いだす。
男の人の後姿は、少しかすれて寂しそうな背中をしているように見えた。
俺は、その場を離れるとお姉さんの後をついて歩いていた。
「少年も物好きね、何しに来たの?」
「うん、なんとなく。あの男の人は、カナちゃんって子を探しているんだね」
「そうみたいね。さっき携帯で調べたら、5年前にそこの公園で子供とその親が車に轢かれて死亡したって言う記事を見つける事が出来たわ。顔写真も載ってたし、あの男はその被害者で決まり。子供の霊の気配がしないって事は、そこで死んだのではなく病院に運ばれてから死亡したか・・・もしくは、さっさと死んで父親を残して成仏してるってとこかしら」
なんか、不謹慎だな・・・その言い方。
でも、あの一瞬と数少ない口数だけでそこまで推測するのはすごいと思う。
俺だったら何言ってるのか、全然分かんないままだった。
「じゃ、俺達もカナちゃんを探せばいいんだ」
「・・・考えが浅いわね。それに別に少年は付き合わなくていいのよ、霊と関わったっていい事なんて1つも無いんだから」
「べつに・・・でも、あの人困ってるんだよね?だったら力になってあげなくちゃ」
「・・・・漬け込みやすい体質のようね。昨日の夜も、不法侵入者に探し物って言われただけで財布の中身、全部見せて丸丸盗まれるんだから」
盗んだって自覚あるんだ・・・。
「少年、アナタには霊感なんて力は無い方がいいわね―――――」
お姉さんが小さく呟いた言葉に俺は上手く聞き取れなくて聞き返したけど、答えてはくれなかった。




