あんまりお下品な言葉は使わない方が
マティが俺の所に戻ってくると、その両手の皿の上にはイノシシにも似た顔の動物がこんがりと焼かれていた。
「食え?」
といいマティはテーブルの上に料理を置いた。
食べる気全くしないわ。なんならどこかの飲食店行って出されたら、皿をひっくり返すレベルだぞ。
まぁ辛抱強い俺だからひっくり返す事はしないけど。
見た目のグロテスクさと比べて匂いはめちゃくちゃいい匂いがする。
「早く食え」
マティは俺が中々食べないものだから催促してきた。
食えと言ってもどうやって食べればいいんだよ。あれか、素手か。素手だよな。
この島に箸なんてお上品な代物なんて置いてなさそうだし。
俺は腕まくりをして「よし」と一言呟き食べる準備をして、湯気がでているイノシシに手を伸ばした。
「あっち」
指し伸ばされた手を俺は思わず引っ込めた。
やっぱりあちいわ。
「早く食べろ!」
マティは余程短期なのか知らんが、さらに催促するように、求め声を荒げてきた。
いや、これ何の罰ゲーむ。
「ちょっと熱いから冷めてから食べますよ」
「早く食べろ!!!」
何かめちゃくちゃ怒鳴られたんだが。
俺はイノシシの顔を掴んだが、思わず熱さで落としそうになったが、何とか踏ん張り一口頬張った。
手は間違いなく火傷しているのは間違いないが、そんな事を忘れる位、味はこの世の食べ物とは思えない位美味しかった。
食事レポーターみたいになってしまうが、イノシシの中のイノシシや。
ちょっと自分でも何を思っているか分からなかったが、取り敢えずめちゃくちゃ旨いという事だ。
マティは俺の顔にご満悦したらしく、仮面を付けて俺の手を引っ張った。
「ちょ···ちょっとどこ行くんですか?」
この動揺はマティに手を繋がられてるからか、それとも今から向かう場所に動揺しているか、分からないが俺はとにかく動揺していた。
「着いたわよ」
と言われマティのがいる場所より前に送りだされると、俺の眼下に広がっていたのは、仮面を付けた数百名のクレア属が俺を見上げていた。
俺はその光景にゾワッと寒気がし、半歩後ろに下がっていた。
「これがお前の仲間だよ」
横になったマティが自信たっぷりの顔でドヤ顔を決めてきた。
男なら社長になることは誰だって一度は憧れる。
そして社長になったら部下を持つ光景はまさにこれなんだろ。
「今日から我等の仲間になった大池代だ!!!!!!!!」
マティはその光景に臆する事なく堂々と同じ部族に、俺を紹介した。
「「「「「「「「「おーーーーーー」」」」」」」」」
その声のボリュームに答えるように、クレア属は割れ鐘のような声を発した。
耳が鼓膜が破ける。
マティの部屋に戻ると
「これで儀式は完了した」
と仮面を外して俺に振り向き喋った。
まだキーンと耳鳴りはしていたがマティの言葉はしっかりと聞こえていた。
「何の儀式だったんですか?」
「お前が正式にこのクレア族に入る為の儀式だ。ここに来た連中は全員あの儀式をやっている」
別に対した感想もないので話さないでいると、マティから吸い込まれそうな黒い瞳を向けられた。
「もしお前が裏切るような事をしたら···」
マティは突然話しの途中で口を結んだ。
「裏切るような事をしたら?」
俺は導くように、その言葉を反芻した。
マティは結んでいた口をゆっくりとほどいた。
「その時は総力を上げてお前をぶち殺す」
マティの目からは冗談ではないといった目に変わっていた。
女の子がぶち殺す何て、そんな下品な言葉使っちゃいけません。
もし言うのならぶち殺して差し上げましょうがいいのではないだろうか。