馬小屋最高
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」
怒涛の叫び声はマティのクレア属にも届きそうな位、声を枯らして叫んだが火は無情にもつく気配がなく無駄な労力を費やしているだけだ。
思わずスタンドの力をだしかけたが、そんなもんもいるはずがない。
気付いたら陽は海の半分ほど沈んでおり時間は刻一刻と迫っていた。
間違いなくまたあの凍えそうな夜を経験したら凍死するのは間違いない。
いくぜ。これが俺の本気だ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!」
「いてー」
あまりの痛さに持っていた竹が砂浜に落ち、両手を確認すると皮がそこら中で破けていた。
ダメだ。こりゃ使い物にならん。というよりしばらく絶対安静だろ。この両手。
人生というのは突然思いがけない事が起きるものだ。それが今の状況だろう。もしかしたら本当に死んでしまうかも知れない。あーまぁ1度死んでるんだけど。
次もし転生する事が出来たら出来たら彼女1度でもいいから欲しかったな。
陽が海の底に沈み終えると薄暗い光景ご眼前に広がった。
頑張って火を起こす為に使っていた竹を砂浜に立て、流木を布団の様にして仰向けに寝転がった。
お墓も出来た事だしこれで誰がみても死んだ俺を土に埋めてくれるだろう。
夜の寒さと比例するかの様に俺の体温もみるみる下がっていくのを感じ、静かに目を閉じた。
来世は彼女が欲しいと思ったが彼女よりもカエルがいいと頭がよぎってしまった。カエルになりたいと思った理由は簡単。
カエルは変温動物なのでどんな気候でも対応できると思ったからだ。考えとしてはなんと浅はかなんだろうと思ったが、それでもカエルは捨てがたい。
「···起きないか!」
誰かが呼んでいる。
俺はその声に反応して意識を取り戻すと何故だがマティが目の前にいた。
「カエル!」
「寝ぼけるでない!」
思わず考えていた事が口にでてしまったらマティが間髪いれずに突っ込みを入れてくれた。
重たいまぶたをしっかりとあけるとマティの部屋にいた。
「どうしてこんな所に?」
「うるさい声が砂浜から聞いたからもしやと思ってな。それで思わず出向いたら、敵の襲撃もなくお前だけがいたということだけだ」
俺のスタンドが役にたったってことか。いや間違えた。大きな声が奇跡的な生還に繋がったわけだな。
「でもこれでマティとの約束守れなかったですけど」
俺は不安そうに声を漏らし、マティの表情を伺った。
「よい。お前に何かあればそれこそ私の恥だ。だから気にする必要無しだ」
マティは仮面を着けておらず、その端正な顔付きは相変わらず見惚れてしまうほどだ。
「それじゃあ今日はお言葉にあえてこの部屋に泊めさせてもらいますよ」
久しぶりの屋根付きでしかも布団が敷かれているこの場所で寝れるとなってか、妙に心が踊っている気がした。
「ならん」
マティは気のせいか頬を朱に染めながら喋っていた。
「え、なら俺はいったいどこで寝れば?」
マティは指を差して寝る場所を示すとそこは馬小屋だった。
俺は無言のまま馬小屋に足を運んだ。
「ヒャッホーイ」
俺は藁が山盛りに積んである場所に飛び込んだ。天国です。圧倒的な天国です。ここなら凍え死ぬ事もないし、何よりも屋根付きなのが嬉しいね。まさに幸甚の至りだ。
俺の臭いに察したのか、それとも自分の縄張りを取られたと思いイライラしているのかは分からないが俺の近くには数頭の馬の姿があった。
そのどの馬もが身体には傷がついていてどこかの馬と戦ったと思われる無数の傷だ。
1頭の馬が俺の顔に自分の顔を近付けてきた。自分の方が立場が上と言わんばかりに。
「ごめんね。君の縄張りを荒らしちゃって」
馬はそれが気に食わなかったのか顔を横に振り、俺の体を吹き飛ばした。
「ちょたんまたんま」
慌てて馬の制止を懇願したが馬は片足で土を蹴り上げ今にも襲って来る気配だ。
めちゃくちゃ怖いんですけど。しかも夜だからか真っ暗で黒い高さ3メートル位だからド迫力だ。だがこいつに突進されたら体はひとたまりもないのは確かだ。




