Episode2.ユラムの誕生 【2】
ユラムは保育園児のとき、踊ることや走ることが好きだった。中でも音楽に合わせて、身体でリズムを刻んだり、ダンスをすることが特技だった。
そして年中のとき、自分は大切なことに気づいてしまった。
何を?と聞きたい皆さん、何言ってるんだ?と聞きたい皆さん、今から話します!
「……わぁあ!上手だね!」
「そう?」
「うんっ!それに僕見たく女の子みたい!」
「な、何言ってんの……?」
ユラムは、偶然、出会った少年を褒めた。その少年はバケツドラムでリズムを刻む少年だった。創造性に満ちあふれていて、空き地を通りかかった人たち全員が、足を止めて聞いていた程だ。
やっぱドラムってカッコイイな!そうだよね!?とこの時、ユラムは聞きたくなるほどに、興奮してしまった。それは人生初めての感覚だった。
だが、その少年は雑誌はおろか、動画にも取り上げられていなかった。彼は一体何者だったんだ?まぁ、同じ県内だし、もう1度行ってみよっと。彼はそう軽い気持ちでいたが、もう会うことはなかった―――。
そんな彼に憧れたユラムは、一瞬で打楽器を始めようとした。だが、保育園には、打楽器と呼べるものが、小太鼓か大太鼓しかなかった。
親に打ち明けることも恥ずかしかった彼は、合法的に使える機会――年長のクリスマス演奏会まで待った。
そして運命の日が訪れる。この日は、彼にとって一生忘れられない日になった。
「……さて、今から、だれがどのがっきをやるか、きめます」
『はーーーい』
10月の下旬に、楽器の振り分けがあった。
黒板には、白い文字でこう書かれていた。その文字は美しく、先生の性格が垣間見えていた。
けんばんハーモニカ→8人
てっきん→2
もっきん→2
おおだいこ→1
こだいこ→1
彼の瞳奥が狙うは、おおだいこ、こだいこ、と平仮名で丸く書かれた文字のみ。身体は人より小さい彼でも、きっと鳴らす資格はある。
「じゃあ、鍵盤ハーモニカやりたいひとー?」
「「「はーい!!!」」」
「てっきんやりたいひとー?」
「「「「はーい!!!!」」」」
「もっきんやりたいひとー?」
「「「はーい!!!」」」
やはり、鍵盤楽器は人気で、ジャンケンの他、ピアノが得意な子に譲るなど、ユラムの知らぬ所で激戦は起きていた。
だが、彼には全く関係がなかった。狙うは小太鼓か大太鼓だったからだ。
(神様!!神様!!どうか、僕に僕に!!)
彼は、小さな手を、見えもせぬ神様に捧げる。その行動に、誰かがクスリと笑った気がした。
そして、運命のときが訪れた。
「では、こだいこやりたい人ー」
「「「「「はーい!!!!!」」」」」
だが、ここで想定外が起きる。小太鼓をやりたいという子が多かったのだ。ユラムは、大波から逃げる魚のように手を引っ込めた。
こうなったら、大太鼓にしよう。それにしても、太鼓は負けず劣らず人気だなあ。
結局、小太鼓は話し合いとなり、最後に大太鼓の集計となった。ここでまだ、1度も手を挙げていないのは、ユラムと組1番の体格の小さい女の子だけだ。
これなら勝った!大太鼓なんだから、少しでも身体の大きい人に叩かせるだろう!?
そんな甘い考えは、なかったことにされるとも知らずに、彼は先生の言葉を待つ。
「では、最後〜、おおだいこをやりたい人ー?」
その瞬間、ふたりが手を挙げた。
(やっぱり予想通り!!)
《確率はほぼ2分の1。選ばれないはずがない》
もう1人の解離した自分も、そう言っている。てか頭いいんだな、もう1人の僕!
「うーん……、大太鼓はたったふたりかぁ?」
すると先生が突然、迷い出した。
いや、何を血迷ってるんだ!はやく!はやく、僕に太鼓をたたかせろ!!
そう思ったときだった。
「……ま、まぁあ、神井さんで」
(なぁぁぁあああににぃぃぃ〜〜〜!!??)
なんと、先生があろうことか、勝手に決めてしまったのだ。いや、話し合いさせろよ!そしたら絶対に打ち伏せてたのに!!!!
そう思う彼を見て尚、この先生は僕を鍵盤ハーモニカにしやがったのだ。ああ、太鼓……やりたかったなぁ。
彼はそう残念がりながら、無念のまま、鍵盤ハーモニカを吹き続けた。そこでは流麗な指使い、そして曲を長く吹き続ける技術を掴めた。
だが機会すらないせいで、太鼓にも触れられずに小学校へと上がった―――。
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原作の吹奏万華鏡の本編も是非、読んでいただけたら嬉しいです!随時投稿中でございます!
次回もお楽しみに!!
【次回】ピアノの技術を獲得………




