Episode1.ユラムの誕生 【1】
9月某日。
ひとりの男の子が産まれた。
『……元気な男の子です』
そう言って、助産婦は両親へ赤子を見せる。
『……少し危なかったですが、無事に生まれて良かったです』
助産婦の言葉に、両親はこくりと頷いた。
『それで、名前はどうする?』
『ユラムとかは?』
『……ユラム?何か意味はあるの?』
母が、父へと問うた。
『……いや、先祖の名前と一緒だ。その男は、小原沢町でも特に優れた人だったんだ。何をやらせても1位、なんでもできる!そして長生きをして、103歳まで生きた偉大なお方だ』
『へぇぇえ』
『その先祖みたいに、何事にも優れていて、困らず、長寿してくれれば嬉しい』
『……なるほど。なら、そのユラムでいいわ』
結局、この名付けが後に怪物を生むなど、この時は知る由もなかった。
そうしてユラムが育った町は、小原沢町。町といっても、村長が覇権を握るような時代遅れの町だ。ちなみに、町名の由来だが、" 小さな野原に沢が流れている"とかいう理由らしい。なんとも適当である。
「ユラムー、起きてー」
「ううっ、おはよう」
ユラムは、両親の愛情を受け、優しい子供へと育った。だが、ひとつだけ悩みがあった。
「うーん、どうして、そんなに女の子っぽいの?」
「そんなの、僕が聞きたいよぉ……!!」
髪は誰よりも早く伸びるし、顔立ちも女の子だったことだ。神様は僕を女の子として作る気だったのか!幼い彼は心の中でツッコミを入れるだけだった。
《でも似合ってるし、可愛い♡》
だが、自分の中のもうひとりの自分は、べた褒めしている。二重人格を兼ね備えていた彼は、少し変わった個性を持ちながら育った。
そんなユラムの苗字は、小原澤。とても珍しい苗字だが、この苗字は、村長の倅である靖之が引き継いでいる。『沢』を『澤』にするか、『爽』にするか『触』にするか迷ったらしいけど、無難に『澤』を選んだらしい。こうすれば、澤を"ざわ"とも呼べるし。
てか、後者2つはナシだろ!ナシ!!ダサいどころの問題じゃない、『小原爽』や『小原触』は、もう苗字じゃない!
まったく、そもそも小原澤じゃなくて、『田中』とか『鈴木』とかにしてくれよ。そう思った幼少期のユラムでした。
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