6呪い
ーー異空間「原理の庭」ーー
そこはプレイヤーが集まる共有スペースであり、このゲーム唯一の戦闘不可エリアでもある
巨大な広場の中央には高くそびえ立つ時計塔が存在しており、どこにいても見えることからもっぱら集合場所として使われている
今日もログインしてきた大量のプレイヤーたちが個人の店を開いたり、パーティ募集をかけたりと、いつもと変わらない賑わいが繰り広げられていた
「……………………あれ?」
「どうした」
「いやほら、あれ」
指を刺した場所は時計塔の時計部分、その針の中央付近に表示されたとある数字
現状ほとんどがゼロの状態で表示され、実際動いたことがあるのは一桁目と二桁目
その一桁目がガコンッ、と動き出し数字が一つ減る
「うわ、マジで?!」
その後ガコンガコンと数字が二つ増えた後変化は終わった
さっきまで賑やかだった広場は静まり返り困惑と驚愕に満ち溢れている
「…………と……………………討伐者が出たぞおおおおおォォォォォォ!!!!!!」
「———————————————————!!!!!!!!!」
喧噪としか言い表せない大騒ぎ
「え、誰?「夜の星」は活動報告してなかったよね?」
「ちょちょちょやばいって」
「落ちまーす」
「フォオオオオオオォォォォォ!!!」
「祭りだあああああああ!!」
「あ、連絡ダイジョブっすか?いまちょっと…………」
「おい!取り合えず探すぞ!」
「見つけて交渉するぞ!」
広場は騒然としており冷静なものはほとんどいない
状況が飲み込めないもの
近くの知り合いと話し合うもの
ログアウトするもの
取り合えず騒ぐもの
どこかへ連絡を取るもの
「確認可能なやつらは生存してる!」
「最新のじゃない、照合は?」
「チョイ待ち…………No.8、初期ナンバーだ」
そんな中時計塔の根元で話し合う数人のプレイヤーたち
そこには所々に未知の言語が刻まれた黒いモノリス
数字だけは確認できる
「8…………どれだ?」
「だめだ、初期は見つかっていないやつらが多い」
「チッ、一体誰だ?こんな時期に…………」
「トップクランの連中は?」
「別件中…………あいつらじゃない」
「そうなると野良?」
「だな……………はぁ~荒れそう~」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
「…………………………………………」
森の中はいやに静かで現実感がない
身体が上手く動かない
頭痛がひどい
心臓が痛いくらい鳴っている
『IDEA MONSTERS BREAKING!!!』
『RESULT』
『貢献者』
『稀人:ヒカル MVP』
『稀人:アキラ』
『個体名』
『No.8 背後への追跡者』
『報酬が選出されます』
『色彩比率 1:1:1』
『ランダムに選定を行います』
『【死の踏駆音】を獲得しました』
リザルト画面が表示され一気に身体から力が抜ける
膝をついて、後ろに大の字に倒れこむ
「あ~~つかれた~~」
もう動けない
今までの人生で最も集中した戦いだった
前のゲームじゃなんだかんだ安定した戦いばっかりしてたから脳みその使ったことがない機能をフル活用してた感じ
実際三十秒がかなり長く感じた
正直賭けるには時間が短すぎる、なんだよ効果時間三十秒って効果がしょっぱいくせに短すぎだろ
HPはギリギリ残ってる、呪術のコストが払えなければ死んでたよほんと
魔力もない
EPはもう満タン
回復量の差ェ
「ヒカル!」
「あ~?」
「すごいよ!ハイドラッカーを、しかも一人で倒すなんて!本当にすごいよ!」
走ってきたアキラが身体を起こした俺の肩を掴んでぐわんぐわんと前後にゆらす
待ってステ差ってこんなに顕著に表れるの?赤子と大人くらい差があるんですけど
あ待ってちょっとHP減ったって
「うぇぇもうチョイ待ってデメリットでステが終わってるからヘタすると死んじゃう」
「あ」
「うぐっ」
ゆらしたまま離したせいでそのまま背中を強打
ぎり残ってる!ぎり残っている!
「ご、ごめん、だいじょうぶ…………?」
「ひ、ヒールくれぇ」
「か、回復薬は…………あった!」
なんとか死にかけの虫状態から復帰した俺は一先ずその場で休憩することに
一応点在する広場にはモンスターは入ってこないはずだ
「はぁ、死ぬかと思った」
「えっと、本当にごめん、どうかしてたよ」
「ああいや、アキラのことじゃない、ハイドラッカーのことだ」
「ああうん、凄まじい戦いだった、あんなのトッププレイヤーの戦いで見れるものじゃないよ」
「いや、さすがに誇張し過ぎだろ、他のやつらならもっと危なげなく戦っただろうし」
「そんなことない、あんな、自分を燃やし尽くすような壮絶な戦いができる人はそうそういないよ」
アキラは真剣な顔でこちらを見つめている
思ってもいない言葉をぶつけられ、動揺を禁じ得ない
「目の前で本当に殺し合いをしているんじゃないかって、そう思うくらいの気迫を感じたんだ」
「あ、ああ、そうか」
勢いが強すぎてさすがにちょっと引く
そんなに俺怖い顔してたんだろうか
いやまあ手を抜いたつもりは微塵もなかったけど
「そう言うなら、アキラだって凄かっただろ」
「え?」
「魔法で逃げ道を塞いでくれただろ、正直あれがなかったらそのまま負けてたからな」
「いやタイミングに関してはヒカルの合図待ちだったし、僕はほとんど何もしていないよ」
「いやいや、俺があのタイミングで大技出すつもりだって思ってないとできなかっただろ?遠いせいでこっちの詠唱も聞こえないし」
「それは…………まあ雰囲気で今かなって思っただけで、呪術を放つつもりだなんてのはぜんぜん」
「でも信じてくれたんだろ?俺が決着をつけるつもりだってことを」
「まあ、うん」
仕切り直したりせず、自分が前に出るって信じてくれたのはすっごい嬉しい
魔法があんなに早く発動されなければギリギリ届かないなんてこともあったかもしれない
「ありがとう、俺を信じてくれて」
出会って間もなくても仲良くなれた
そんな相手の信頼に応えることができた結果の勝利だ、これ以上嬉しいことなんてない
「…………………………………………え、っと…………」
「?」
「そ、そういえばこの後はどうするの?!流石に今日は攻略やめとく?!」
「え?あ~そういやそうだった」
「その状態じゃ厳しそうだしまた明日にしない?」
だいぶ横道に逸れてしまったが、本来の目的はこのエリアを攻略すること
今からやるにはもう遅いし、俺もこれ以上動きまわるのは厳しい
「なら、お言葉に甘えて明日にしても?」
「うん、こっちは大丈夫」
「じゃあまた明日」
「またね」
次に会う時間を決めてそのままログアウトする
景色が暗転、身体にかかる重力が変わり目を開く
現実世界へと帰ってきた
「……………ふぅ」
起き上がって硬くなった身体をほぐしていく
時計を確認すると時効はだいたい五時くらい
二時頃から始めたから三時間もログインしっぱなしだった
ベットから降りて部屋を見渡す
マンションの一室で家具はあんまりない、あるのは机にパソコン、冷蔵庫や食器棚といった生活に必要なものばかり、広さに関しては高校生の一人暮らしにしては贅沢すぎるくらいだろう
「…………………………………………よし…………」
意を決して洗面台の方へ
恐る恐るドアノブを開き壁に掛けられた鏡へと目を向ける
「……………………」
そこにいるのは長く真っ白な髪の幽霊
ではなく自分の姿
髪は腰当たりまで伸びきっており、目元はまったく見えない
ゲーム内では後ろで縛っているが、こうして見るとほんとに幽霊かと見間違えるくらい不気味だ
「…………大丈夫だ…………さっきのことを思い出せばこんなのぜんぜん怖くないだろ…………だから大丈夫……………………」
自分に言い聞かせるよう呟き続け目をつぶり、ヘアゴムで髪をまとめ始める
そうして目を開いた先には、髪色以外はゲームと瓜二つ
どう見ても女にしか見えない自分の顔が鏡に映っている
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………うっ」
登ってくる不快感と嫌悪感
寒気、痙攣、冷汗が止まらない
眩暈と浮遊感で自分が本当に立っているのかどうかすらわからなくなってくる
耐えきれず、のどに酸味のある味がこみ上げた
「——————————」
洗面台にしばらく顔を伏せた後、そのままズルズルと地面に座り込む
ヘアゴムはもうほどいてその辺りに転がっている
「はは……………………十秒、新記録だ……………………」
失敗したなぁ
食べられるだろうか、晩飯
ーーーーーーーーーー
翌日
「『剪涕の離罰』!」
「——————————!?」
「おっと」
場所は始まりの地最奥部ボスエリア
森を抜けた、岩壁のくぼ地
呪術の一撃がボスに叩き込まれ、時間差でその甲殻に大穴を開ける
その後、六本の脚を大きく振り回し周囲にいるものを吹き飛ばそうとするところを間一髪で回避する
「甲殻割ったけど、このあとどうするんだ?」
「うん、ありがとう。それじゃあ―——」
今戦っている敵は「ブラック・アント」と表示される巨大な黒い蟻のモンスター
全身が硬い甲殻に覆われており生半可な攻撃では傷一つつかない
甲殻の内側は弱点になっているみたいだが、一度でも破壊すれば行動パターンが変わり、露出部分に近づくやつを積極的に迎撃するようになる
既に二敗しており、アキラの復活回数を考えるとかなり不味い
アキラには何か考えがあるみたいだが
「は?マジで言ってる?」
「もちろん」
「なんかお前どんどん大胆になってきてないか?」
「昨日あんなの見せられて燃えないほうが変だよ」
「…………わかった」
「しっかり合わせてね!」
俺が前、少し離れてアキラが後ろの順で走り出す
近づいてくる俺たちを警戒し、前足を構えだす黒蟻
「——————————!」
「ッ!風よ」
ギリギリを狙って攻撃を回避
その後詠唱を開始して後ろを振り向き片膝をついて両手を組んで前に出す
「いくよ!せーのっ!」
「『ウィンド』!」
飛び上がったアキラの着地場所は俺の左手
装備を極力外して軽量化、俺が持ち上げるのに合わせて一気に飛び上がりさらに魔法で後押し
蟻は迎撃しようにも空中への対処には慣れていないのかそのまま背中に着地される
手に持った黒い持ち手のナイフを振り上げ、砕かれた甲殻の隙間に突き入れる
「——————————!?」
アキラが持っているのナイフは戦闘後に手に入れたハイドラッカーのドロップアイテム
性能は俺たちが持つ武器の中でトップクラス
序盤で手に入れていい代物じゃない
____________________
・「背斬のナイフ」
種別:短剣
ハイドラッカーが愛用していた大振りのナイフ
刃の部分よりも先端の方が使い込まれており、かの存在がこの武器をどのように使っていたのかが見て取れる
攻撃箇所が対象の背部である場合、ダメージが三倍になる
____________________
好都合なことに、四足以上の生き物は背中が上部を向いているため後ろに回り込む必要が無い
弱点状態になっていることも含め、追加効果で威力は凄まじいの一言
今まで元気に暴れまわっていた「ブラック・アント」はそのまま倒れ伏し動かなくなった
「どう?しっかり成功したよ」
「大丈夫そうならいい」
「このナイフがあって良かったよ、こっちはもう耐久値が限界で今にも壊れそう」
アキラが見せたのは刃がボロボロになった鉄剣
一回目で無理に甲殻へ攻撃をしかけたところもあるが、「ブラック・アント」が口から吐いたギ酸が武器耐久値を大幅に減らしてきたせいで、普通よりも高めに設定されていたはずの初期武器がまったく使い物にならなくなった時はどうしようかと思った
「そっちはどう?レアものを腰に下げた感想は」
「悪いとは言わないがまだ慣れないな、浮いてるし」
自分の左腰を見ると、腰から少し離れた位置に木刀が収まった黒塗りの鞘が浮いている
少々メタリックな質感をしているが鉄よりも軽く、何の素材でできているのか皆目見当がつかない
「思った通りだったな、ハイドラッカーの即死攻撃の秘密」
「まさかナイフの方じゃなくてそっちが本体だったなんて」
イデア・モンスターを討伐した場合、最も貢献したプレイヤーにはMVP報酬としてそのイデア・モンスターが使用しているフラグメントの中から一つが選ばれて習得または獲得する
一応効果はそのままではなく少し性能が落ちたものが渡されるが、ハイドラッカーの凶悪さを考えると問題ないと思ってはいた
____________________
・【死の踏駆音】
種別:武器アクセサリー
M:『背追機構』
ハイドラッカーが持つ『青』のフラグメント
付ける武器に合わせた収納具を出現させるストラップ型アクセサリー
浮遊位置は事前に設定可能
『背追機構』
周囲の目視可能な生物を目標に指定句を唱えることで対象を設定
対象を機構所有者が追跡する距離に応じてストックを獲得
発動句を唱えた後ストックを全て消費し、収納具から取り出した武器で行う次の攻撃の威力を上昇させる
ストック獲得距離:五メートルにつき一つ
威力上昇倍率:一ストックにつき一%上昇
対象指定句:ロック
効果活動句:セット EP50%消費
____________________
木刀の柄頭には三日月モチーフのアクセサリーが飾られ、よく見るとハイドラッカーの口元に似ている
「それは別にいいんだが、逃げ出すモンスター以外ではほぼ無意味なんだよなこの機構……………………」
「レアモンスターなんかは逃げ出す個体もいるみたいだけど、そういうのはそもそも足が速くて追いつけないっていうか…………………」
「……………………」
「……………………」
空気がちょっと重い
正直あれだけの苦労を経て手に入れたって考えると効果が限定的すぎて使いづらい
こう、なんというか見合っていないというか
「で、でも、抜刀系のスキルを習得するには鞘を持っているのが必須らしいし、鞘がアクセサリー枠で抑えられるところはかなり優秀だと思うよ。大抵は左手武器の枠を使わなきゃいけないから」
「…………まあいいや、そろそろ先に進もう。こんなに難しかったし、なにか起きるといいんだけど」
そういって岩壁の方へ進んでいく
どうやら扉になっているようだ
―——何か、忘れているような
「待って!まだ死んでない!」
アキラの声で思い出す
アイテムドロップの表示もモンスターが爆散してもいない
振り向くと、倒れたままの「ブラック・アント」の身体からドス黒いもやが漏れ出し、渦巻いている
「…………これは……………………?」
もやはどんどんと膨れ上がり、バスケットボールほどの大きさになると「ブラック・アント」の身体がポリゴン状に爆散
それを皮切りに、もやがもの凄い速さでこちらに向かってくる
「ッ」
咄嗟に地面に転がり回避
そのままもやは空へと昇っていき、今度は二つに分かれてそれぞれ俺とアキラに向かい、ゆっくりと周囲をぐるぐる回っている
アキラは武器を構えているが、どこか攻めあぐねている
こっちも武器を持って警戒しているが、どこか観察されているような気がして気味が悪い
「第二形態かなんかか…………?」
「……………………うわっ!」
「アキラ!!ぐっ?!」
気が付くと黒いもやがアキラの身体に絡みついていた
アキラの方に向かおうとするが、目を離した瞬間にこちらへと飛び掛かってきた
咄嗟に武器を盾にすると、もやが木刀に絡みつきゆっくりとその体積を減らしていくのがわかる
「なんか…………綺麗になってる?」
その後、黒いもやは木刀に吸い込まれるように消え去った
しばらく呆然としていると目の前に「ブラック・アント」討伐の報酬と「武器が呪われました」というメッセージウィンドウが表示される
「は?」
アキラの方も同じようにウィンドウが表示されており、困惑とした顔を浮かべている
特にケガとかは無さそうなので取り敢えず自分のステータスを確認する
____________________
NAME:ヒカル
JOB:旅人
所持金:402950コール
HP(体力):60/100
MP(魔力):72/100
EP(燃料):200/200
SP(霊気):15
STR(筋力):20
MAG(魔法干渉域):20
DEX(器用):24
AGI(敏捷):20
VIT(耐久):24
LUC(幸運):20
装備
右手:至不の木刀 付:【死の踏駆音】
左手:機構式TOS斥力銃
頭:飾り紐の髪留め
胴:巡遊の旅装
右腕:皮籠手
左腕:皮籠手
腰:巡回の旅装
脚:行脚のブーツ
[魔法]
『風魔法』
→ウィンド 1MP
→ウィンドスラッシュ 3MP
→ダウンバースト 7MP
[機構]
『斥力機構』
『背追機構』
[スキル]
『全身全霊』
・至不の木刀
呪いによって本来の姿から変質した姿
二つの呪いを内包している
さらにもう一つ呪いが込められている
____________________
なんか所持金がおかしい気がするが取り合えずスルー
『剪涕の離罰』と『不渡の呪い』は元々あるので問題ない
問題は追加された呪いだ
さらにスクロールして名前を確認
「…………不滅の……………………呪い…………?」
待った
名前からして嫌な予感がする
不渡が誰にも渡らないという意味で装備変更不可になったように、滅することができないという意味の呪いがこの武器に宿ったということは
「……………………………………………………………………………………ああ」
ふぐぅ
もう寝るしかねぇ
「ヒ、ヒカル?大丈夫なの?」
「ん」
地面に突っ伏したままウィンドウを裏返してアキラに見せる
うつ伏せで顔を見ることはできないがどんな顔をしているかは大体想像がつく
「これは……………………」
____________________
・『不滅の呪い』
世を呪う災いの一つ
それは決して滅びることはなく
あらゆるものを飲み込みいつか返り咲くことを願っている
一定時間耐久値が減少状態または耐久値がゼロになった場合、装備者の消費可能な数値を減少させ耐久値を最大まで回復する
____________________
不渡の呪いと組み合わせるとあら不思議
手元から離れなくて自動的に元通りになる棒切れの完成
「うへへ、地面って広くておっきいんだな~」
「ちょ、ヒカル?!」
「なんで毎回こんなことになるのかな~あははは」
調子乗って呪いとか上手く扱えるだろとか思ってたしな~
別ゲーでも変なところでやらかしてたからな~
クエストアイテムをうっかり落としてボスに食われて超強化とか~
「腕切り落として義手でも付ければ呪い消えない?試すだけならタダかも」
「待って待って!一応義手は存在するけどそこまでやる必要ないから!ちゃんと救済あるから!」
「え、マジ」
「うわぁ!」
ガバッと起きて両肩を掴んでぐわんぐわん
ほら喋って、その口からこの嚙み合い過ぎてちょっと怖いこの木刀をこの手から引きはがす方法を早く教えてください
「ええと、この先抜けると最初の都市があるんだけどそこの教会にいる聖女様とかが呪いの解除とかしてるから大丈夫だからそんなに振るのはヤメテ」
「……………………聖女?」
聖女 聖なる女性
特殊な修道服を着て教会で祈ってたりなんか聖騎士とかが守ってたり祈ると不思議な力が起きたり、なんかそんなイメージがある
あとだいたいひどい目にあってたりする
「………………………………」
「正気に戻った?」
「ああ…………解呪ってのは直ぐにやってもらえるのか?」
「えーと、教会に貢献してると解呪してもらえるけど、流石に今行って直ぐってのは無理かも」
「そっか、いや解呪方法がわかっただけでもよかった。教えてくれてありがとう」
「…………」
すんごい変な目で見られるんだけどなんで?
「……………………そういやアキラの方も見てもいいか?もしかして同じように不滅?」
「…………僕の方はこんな感じ」
____________________
・揺らめく篝火の指輪
種別:腕部アクセサリー
表面に炎のデザインがされた鉄製リング
呪いを帯びている
補助DEX +0.2
『滞留の呪い』
世を呪う災いの一つ
それはただ押し留め
全てがそこにあり続けることを願っている
装備者の魔法命中時威力がMAG範囲内に応じた補正を得る
MAG:1~20% 50%上昇
MAG:21~50% 変動なし
MAG:51~100% 50%減少
____________________
「へぇ、結構使える効果してないか?」
「うん、でも僕のビルドだとあんまり近距離で魔法は撃たないんだよね」
「ならどうするんだ?売るのか?」
アキラは指輪を手に持つと俺の方へ差し出してくる
「…………もし良かったら使ってくれない?」
「え、俺?」
「うん、協力したらお礼するって言ったから。なんか要らないもの押し付けてるみたいで申し訳ないけど」
呪いの指輪を貰うとか字面的に不穏だけど、性能に関してはかなりありがたい代物だ
現状武器が変更できない以上、火力が上がる装備が手に入るのを断る理由はない
「アキラが良いなら、ありがたく貰うことにする」
「…………うん、ありがとう」
「こっちのセリフだ、そろそろ先進もう」
目に入るのはかなり巨大な岩壁
近くに寄ってみると岩場の一部が両開き扉になっていることがわかる
少し動かそうとしてみるが案の定びくともしない
「そっち頼む」
「まかせて」
力いっぱい動かし、五分ほどかけてようやく人一人分の隙間ができる
中を確認してみると
「なんというか…………」
「普通の部屋、だね」
扉の奥は十畳ほどの広さがある正方形型の部屋で、両壁には本棚、正面には机、すぐそばにはベットが置いてある
部屋の中央からは俺の腰当たりまで細長い棒が伸びており、それ以外は何もない
奥の壁には今通った扉と同じものがある
「どうする?」
「取り合えず色々漁ってみよう、何かあるかもしれないし」
アキラは本棚とベット、俺は机と柱を調べることになった
机の上にはカップが置いてあり中は黒ずんでいる
誰かがここで暮らしていたんだろうか
それにしては物が少なすぎる気がする
次は引き出しを開けてみる
中には小さな本が収められていた
「お」
____________________
・ボロボロの日誌
かなり状態が悪い
無理に開こうとすれば崩れてしまいそう
____________________
壊れないように慎重にインベントリへ入れる
他には特になにもなさそうなので部屋の中央へ
「これは、剣?」
地面に突き刺すように置かれたボロボロの剣
棒のように見えたのは鍔が両方折れていた所為みたいだ
全体を見てみると、錆とは他に妙な汚れがあることに気づく
「もしかして人切ったやつかコレ?」
わかりやすいのは持ち手の部分、がっつり指の形が残っている
掴んで上に引っ張ると、思いのほか簡単に抜けた
「あん?」
____________________
・
ただの剣
____________________
アイテム名が無い、めっちゃ怪しい
詳細欄に関してもただの剣としか表示されていない
何かのクエストアイテムなのだろうか?
「そっちはどう?」
「ん?ああ、こっちはだいたい終わった」
アキラの方も調べ終わったみたいで互いの情報を交換
「…………なにこれ」
「ただの剣」
「いやそうなんだけど…………」
不服そうな顔してるがこっちもわからん
アキラの方は…………鍵?
____________________
・小さな鍵
通常の鍵とは違い先端がない
____________________
「変なのしかない」
「日誌も読めないね」
思ったよりアイテムが無かった
攻略の難易度に比べて分かりやすく強いってのがない
「これ、どうする?持ってくのか?」
アキラは少し悩んで、それぞれのアイテム詳細をスクショしていく
「僕の方は記録が残せればいいからヒカルが持ってていいよ」
「俺が?」
「うん、ヒカルなら偶然なにか見つけそうだし」
「そうか?運が良い自覚はないんだけど」
「呪術」
そういやそうだわ
確か普通はただの呪いばっかりで呪術が付くことは滅多にないんだっけ
「じゃあ次はあっちか」
奥の扉へ向かう
扉を開いて先に進むと
「外…………初期エリアを抜けたみたいだね」
出た先は人の手入れが行き届いた石畳の小道
道の両脇には柵が掛けられており、その奥は木々が生い茂っている
「ここがエリアスキップ後のセーブ地点であってるのか?」
「そうみたい、写真で見覚えがある」
「そうか……………はあ~お疲れ~」
「うんお疲れ様」
良かった、この後さらにモンスターと戦いますとかなくて
弾はもう無いし、「ブラック・アント」より強いやつとか絶対無理
「そういやエリア攻略までって話だったけどどうする?この後なんか予定とかあるのか?」
「ごめん、今日はこれからいろいろあって…………エリア攻略に関しても掲示板に報告しないといけないし」
「そっか、んじゃまあフレンド登録だけして今日はお別れだな」
「うん、それじゃ」
登録を終え、アキラはログアウト
粒子になって消えていった
「さて」
ここからは一人
やれるだけやってみるか




