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20/31

20現実/幻想はあまりある



冷たい、石畳を指で引っ搔く

割れるような頭痛に苛まれながらも倒れた身体を無理やり叩き起こす

地面に見えるものは、大地に敷き詰められた白い雪

空を見上げれば、隙間なく埋め尽くされた曇り空

視界を正面に向ければ、しんしんと雪が舞い落ちている


「……………………神聖歴、401年」


先ほど見た記憶

自分というものが曖昧になるほど長い、長い記憶だった

酷く見覚えのある広大な都市

シロと、その信奉者たちが再建したかつての都市


「十二月三十一日……………………国葬の日」


たくさんの参列者たちが遠くに見える高台に祈りを捧げている

彼らは皆偉大な神との別れを悲しんでいるのだ

再現されたかつての日

シロが死ぬこの瞬間に、きっとおあつらえ向きなのだろう

ふざけてる


「王都、カラルナディア」


どうして死なないといけないのかわかった

何で泣いているのかもわかった

けど、俺に何ができるか

神の力をシロから引きはがす方法なんて知らないし、シロが暴走しないようにすることもできない

方法もないまま、こんなところまで追いかけてきた


「……………………でも」


一歩、歩き出す


「「「「「「「「!!」」」」」」」」


周囲にいる参列者たちが一斉にこちらへ顔を向ける

さっきまでの悲しみに暮れる雰囲気が嘘のように周囲は静まり返り、目の前の異物を注視してくる

その顔は暗い闇の中を表すかのように真っ黒な穴が広がっていた


「なんだよ…………別にいいだろ」


一斉に襲い掛かってくる大量の人間たち

先ほどまで敬虔に祈りを捧げていた姿とは打って変わって、両腕を伸ばし招待されていない不届きものを排除するため行動する

迫る大量の手

そんな普通なら絶対絶命の状況で、一体何ができるって?


「……………………邪魔、するな!」


全力疾走体当たり、吹き飛ぶ人波

彼らはそのまま壁や地面に叩きつけられ、掴んだ手は力任せに引き離される

それも当たり前だ、なぜなら彼らのステータスはほとんどが()()()

加護も持たない一般の人間が稀人のステータスに敵うわけもない


「……………………何もできなくたって」


走る、走る、走る

全てが白く染め上げれられた都市を全力で駆け抜ける

長く広がる大通りを

そびえ立つ壁の上を

神に出会うための巡礼の道を

視線のその先、かつての儀式場

シロがいるであろうあの場所へ


「ッ!…………来た」


視界の端から飛んでくる大量の矢、それを避けつつ眼前にいる集団に意識を向ける

全身甲冑姿、この都市を守るかつての騎士たち

シロに近づく俺を止めようと、ワラワラと沸いて出てきやがった

包囲網を組まれ、大量の剣が突きつけられる、だが


「ただの鉄の塊で、殺せると思うなよ!『ウィンド』!!」


足裏で魔法を発動

俺に無詠唱はできなかった

唯一できたのは詠唱の短縮

魔法に共通する最初の一節、それを詠唱せずに発動できるようになった

不格好なことこの上ないが、この戦い方をする上では一切問題はない

加速し、一気に騎士へ肉薄

かつてシロは言った

稀人は痛みを感じない、死んでも生き返る、骨が砕けようと、肉が裂けようと、稀人は止まらない

人が持つ絶対的な恐怖を克服した戦うために生まれた存在であると

拳を握りしめその懐へと叩き込む!



―————■■!!



ゴキリッ!!と腕から嫌な音が聞こえた

殴った騎士だけではなくその後ろにいるものたちまで吹き飛ばされレンガの壁に埋まる

甲冑は完全に砕け散り無残な姿が広がっている

腕にかかる異様な痺れ、視界の端を見れば最大HPが一割ほど削れているのがわかる


「あ、ぐ……………………まだまだぁっ!」


魔法の連続使用

視界が一瞬で何度も切り替わり、体勢が崩れるのを何とか制御して駆け抜ける

空いた包囲をくぐり抜ける

周囲に組まれた荷物を崩し、追いつかれないよう道を塞ぐ

坂道を駆け抜け儀式場の真下までたどり着いた

このまま行けば直ぐにっ―――


「……………………うっ?!……………………くっそ、お前らは……………………」


腹部をカスった投擲用の短槍

周囲を取り囲むのは鎧を纏った純白の正装

今はやらかした奴がいた所為か一人減っているが、こいつらはシロに加護を与えられ神を守護する役目を賜った十人の人間


「…………神聖騎士」


顔に真っ黒な穴が開いて表情は読めないが、きっと怒り狂っているんだろう

シロが自身を犠牲に皆を救おうとしている時に俺みたいなやつがまた現れてるんだから


「……………………我ら神聖騎士、この名と誇りを胸に悪を断つ…………だっけ」


あいつが苦しんでいる時に何もしなかった連中

仕方ないってわかっていても、どうしても許せない


「何がっ!神に仕える高潔な騎士だっ!」


正面にいる騎士に殴りかかる、盾で受け止められ左からまっすぐ切りかかる別の騎士


「神神神って押し付けてばかりっ!」


右腕付近で魔法を使用

左足を軸に一気に回転、飛び上がって剣を蹴り弾く


「あいつの気持ちを!少しでも考えたことがあるのかっ!」


着地同時に押し込まれてくるさっき殴った盾を魔法の加速で回避、体勢を崩した左の騎士の頭に取り出した銃身を叩き込んでそのまま発砲、赤い血が地面に飛び散って倒れ伏す

まずは一人


「ッ!くそッ」


さらに別の相手へ向かう瞬間、騎士の後方から飛んできた短槍が左腕に突き刺さった

その所為で銃が手から飛んでいく

焦って拾いに行こうとした瞬間別の騎士達が盾を構えて突撃


「ぐっ?!………………あ、く…………『ウィンド』!」


衝撃に全身が吹き飛ばされるも、空中で魔法を使い身体を浮かせて体勢を確保しようとするが


「がっ?!」


近くにいた騎士に肩からバッサリと切り裂かれる

地面を転がり、立ち上がった瞬間さらに突き刺さる大量の剣


「あ……………………」


全身の痺れ

意識が遠のく感覚

HPが


「ッ!逆巻き吹き下ろせ!『ダウンバースト』ッ!」


頭上から発生した暴風が地面に落ちた瞬間周囲にまき散らされ周囲にいた騎士たちが後退する

少しでも風の影響を受けないように身を屈め、息を整える


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……………………」


相手の剣がただの鉄剣なのが幸いした

HPはまだ残っている

加護の効果はシンプル

鍛えれば鍛えるほどステータスが上がるようになる

装備を着ないとステータスが上がらない稀人とは違いあいつらは理論上いくらでも強くなれる

向こうの筋力ステータスは俺よりも少し高いくらいに思える


「……………………この」


突撃してくる一人の騎士

あいつらは今まで何度も戦場に向かい、人やモンスターと戦ってきた歴戦の騎士

素手のままじゃまともにやり合えない

このままじゃ、負ける


「……………………もう…………」



―————武器



「……………………とっくに…………」



―————武器ッ



「……………………時間だろ」



―————武器ッ!



「いつまでほっつき歩いてんだっ!!三十秒なんてもうとっくに過ぎてんだろうがっ!!」


騎士の剣が叩き込まれるその瞬間、右手に飛びこんでくる呪いの木刀

時間がゆっくりと流れるような感覚

手に持った木刀を剣の側面に合わせる

力が均衡し、少しずつズレる剣

流れる攻撃、逸れた剣線

シロが最も得意とする、切り流し


「……………………」


響く金属音

地面に突き刺さった鉄の剣

固まった騎士の首元に伸ばした左手から魔法が飛び、騎士が倒れる


「二人…………そしてっ!」


木刀を掬いあげるように振り、頭上へと弾かれる槍

落ちてきたところを左手で掴みその場で回転

魔法で加速、遠心力を乗せ全身を使っての投擲


「さっきからちくちくウザいんだよっ!」


―————■■!!


脚、肩、腕にかかる負荷、痛みの代わりに痺れが全身を襲いひどい不快感がやってくる

最大HPがさらに三割減る


「三、人!」


固まった敵を抜け、投げた槍が空いた顔の穴を貫通するように命中、さっきから槍を投擲していた騎士が倒れる

騎士の癖に飛び道具とか使いやがって


「……………………はっ…………なんか固まってるみたいだけど、そんなにおかしいか?俺がシロの剣を振るったのが」


あいつらほどシロの剣技を見てきた奴らはいない

だからこそ理解できないはずだ

かつての記憶の影だろうと、あいつらにとって今は儀式の日

見慣れない人間が神と同じ剣を使う、混乱しているんだろう


「だったら、もっと理解できないものを見せてやる」


木刀を鞘に納める

浮いている鞘、これのおかげでどうも接触してない判定になるらしい

この一年で偶然発見した


「夢想、差し込む木漏れ日、安寧の日々」


右腕からにじみ出る黒いモヤ

ああ、きっと俺は呪われているんだろう


「眠る『私』」


右腕を覆い隠し、HPが減る

この胸に灯るドス黒い思い


「永遠の楽園」


本当は、あいつを渡したくなんてない

この思いが消えることはない


「されど汝———」


俺とあいつの繋がりを切り裂くすべてに、罰を与えたいと


「———咎を刻む」


詠唱を終え走り出せば即座に身構える騎士

俺が進む方向を半円状に囲み、盾を隙間なく構える

あいつらは知らない、なぜならこの時代に呪い、つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……………………さあ、行くぞッ!」



―————この剣に斬れるものはない、なぜなら刃は存在しないから



木刀を掴む、モヤが充填されその刀身を黒く染め上げる



―————この剣を振る必要はない、ただ伸ばして構えるのみ



魔法だろうが銃弾だろうが仕留められるのは一人、盾で余波を防ぎ誰か一人が犠牲になった瞬間周囲の五人ですり潰すつもりだ

だが、しっかりと盾を合わせたことが仇になる



―————この剣はただ相手に触れ、呪いを与える



盾を構えたその中心、抜き放たれた刀身を携え軸足をもとに一回転



―————■■抜刀



騎士たちの盾に刻まれた一筆書きの黒い線

触れた音すらない、ただその表面を撫でただけ



―————ゆえに文字通り



「『剪涕の離罰』」



―————撫で斬りだ



瞬間黒い線を中心に衝撃破が発生

盾は一瞬で砕け散り持ち主もまたそれに巻き込まれる

吹き飛ぶ騎士、舞い散る欠片たち

モンスター相手なら何回命中させても倒せなかったが、人間、しかも稀人の初期ステータス程度なら耐えられるものではない

威力は分散しているため死んではいないが、気絶はしているだろう


「…………くっ……………………」


痺れとめまいから身体が倒れそうになる

HPはもう二割もないし、最大HPだって元々の三割もない

木刀を鞘に納め、周囲を見渡す


「けど…………もう他には何も……………………」



―————ピシッ



「!」


上空から何か不気味な音が聞こえてきた

見上げれば曇り空に、巨大なヒビのようなものが走っている


「まずい…………」


もう時間がない、急がないとこの場所が崩れる

間に合わなくなる


「早く、行かないと…………」


魔力はもう無い

全身はボロボロで上手く歩けない

それでも何とか身体を動かして儀式場の方へ



―————ピシピシッ



空が割れる、大地も、この都市も、何もかもが消えてなくなってしまう


「シロ…………俺は…………」


長い登り坂を歩き、ようやくついた


「……………………シロッ!」


荘厳な雰囲気を感じさせる純白の儀式場

周辺には祭壇と長い柱がいくつもそびえ立っており、地面に刻まれた神情裁決を行うための紋様その中心に、白い髪の持ち主が背を向けて立っている

重い身体を無理やり動かして、そのすぐそばまで近づいた


「悪いな、しつこくて……………………でも」


シロは背を向けたまま俺の言葉に対して微動だにしない

もしかしたらもうあきれ果ててしまったのだろうか

あんなことをされたなのにそれでも追いかけてきたんだから


「俺はお前に、言いたいことが――――—え?」


振り向いたシロ、その手には青い半透明の剣

燐光が煌めく

これは、間に合う、か?

一瞬で振り抜かれた剣は俺の左腕を肩から切り飛ばした

最大HPが削れ、さらにHPは残り一


「あぐっ?!…………シ―——!」


回し蹴りが腹部へ命中し背後の柱に叩きつけられる

膝を付きそうなところをギリギリで耐える

視線を向ければ正面には種を構え背後にクロスフラグメントを伴ったシロ



「—————こ■にある■■意■なき■」



聞こえてくるのは、女男老人子供、すべてが混ざり合ったかのような不快なボロボロな声



「—————■こに■■のは名■■き■」



その顔には、シロが自分の存在に対する疑問を示すかのように黒い穴が深く深く広がっていた

まるで誰でもないかのように

あらゆる人間の顔を貼り付けた結果、真っ暗に染まったかのように

身体はもう限界で、立っているのもやっと



「—————■■■あるのは夢■■糸」



暗い穴の奥に一瞬見えた白い影

きっとそこにいる



「—————天地■今、この■に■■」



胸元へと迫る杭

避けられない

この場所は二世の狭間とは違って死んだらきっとそのまま元の場所へと戻るのだろう


「……………………なあ、シロ」



伸ばした右手は―――



「ここまできて逃げるなよ!『セット』!」



―——武器を掴む



死の踏駆音(デットプェダー)】起動

あの時穴の前からずっと『ロック』は続いていた、ストック数は数えきれないほどある


「—————!」


鞘から抜き放たれた月光と、輝く杭

刀身と先端がぶつかり合いその中心から強烈な衝撃波が発生、点在する柱、儀式場の祭壇、地面に刻まれた紋様までもが吹き飛ばされる


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」



―——ミシッ



拮抗する武器、木が軋む音が聞こえてくる

シロの持つ杭は、イデアモンスターの力を三種合わせることで使用できる特殊な技

巡り呑む浸種(ロウアクィード)】に【忘血填(ストラメリス)】を使い成長させ木が【空定ノ糸(イズローシャ)】を強化、デメリットでステータスが全て一になっていても威力がさらに上昇するだけ

かつて神を殺した、シロ最強の一撃



―——パキッパキパキ



木の割れる音

どれだけ強化しても結局はただの木、その威力に長時間耐えられるわけがない


「届けええええええええぇぇぇぇぇ!!!」



―——バキンッ!



散らばる木片


振り切られた木刀


健在な、杭


「……………………ッ!」


元々の性能が、違う


稼げた時間はほんの数秒


身体をのけ反らせ、少しでも長く生き残って


「間に合っ―——」

「《■つ■見■■か(■ーヴァ・イ■■ン■)》」



―——トンッ



「……………………?」

「———ったあああああああ!!!」


無傷の身体

刺さらなかった杭

効果時間終了が間に合った『全身全霊』

驚愕したのかシロの身体が固まる

胸に当たった杭を掴んで引っ張った

互いのステータスは共に一


「?!」


【空定ノ糸】の効果はステータスの差による威力上昇

逆にステータスがまったく同じ相手ならダメージは一切入らない

杭を掴んだまま体勢が崩れ、すれ違うように俺の右側で前傾姿勢になる


「いい加減!!」


暗く淀んだ穴、その向こう側に


「人の話を聞けええええええ!!!」


勢いよく右手を突っ込んだ



ーーーーーーーーーー



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■まぶしい■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



「え?」

「捕まえたああああああああ!!!!!」



ーーーーーーーーーー



―————!!



空間の割れる音

引っ張り出した白い影

地面が崩れ二人揃って空中に投げ出される

都市も、人も、全てが消え去った真っ白な空間をただ延々と落ち続ける


「ヒカルッ?!どうして?!」


シロが声が聞こえる

時間はさほど経っていないはずなのにひどく懐かしい気がしてくる


「私は―――」

「神の力と一緒に消滅するんだろ」

「!」


シロの身体が強張った


「見たんだ…………シロがどう生きてきたのか、今までどう思っていたのか…………全部」

「…………………」


シロはただ黙って、俺の言葉を聞き続ける


「もっとシロと一緒にいたかった」


伝える


「なんてことのない普通の日常を続けていたかった」


初めて、当たり前にある日常がこんなにも尊いものだって気づいた


「あの時戻ってきたのだって、もう一度会いに来るって伝えるためだったんだ」


扉に背を向け、走り出したあの時

もう失いたくなかった、後悔したくなかったから


「どうして、お前なんだ」


最初に出会った時からずっと、ペースを乱されてばっかりだった

綺麗で、凛としていて、誰も触れたことのない新雪のような見た目

何でもできそうなのに、どこか抜けていてほっとけない

しっかりとした芯があるように見えて、意外とメンタルは弱い

シロを助けて、シロに助けられて

この一年を過ごしている中で、気づけば自分の中にあった心の壁がどこかにいってしまっていた


「……………………私だって」


背中に回された両腕に力が入る

強く、強く抱きしめられ、離れない


「私だって!もっとヒカルと一緒にいたかった!」


今まで聞いたことのない声量で叫ぶシロ


「もう全部諦めてたのに、そういうものだって、私を見てくれる人はいないって、一人で生きて死ぬしかないって……………………なのに…………」


今までずっと我慢してきたものが少しずつ零れだしてくる


「最後に、会えた」


その言葉に、どれだけの思いが込められているのか


「楽しかった、嬉しかった」


俺は、よく知っている


「死にたくない」


震える声


「でも、殺すのはもっと、いや……………………みんなに、生きていて欲しい」


泣いているシロ

進んでも、逃げても、結果は同じ

恐怖に苛まれながら、それでも人が好きで殺したくないと言うシロ

それを簡単に否定することはできない

だってシロは、俺なんかよりもずっとずっと長い時間をかけて考えに考え抜いて決めたんだから


「もう、ヒカルとは、会えない……………………ごめんなさい」


何もできない俺に、ただ一つできること


「最後まで傍にいる」

「……………………ヒカル」


だって、ずっとシロは孤独だった

たくさんの人に囲まれて、憧れや称賛の声を浴びようと、それでもシロは一人だった

自分という存在が理解できず、他者の目に自分は映らない

神という存在への、一つの期待

あの日二世の狭間に飛ばされる時だって、誰かが一緒にいてくれていれば、シロの心は少しは救われていたはずなんだ

だから


「忘れない、何があったって」


時間が来た

シロが光の粒となって消えていく


「忘れたって、絶対思い出す」


空に飛んでいく輝き、真っ白で、綺麗で、儚い


「お前は、ずっと俺の中で生きているんだ、消えたりしない」


軽くなる身体に比例するように、抱きしめる力はどんどんと強くなっていく


「だから……………………だからッ!」


言わなければ、今度もちゃんと



「……………………じゃあな、シロ……………………お前に出会えて、本当によかった」

「……………………うん」


別れの言葉を伝える

俺はいつも、大切な人に伝えることができなかったから


「……………………ねえ、ヒカル」

「……………………どうした」


シロはもう半分が消えている

腕の力も、弱弱しい


「……………………笑って」

「…………笑う?」

「……………………だって、お別れする時…………みんな泣いていた…………から」

「……………………」

「……………………最後は、笑って…………お別れしたい」

「…………俺がお前のお願いを聞かなかったこと、あるか?」


こんな状況でどんなお願いかと思ったら、難しいこと言いやがって



「……………………これで、いいか」

「……………………ふふっ……………………変な、顔」



俺は今、笑って(泣いて)いるのだろうか



「……………………ヒカル」

「…………ああ」



シロは今、泣いて(笑って)いるのだろうか



「……………………私」

「……………………」



その答えは、いま目の前にある



「……………………今まで生きてきて……………………よかった」



きっと、一緒だ



ーーーーーーーーーー





















ーーーーーーーーーー



「……………………あ…………れ………………?………………」


『ヒカル選手、次の試合が開始されます控え室にて待機をお願いします』


部屋の中のスピーカーから無機質な電子音が響く

ソファーに座り、呆けた顔をするヒカル


「えっと……………………俺、何してたんだっけ?」




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