第7話:闇に潜む影と、謎の神獣(第2節)
エメリアは、今日も古文書保管庫にいた。そこは、何十万冊もの古文書が整然と並ぶ、王族の中でも特に博識な者だけが立ち入ることを許された、第一王族専用の壮大な書庫だ。
彼女は、セレスティアから預かった三つのアイテムを、慎重に閲覧テーブルの上に並べる。古びた地図、奇妙なナイフ、そして今は冷たく鳴りを潜める運命の石。彼女の好奇心が、静かに、しかし熱く燃え上がっていた。
「…これは…」
エメリアは、そのアイテムの一つひとつを、まるで触れることさえも憚られるかのように、そっと指先でなぞった。彼女は、膨大な知識の蓄積から、これらがただの遺物ではないことを直感的に感じ取っていた。
エメリアは、膨大な古文書の山から、目ぼしいものを数冊選び出し、次々とページをめくっていく。古文書には、この世界の成り立ちや、失われた文明についての記述が記されている。
そして、日も傾きかけた頃、彼女の指先が、ある古文書の一節で止まった。そのページには、異邦人がもたらしたとされる奇妙な物品についての挿絵が描かれていた。描かれているのは、見慣れない文様が刻まれたナイフと、まるで闇をを閉じ込めたかのような黒い石。そして、それらのアイテムが、この世界の「呪い」と深く関わっていることが示唆されていた。
「この記述は…」
エメリアは、さらに別の古文書を手に取り、その記述を読み進めていく。すると、そこには、遥か昔、この世界に呪いをもたらした「呪いの源」を示した地図と、その源の封印を解くための「鍵」についての記述が記されていた。
「お預かりしたアイテムのことに違いないわ」
彼女は、セレスティアから預かったアイテムを、改めて見つめた。古びた地図は、その「呪いの源」を示しており、奇妙なナイフは、その封印を解くための「鍵」に酷似している。
「…これらのアイテムは、この世界の呪いの根源に迫る手がかりなのですね。それを解明すれば、悠真様を元の世界へ帰す道標になるのかもしれない…」
エメリアはそう呟くと、セレスティアから聞いた悠真の能力について思いを巡らせた。
彼の「不運」が城壁崩壊を予知し、そのおかげで多くの命が救われたという事実。そして、その不幸な出来事が、この世界の呪いと何らかの関係があるのではないかという、彼女自身の予感。
「それに、教団の予言に記された、『運命の石』や『世界を導くもの』とも…これらの類似性は、とても偶然とは思えない」
エメリアは、悠真の「不幸」が、単なる偶然ではなく、これらのアイテム、ひいては世界の根源的な問題と深く関わっているのではないかと推測した。
エメリアは、再び別の古文書を手に取った。そこには、これらのアイテムが、はるか昔、この世界を訪れた異邦人によってもたらされたものであるという、衝撃の事実が記されていた。しかし、その古文書には、その機能や使い方について、ごく一部の簡潔な記述しか見当たらなかった。
「…このままでは、アイテムの真の力を引き出すことはできないわ…」
エメリアは、失われた知識に強い探求心を抱き始めた。彼女は、王宮の書庫には無いであろう知識を求めて、この二つのアイテムに関する専門家を訪ねることを悠真に助言する必要があると感じる。
「悠真様に、早速お伝えしなければ…」
彼女はそっと呟くと、新たな発見を悠真たちに伝えるため、ゆっくりと椅子から立ち上がった。その顔には微かな疲労が見えたが、その瞳は新たな発見への期待に満ちていた。
すぐさま、エメリアは息を切らしながらセレスティアの部屋を訪れた。部屋には、僕とリーファ、そしてセレスティアが揃っていた。
「お姉様、お身体はもうよろしいのですか?」
セレスティアは、エメリアの顔色を心配そうにのぞき込んだ。エメリアは優しく微笑み、首を横に振った。エメリアの額は僅かに汗ばみ、頬を上気させていた。
「ええ、もう大丈夫ですわ。それよりも、あなたから預かったアイテムについて、少しばかり分かったことがありますの」
エメリアは、手に持っていた三つのアイテムを僕たちの前に置いた。
「王宮の保管庫にあった古文書に、これらのアイテムに関する記述が残っていました。この古びた地図は、この世界に呪いをもたらした『呪いの源』を示しており、この奇妙なナイフは、その封印を解くための『鍵』であるようですわ」
僕とリーファ、そしてセレスティアは、エメリアの言葉に息をのんだ。
「そして、これらのアイテムは、はるか昔、この世界を訪れた異邦人によってもたらされたものであるという、驚くべき事実も突き止めました。しかし、アイテムの使い方や機能について詳しく記された書物は、保管庫の古文書には見当たりませんでした」
エメリアの言葉に、セレスティアは残念そうな表情を浮かべた。
「そう、残念ね…」
「力になれなくてごめんなさい、セレスティア。もっと詳しく知るには、クロノスに住む二人の賢者に尋ねるしかないわ」
エメリアは、穏やかな口調で僕たちに告げた。
「二人の賢者?」
エメリアは、王都で起きた事件を思い返しながら、真剣な表情で続けた。
「王都を襲った魔物が、他の地方で報告されている魔物とは異質であることも、今回の古文書の内容と無関係ではないと、わたくしは推測しています」
僕たちは、エメリアの言葉に真剣な眼差しを向けた。
「この『運命の石』については、『古の秘宝を操る賢者』、そして、この『奇妙なナイフ』に施された古代魔法については、『古代魔法の知識を司る賢者』に教えを乞うべきでしょう」
僕たちは、エメリアの言葉に息をのんだ。それは、僕が元の世界へ帰るための、そしてこの世界の呪いの謎を解き明かすための、新たな旅の始まりを告げる言葉だった。
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