閑話 奈々美ののんびりハンドメイドライフ
タイトル変更しました。
異世界転生はなろうでは定番のことゆえ説明はいらないかなと。
あと「素人ハンドメイド作家、○○になる」でネタ違いの話が出来たらいいな〜.なんて下心も。
さて、今回は閑話です。
奈々美の日本での生活です。
Side 奈々美
私は26才のIT企業の派遣社員、木村奈々美26才。彼氏なし貯金無しその日暮らしの気ままなOLだ。いやもうこの時代OLなんて言わないか(笑)いや“笑”も既に死語だろうか。そーいえば、笑うの意味は今は“草”を使うらしいとどこかのテレビで言っていた。
なんで草??
「クサ……くさ……臭い……」
麦茶を取ろうと冷蔵庫を開けたら、納豆みたいな臭いがぷぅ〜んと漂ってきた。しまった、先週作り置きしておいた煮物が腐っている。まさにザ納豆!な臭い。最初に納豆を食べた人はマジですごい。なんでこんな臭いのするものを食べようと思ったんだろうか。尊敬というか変人というか、まぁそのおかげで現代人は納豆の美味しさに与れるのだが。
息を止めたまま、腐った煮物をタッパーごとビニール袋に密閉する。もちろんビニール袋は二重にして。
さらに賞味期限の切れてしまった豆腐と真っ黒になってしまったバナナや萎れた胡瓜も捨てることにする。
もったいない――買い物した時は、自炊するぞ!とか外食は控えよう!と思ってスーパーに行くのに、結局仕事帰りには同僚と飲みに行ったりコンビニで済ませてしまう。――ごめんね、と心の中で謝りながらも、ついまたやってしまう自分に自己嫌悪。
「あ、今日はホームセンターに行く日だった。急いで支度しなきゃ。」
ついダラダラしてしまう休日だけど、今日はハンドメイドの材料を買いにホームセンターへ行く予定になっていた。
*****
IT企業で働く一方、奈々美の趣味はハンドメイド作品を作ることだった。布小物やアクセサリー、冬にはマフラーやストールを編む。ジャンルは固定していない。季節ごとに、何か作りたいという衝動に駆られる。
テレビでステンシルの特集をやっていれば、ステンシルがやりたくなる。芸能人が手作りだというブローチを付けて雑誌に載れば、私もレジンでブローチを作ってみる。
そんな気ままなハンドメイドライフが、今の――正確には小学生からの――一番心踊る充実した時間なのだ。
(だけど、一つ問題があるんだよね。)
奈々美は悩んでいた。過去、まだその問題解決が出来ていなかった頃の話、ではあるが。――今はもう解決済みなので安心して欲しい。
当時、作品を作るのは楽しいけれど、だんだん作品が溜まって来ていて、押入れのスペースを圧迫していた。作品たちを入れる衣装ケース代も馬鹿にならない。
(捨てられない、でも押入れも置く場所がもう無い。あぁどうしよう……)
ポーチやマフラーにしても、1つか2つあれば、自分で使う分には事足りる。だが作品は延々と増え続ける。
そこで私が考えたのは、駅前で開催されるハンドメイドイベントへの出展だ。
出会いは偶然だった。
いつも通勤に使う駅構内に、ハンドメイドイベントの開催ポスターと出展者募集の文字。私は迷わずすぐ電話した。
出展にあたって、面談の様な簡単な審査があった。
自分の作品を主催者の所へ見せに行き、どんなハンドメイドジャンルが得意なのか、イベント出展の経験や、ハンドメイドを始めたきっかけなどを話した。
「会社の同僚と海へ行ったんです。みんなは肌を焼いたり海に入っていたんですけど、私はシーグラスを拾うのにハマっちゃって(笑)今日持ってきた作品は、その時拾ったもので作ったんです。」
そう言って私が見せたのは、青いシーグラスを針金で飾ったペンダントトップに、シーグラスを加工したピアス、珍しい赤いシーグラスは細かく割って、レジンに閉じ込めた。これはブローチ。
イベントの開催が7月末という真夏だったため、涼しげに感じるシーグラスを中心に揃えた。
ハンドメイドを知らない人には、「えっ、拾ってきたガラス片を商品にするの??」と驚かれるかもしれないが、ハンドメイドの世界ではもはや常識である。アクセサリーは作らないという人でも、シーグラスのみを拾って、フリマアプリで販売して小遣い稼ぎをしている人もいる。
「夏はやはり涼しげなアクセサリーを作りたくなるんです。今回は7月の開催ということで、シーグラスを中心にお持ちしたんですけど、秋冬には布小物や編み物を作っていることが多いです。」
「なるほど、お客さんには季節感が大事ですからね、木村さんの作品は需要がありそうですね!」
(お、なかなか好感触♪いけるかも?)
「ところで、屋号はありますか?」
内心ドキッとする。言いたくないけど、言わなければならないだろう。
「実は私、このようなイベント出展は初めてなんです。今までは趣味で作るばかりで、でもせっかく心を込めて作った作品たちなので、どなたかに買っていただけたら嬉しいなと思っています。」
「大丈夫ですよ、木村さん。誰にでも初めてはありますから。できる限りサポートいたしますから、安心してくださいね。」
そう言って面談はいつの間にかイベント出展のノウハウ講座になった。
値段の付け方や、値札やお釣りの用意の必要性、屋号もその場で決めた。
「KARA★NASHI……これが私の屋号。」
(カラナシ、カラナシ……カラ……ナシ……)
心の中で何度も呟いてみる。
決まるまでは、あーでもないこーでもないと悩んだけれど――思いついた言葉がどこかのブランド名だったりして2つ程は却下された――決まってしまえば、なんだか昔から馴染んでいるような安心感があった。
結局、屋号は自分の名前から連想して付けることに決めた。
奈々美の「奈」――この漢字には果物の唐梨という意味があるらしい――そこから、カラナシでは和風過ぎて作品イメージに合わないことから、アルファベットで表記してみた。
(うん、いい感じ。うふふん。)
とはいえ、屋号が決まったとニヤけている場合ではない。やることは予想よりもかなり多い。
作品を作るのはもちろん、作ったものは包装しなければならない。値札にお釣りに名刺にチラシに、購入して貰ったら領収者や袋も必要だ。電卓も忘れずに。
また、机の上にただ商品をどんと乗せれば良いわけではない、見やすいように綺麗に並べるだけで、売り上げが大きく変わるよと主催者は教えてくれた。
この面談はイベントの2か月程前に行われたが、この時私は既に時間が足りない!と認識していた。
『展示する机にいっぱい作品を並べること。
安過ぎたり高すぎる値段はダメなこと
名刺や作家名チラシを用意すること』
それが主催者との約束。それが守られなければ、たとえ当日でも出展拒否されることもあるし、次回のイベントへのお誘いもない。
この時はルールが厳しいなぁなんて思いながら主催者の話を聞いていたんだけど、何度かイベントに出展していくうちに、この最初のイベントの条件はとても易しかったと後々気付くこととなる。
イベントによっては、自分で机も椅子も用意しなきゃいけないことがあるし、展示の高さは120センチまでという厳密なサイズ規定があることもあった。
最初のイベントでは出展料1,000円で売り上げマージン無しだったけれど、それ以降こんな格安の出展料イベントに私は出会ったことが無かった。
会場によっては養生テープ禁止とか、防炎加工されていない布の利用は禁止、なんて時もあった。
「当日、木村さん――KARA★NASHIさんの作品を沢山沢山みられるのを楽しみにしていますね!」
30分の予定だった面談を1時間もオーバーして終了した時には、私はもうグッタリしていた。さらに主催者からの『もっともっと沢山作品作れよ』プレッシャーに早くも逃げ出したくなってしまった。
拙い作品をお読みいただきありがとうございます。
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