第三話 ワタシ達『ディザイア・シスターズ』‼︎ 〜 魔刀 〜
「そうじゃマキ。ムラクモの調子はどうじゃ?」
ムラクモとは『魔刀ムラクモ』のことで、いつもマキが使用している刀のことだ。
普通の刀と違い強度が桁違いに高いうえ切れ味も鋭く、かの悪魔でも容易く斬り捨てることができる業物中の業物だ。ちなみに悪魔の血液は人間に比べて酸度が高く、刀をより錆びやすくするのだが、その昔に鬼や妖怪、悪魔を退治するために作られたようで、酸度が高くても錆びなくなっている。
余談だがこの『魔刀ムラクモ』は、実は『センキマル』と言う名前が本当らしい。ジィさんが名前は覚えているが、どう書くか忘れてしまったということだ。『戦鬼のように振るえる刀』として『戦鬼丸』だったか、『千人の鬼をも斬っても刃こぼれ一つしない刀』として『千鬼丸』だったか、あまりに昔の物であるがうえ、売り文句を度々口にしているうちに記憶が曖昧になったとのことだった。
それで、そんな自分の黒歴史を隠すために、いっそのこと勝手に名前を変えてしまったそうな。
しかし、こんな一振りに鍛えた人物はいったいどんな匠なんだろうか。とても人間の為せる業ではないように思える。
そんな規格外な魔刀を仕入れてきたのも、もちろんこのジィさんであるが相変わらず出所は企業秘密だそうな。
「あぁ、さすがの魔刀だね。刃こぼれ一つしてないぜ。最近だとゴブリンキングとか自分で召喚したハーデスにバケモノにされたヤツと戦ったぜ」
「あの冥王をその眼で見たとな⁉︎ 信じられん!」
その後、ここ最近起きたことや戦った悪魔のことについてざっくりと説明した。ジィさんは年甲斐もなく興奮混じりで鼻息を荒くして聞いていた。
ジィさんの表向きの顔は(怪しい)骨董屋だが、裏の顔は悪魔のことを調べ研究している悪魔博士である。もちろん知識も豊富だ。そのせいかこの店の品揃えもオカルト商品や悪魔絡みの品物になっている。
どこで手に入れたのかはわからないが、とんでもない高額で並べられている。実は魔刀ムラクモもそのなかの一つだった。たしか当時、三千万とかわけのわからない値段で店先に並んでいたが、悪魔と戦える俺のことを知り「悪魔の情報は貴重じゃ値段に変えられん! これを持ってっていいからもっと情報を集めとくれ!」とのことで、支援という形で譲ってもらったのだった。もちろん悪魔との交戦記録を漏れなく提供しなければならないが。
それにしても、魔刀の現実離れした性質から、もしかしたらこの世のものではないのかもしれない。そう考えれば、三千万で異次元の物が買えるならば安いのかもしれない。存在しない物は手に入らないが、異次元の物でも売っていれば金を積むと買えるわけだ。もちろん買い手がつくかどうかは別の話だが。
魔刀を譲ってもらうまでは名も無い刀を使っていたが、さすがにそれを機に捨てた。昔修行していた時にテキトーにもらった物だったので、なんの未練もなく廃棄処分にした経緯がある。
魔刀に持ち替えてからは刀のことを気にせずバンバン戦えるため、その点ではジィさんにものすごく感謝している。悪魔の情報なんて俺にとってはついでだしタダだし、これほど良い取引はないだろう。
そういえばジィさんのせいで痛い目をみたので文句を言っておこう。
「そうそう、ゴブリンキングの時はジィさんのせいで大変だったぜ。ゴブリンシャーマンは仲間を、それも同等くらいのランクの仲間しか呼べないから安心じゃとか前に言ってたけど、下級悪魔のペーペーのくせに自分を生贄にして上級悪魔のゴブリンキングを呼び出しやがったからな! マジであの時は焦ったぜ。ついでにいえば中級悪魔のホブゴブリンは難なく呼べてたみたいだけどな」
「そうじゃったのか⁉︎ ではワシの研究書をそう書き直しておくとしよう。ありがとさん」
悪魔絡みは割と素直に聞いてくれる。戦った本人が言うのだから間違いないということは、ジィさんもよく理解している。
こうして魔刀の借りを少しずつ返していっている。もちろん、これはこれからもずっと続くのであろうが。




