表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/45

落とし前をつけに来た

天衣に芽生えた、初めての感情。

それは、恋だった!

悩む天衣の姿に、

如月は何かできないかと思い立ち・・・?




「チューン、そろそろ潮時なんじゃない?」


喫茶店のカウンターが店内に入ろうとすると、輝流さんの声が聞こえた。

何だか入るのもしゃくになり、もしかしたら何か聞けるかもと思いドアを少し開け耳を傾けた。


「さっきの様子といい、チューンの進路先といい伝えたほうがいいんじゃない?」


「いまだに伝えてないお前に言われたくないんだが」


「オレのことはまあ置いといてさ、伝えないと後悔しない?」


尾上さんが言った言葉をスルーする輝流さんに、私は違和感を覚えてしまう。

もしかして輝流さんも、好きな人がいるのかな?

だとしたら仮付き合いなんてしない方が……


「好きな奴ができたんだな、お前ら」


と、そこに神宮さんの声が聞こえる。

彼は私や美宇さんがほっぽらかした掃除をしながら、二人を見ている。

神宮さんの言葉を聞き、濁すような形で輝流さんは笑った。


「やだなあ、王様。チューンはいいとして、オレはいないよ~」


「ごまかしても、とっくに知ってる」


「……いつからですか……?」


「旅行の時くらいだな。ま、誰を好きなのかまでは知らねぇが」


やっぱり輝流さんにもいるんだ。

二人が驚いている中、神宮さんが口を開いた。


「伝えたいことを伝えられないだけで、一生後悔することもあるんだ。好きになった奴だからこそ、守ってやらないといけないと俺は思うけどな」


神宮さんの顔が、いつも以上につらそうに見えたのは気のせいだろうか。

彼の言葉が二人にどう影響したのかはわからない。

ただ尾上さんだけは、こちらにずいずいやってくる。

私は慌てて身を隠すと、尾上さんは気づくことなく天衣さんのもとへ歩いてゆく。


「桜庭」


はっきりとしたその呼びかけに、天衣さんはびっくりしたような顔を浮かべる。

気を利かせた美宇さんが私のとこまで来て、店内の方から輝流さん達ものぞいている。

そのことに気付いているのかいないのか、尾上さんはゆっくり話し出した。


「なんか、悪いな。梗華のこととか、迷惑かけて」


梗華って誰だろう。色々あったっていうのに関係あるのかな。

うう……気になるけど美宇さんの圧力が怖くて聞き出せない……


「いっ、いえ、そんなこと! 私の方こそ、すみません!」


「あいつから聞いた。行くこと、決意してくれたんだって?」


「え、ええ……まあ……」


「だから俺も落とし前をつけに来た」


ドキドキ……ワクワク……


「俺は、お前が好きだ」


き、きたああああああああああああああああ!


「俺みたいなやつでよかったら、付き合ってほしい」


「みたいなやつなんて、そんな……私だって……!」


「俺、ブラジル行こうと思ってるんだ。悪いな、遠距離になっちまうけど」


「いっ、いえ、全然! 私でよければ!」


ちょ、ちょ、ちょっと待ってぇぇぇぇぇ!!


「ウエ~~~~~イト! ちょっとええかあ? お二人さん」


今の今まで黙っていた美宇さんが、たまらず二人の間に入る。

私や輝流さん達も出てくると、天衣さんが驚いて目を丸くさせた。


「美宇ちゃん達! 見てたんですか!?」


「そりゃあもうバリッバリ!」


「威張るとこじゃねぇし、バレバレだったぞ」


どうやら尾上さんは気づいていたみたいだ。

そりゃこんだけの人数で見てればねぇ……

って、そんなことはどうでもよくて!


「どういうことですか、尾上さん! ブラジルとか、話してることがわけ分かんないんですけど!」


「なんだ、輝流から話通ってなかったのか? 俺卒業したらブラジル行くんだよ、バリスタの勉強しに」


ブラジル、といえばコーヒーの産地だ。

だからかな、本当にバリスタを目指している人が言いそうなことだ。

尾上さんの顔はいつにもまして決意に満ち溢れて、なんだかうらやましくもあった。


「私はフランスにパティシエとして働くことが決まって。仕えるお嬢様が、偶然尾上さんの妹さんで」


え!? 尾上さんに妹いたの!?

こんな人が兄なんて、かわいそうすぎる!


「なんや、二人とも。ちゃんと進路考えてたんや。大変やで~遠距離は」


「いいんだ、そういうのは。好きな奴は守らなきゃならない、からな」


そういう尾上さんの目は、神宮さんに向かれている。

神宮さんはふっと笑って見せた。


「おっめでと~チューン! 結婚式にはオレも呼んでね~!」


「まだ結婚しないし、呼ぶつもりもねぇ」


「よかったなあ、天衣! うらやましいで、このこのぅ~!」


「や、やめてくださいよ~!」


輝流さんを美宇さんが二人をからかうようにはしゃいでいる。

なんだか嬉しくなって、私は神宮さんに笑いかけた。

その時、私は気づいていなかった。

神宮さんが何かに苦しんでいたことを。

私の知らないところで、彼が大きな決意をすることに―……


(つづく!!)

実はかいちゃんは、輝流がバイトを始めた頃から

天衣ちゃんに片思いをしています。計算すると、四年くらいでしょうか。

四年も片思いとかどんだけだよ! と思っていましたが、

色々アニメや小説を読んでいくうちに、上には上がいたことを思い知らされた最近です


次回、ハッピーエンドの裏腹で動き出す不穏な影とは・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ